ニースから先も海沿いの路線を走る。

電車が動いて窓の外の船や山が流れていっても、水面に映った朝日はずっと変わらない。

やわらかい金色が海に反射してキラキラしていた。



その日はフランス間の移動。

フランス以降の列車移動は鉄道パスを利用する。

ヨーロッパのユーレイル加盟国にはユーレイル鉄道パスというのがある。

すべての加盟国で使えるパス、特定の1ヶ国で使えるパス、2ヶ国で使えるパスなどがあり、当然それぞれ値段が違う。


この旅で購入したパスはベネルクスフランパスというパスで、フランスに加え、ベネルクス3国と言われるオランダ、ベルギー、ルクセンブルクで使用できるパスである。

ベネルクス3国はパスの分類では1ヶ国扱いとなる。

特定の3~5カ国を選べるセレクトパスというのもあるのでイタリアも含めて購入することもできたのだが、イタリアは比較的鉄道料金が安いのでパスが割安にならなかった。


パスを利用する日は選択した国の列車が載り放題。

乗り放題といってもTGVなどの全車指定の特急は指定券が必要だ。

マルセイユからパリまでのTGVの指定券は持っていたのでマルセイユ出発の時間は決まっているが、ニースからマルセイユはパスのみでの移動となる。



途中、映画祭で有名なカンヌなども通ったのでパスの特性を生かして途中下車したかったのだが、マルセイユまでの直通電車は本数が少なかった。

マルセイユを出発するのはは昼過ぎなのだが、ニースからの移動で朝から利用できそうなのは2本。

細かい乗り継ぎをしたりすればもっとあるのかもしれなかったが、とにかく無事に移動できることが最優先。

TGVに乗ってパリに着くことが最優先だ。



電車は空いていて、到着するまで4人掛けのボックス席を独占することができた。

マルセイユでの自由時間は2~3時間程度。

大きな荷物を引いて歩くのは嫌なのでコインロッカーに預けることにした。


ヨーロッパでのコインロッカーの使用は初めて。

駅構内のロッカーの絵の看板を見つけてガラス扉の前に立った。


??

おかしいぞ・・・

ガラス扉の向こうには、いかつい黒人男性が座っていた。


??


看板は明らかにコインロッカーのマーク。

でも、カウンターに制服を着た男が座っている。

クリーニング屋みたいだ。


なんだか、すごく怒られたくないような風貌の相手だったが、時間がないので意を決して扉を開けた。


「ボ、ボンジュール・・・」


「ボンジュール!」


・・・意外に優しかった。


爆弾テロか何かの対策なんだろうか?

そこはコインロッカーの部屋に入る前の荷物検査の為のカウンターだった。

バチカンの入国審査の時のように荷物を乗せてゲートを通過する。

音はならないでそのまま通過することができた。


部屋の中はすべてコインロッカー。

あんないかつい男がカウンターにいるなら、3時間くらいそこら辺に荷物を置いておいても大丈夫そうだ。

しかし、ばれたら大変な目に合わされそうなんで、それはやめにした。

ロッカーに荷物を入れて扉を閉めると変なレシートみたいなのが出てきた。

よくわかんないけど預けられたらしい。


コートも一緒に預けたので身軽になった。

駅を出るとまっすぐ続く長い道。

マルセイユには何があるんだろうか?

ガイドブックはニースと同じく、1~2ページ。

地図のサイズはクレジットカード2枚分くらいでいくらかましだ。

とりあえず、観光の中心地であるとされる「旧港」を目指す。

その日も晴天だった。



つづく・・・

マルセイユにも凱旋門がある。

パリの凱旋門と比べれば小さいけれど、なかなか立派なものだ。

駅から凱旋門まで歩いて、そこからローム通り(Rue de Rome)という通りを「旧港」へ向けて下る。


「旧港」(Vieux Port)はマルセイユ観光の中心で、19世紀まで貿易の中心として栄えていたらしい。

じゃあ今の港はどこ?と思ったけど、1~2ページくらいのガイドブックにはそんなこと書いてない。

知らない。

でもそんなの関係ない、からそれは気にしないことにする。



坂道を下っていくにつれて人が増えてきた。

実は、マルセイユというと名前の響きから上品な街のような印象を持っていたけれど、少しイメージが違った。

壁は白壁が多いのかな?と思っていたけれど、その通りは大まかには茶色っぽいイメージ。

ニースの街並みのほうが近代的な印象を受けた。

マルセイユは生活感があって活気がある感じ、観光メインの街ではないみたいだった。


交差点を折れて少し歩くと、海が見えた。

駅から10分くらい歩いただろうか?

「旧港」に到着した。



時間はまだ正午前。

それが朝市なのかどうかわからないけれど、魚介類を並べて売っている人たちがいた。

それなりに珍しい魚はいるようだけど、特に印象に残るほどではない。



それよりも港に泊まるたくさんの船。

白を貴重にしたヨットがぎっしりと並ぶ風景は、絵画の中の世界のようだ。

空には雲ひとつない快晴。

暖かい日差しと海風が気持ちいい。


港に何があるという訳ではないけれど、太陽があれば十分。

なにか、この場所は今までの中で一番居心地が良いというか、自分にあってるみたいだ。

電車の時間にはまだ余裕があったので、しばらくの間頭を空っぽにして絵画の中の世界を満喫するのであった。




つづく・・・


マルセイユ名物といえばブイヤベース。

ジダンも大好き、ブイヤベース!(・・・テキトー)

ブイヤベースと言えば魚介のスープ。

西伊豆で食べた漁師風のあら煮みたいなもんかな?(違う??)


旧港を囲んでオープンテラスのレストランが立ち並ぶ。

みんな昼間から白ワインやらビールやらで一杯やってる。

羨ましい限りだ。


端っこのほうの席で良いから加えてもらいたいところだが、店の前に立てられた看板の文字は何が書いてあるのかさっぱりだ。

ブイヤベースっていうのがいくらくらいかわからないので、ガイドブックで目安をチェックしてみた。

しかし、ガイドブックはフラン表記。

昔、興味本位で買ったガイドブックだから古かった。


ブイヤベース250フラン??いくらだ?

コーヒーが10フランって書いてあるから、なんか高そうだ。

さらにワインとか頼んだら高いんだろうな~。

注文内容がうまく伝わるかもわからないし、食事が終わるまでの時間の目安もわからない。


そもそも、考えてみたら暖かいのにスープなんて欲しくもなかった。

何でこの気候でスープが名物かわからない。

海に出た漁師は寒いのか?

じゃあ、やっぱり「漁師風」でしょ!?



そんなわけで、結局安くて時間をかけずに食べれるサンドイッチを買って食べることにした。

サンドイッチを売っている売店みたいなお店に向かう。


「ボンジュール!」

そう呼びかけると予想外の返事が帰って来た。


「コン二 ショワー♪」



!!



なんと!!


その瞬間、ブイヤベースを断念した自分の選択が間違っていなかったことを確信した。

マルセイユは映画「TAXi」の舞台でもあった。

だから日本語の挨拶も完璧だ。

まさか、現地の「コンニショワ~」が聞けるなんて・・・

感動だ。


そうは言ってもこっちの「ボンジュール」だって負けてない。

たぶん完璧だ。

同じレベルでコミュニケーションをとってくれる相手にあえて嬉しい。

もう発音なんて気にしない。


サーモンサンドを指差して言ってやった。

「シルブ プレ!!」


「スィル ヴ プレ」という言葉は「お願いします」というような意味だが、使い勝手がいい。

謙虚な気持ちを表しながら頼みごとができる。

「○○をください」というのも、指差してこの言葉を言えば通じてたっぽい。


相手はエプロンをしたマダム。

マダムはサーモンサンドを指差して確認してくれた。


「ソモン??」


「ウィ、ウィ、ソロモン。」


てきとうでもなんとかなるということが実証された。



「メルスィー!」(ありがとう)


「メルシー!」


「オ ルヴォワー♪」(さようなら)


「オールヴォワール」


フランスでは買い物をした後にお互いにこのようなやり取りが行なわれる。

売るほうも買うほうも同じ立場で、お店に入るときも挨拶をして入るのが礼儀だ。

個人的にはこっちのほうがあっている。



日本では普通、お店の入り口で店員さんが「いらっしゃいませ」と頭を下げてくれる。

その中でも自分よりも年配の方に頭を下げられたりしたときは特に恐縮だと感じる。

基本的にはこちらも頭を下げるようにしているのだが、その場の感じからするとそのほうが普通っぽくない。

サービス競争が激化して消費者の立場が強まっているが、一方的に挨拶をされるよりも挨拶を交わすコミュニケーションのほうが気持ちがいいと思う。



しかし、そんな日本の挨拶の言葉の中でも、他の国と比べて非常に良いと思う言葉があった。


「いただきます。」


「ごちそうさま。」


この二つの言葉と同じ意味を成す外国語には今のところ出会っていない。

フランス語では「ボ ナペティ」(召し上がれ)という言葉はあるが、「いただきます。」という意味の言葉は聞いたことがない。

まあ、食べ終わったら「ありがとう」といえばいいのだが、「いただきます。」と「ごちそうさま。」は便利な言葉なので他の国にもあったら良いと思う。



それでは、いただきます。

魚のサンドイッチがあってよかった。

マルセイユのソロモンサンドはうまいなぁ~♪


何?ソロモンじゃない??


ごめんなさい。

言葉は大切にします。



つづく・・・








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TAXi2


フランス、マルセイユ~パリが舞台のカーアクション(コメディ?)

2は日本の防衛長官の誘拐事件を追う。かなり笑えます。

リュック・べッソン脚本。