フィレンツェ2日目。


この旅の一番の目的であった、コレクションを終えると、もう3時過ぎだった。

昼食は駅構内のセルフサービスのフードコートでとることにする。

駅の構内にはマクドナルドに、イタリアには欠かせないバール(喫茶店のようなところ)のチェーン店のようなやつ、ピザ屋などもあったけど、イタリアに来てまだパスタを食べていなかったので、色々なメニューがあるセルフサービスのお店にした。

入り口には日本のパン屋にあるようなトレーがあって、店の中にある色々な料理の中から好きな料理を選ぶ方式だ。

パンに野菜にハム、チーズの盛り合わせなどもある。

パスタのコーナーは、中にいるおばさんに注文をする方式でガラス張りのショーケースに白い文字でメニューが書いてある。


カウンターのおばさんは不機嫌なブルドックのような顔をして待ち構えていた。

なんだか物分りが悪そうな人だし、メニューは読めないしで腰が引けてしまったが、他のイタリア人の客が注文してる流れで注文した。

注文したのは3種のなんたらというメニュー。

3種という部分だけわかったのでこれなら食べたいものも入ってそうだという思惑があってのことだった。

3種はペンネが2種類にリゾット・・・だったと思う。

最後にチーズをかけるかどうかという趣旨のことを聞かれたようでスィー、スィー(Yes)と言って粉チーズをかけてもらった。

おばさんは終始不機嫌そうというか、ずっと睨みつけられてるくらいの感じで、その時はなんか悪いことしたかなーと考えても何もわからない。

しかし、その半年後、このおばさんとの再会により、イタリアでの買い物について1つの結論に達するのであった。


それはさておき、パスタにもビール。

日本での外食の時は昼はウーロン茶などお茶系が多いけど、ヨーロッパでは冷たいお茶のペットボトルなんて見ない。

水かビール。ジュースなんて日本でも飲まないので飲みたくない。

しかし、イタリアのビールはパスタやピザによく合うと思う。


ここで飲んだのはモレッティというおっさん(堅気ではない?)の顔が描いてあるビールで、日本でも成城石井など外国のビールを扱っているお店やイタリア料理店で、おっさんにお目にかかることがある。

もうひとつよくお目にかかるビールはナストロアズーロというビールでこちらのほうが個人的に好み☆こちらがイタリアNo1ビールらしい。

だけど、パスタやピザにはちょっとビターなモレッティのほうが合う気がする。



イタリアで初めて食べたパスタは食べたかった麺型じゃなかったけど美味しかった。

前に並んでいたイタリア人達も注文していた(人気メニュー?)リゾットもチーズの味付けで美味しかった。

お腹が空いていたので、美味い美味いと食べていたけど食べ終わる頃には満腹すぎて苦しい。

普通の日本人の自分にとって3種のなんとかは、ヘビーすぎたようだ。

先程の会計のときにレジでコーヒーを注文してその場で待っていたが、コーヒーは隣のバールのような店で受け取るようで隣へ行けと言われた。

なんだか分けわかんなかったけど、考えてみたら合理的だ。

食後にレシートをカウンターに持っていくと、普通のコーヒーカップの半分もないであろうカプチーノカップが出てきた。


「コーヒーってカプチーノか・・・」


勉強になることばっかりだ・・・


かくして、満腹になった腹をさすりながら街へ戻る。

展示会があるこの時期は1日1日ホテルの料金が変化するので、その日は前日より安いホテルに移動することになっていた。

そのホテルホテル メディチ)はアップルワールドでの評判がすこぶる悪い。

その点は十分覚悟して行く訳だが、ホテルからのドゥオーモの眺めは非常にいいらしい。

この旅の出発前にあらかじめ英語のできる知り合いにホテルに電話をしてもらって、ドゥオーモの見える部屋にしてもらえるようにと言ってあったのだが、うまく伝わっているのだろうか。

不安と期待を胸にその日の宿に向かった。



つづく・・・




モレッティ ビール (瓶) イタリア 330ml
¥294お酒のデパート玉喜


ビール: ペローニ・ナストロアズーロ (イタリア) 330ml/24本入り
¥8,808
中村屋

フィレンツェのホテルはどうもわかりにくいところが多い。


入り口からはホテルなんだか、なんだかわからないところがある。

デパートだってわからない。

入り口は普通の商店とあまり変わらないように見えるのに、入ってみるといろんなブランドを扱うデパートだったということもある。

それもこれも、世界遺産に指定されているフィレンツェ歴史地区の街並みの外観を守る為だろう。

中心部から少し離れたミケランジェロ広場から街を見下ろすと統一されたオレンジの屋根の街並みが美しい。



ホテルメディチもまた、まったくわかりにくい入り口であった。

フロントは5階くらいのところにあるので、入り口を入ると例の折りたたみ扉のエレベーター(ある日のローマ4~Repubblica~ )と階段しかない。

大きな荷物をガラゴロとエレベーターに乗せて、フロントの階のボタンを押す。

エレベーターが昇って行く間、各階の様子が見える。シースルー!!・・・



フロントに着くと気難しそうなおじいちゃんが迎えてくれた。

チェックインの時は大抵、ホテルのバウチャー(予約支払い済ということが書いてある紙)と確認の為のパスポートを渡す。

パスポートケースにはチェーンが付いていて、チェーンごと渡すとフロントの人はチェーンが付いてることに驚いて笑うことが多かったが、その老人は人を見定めるようなぎょろりとした目でパスポートと部屋のキーを渡した。

6階でトイレは別部屋だという。

トイレが別室はアップルワールド(旅行計画とホテル予約について )のクチコミに書かれていた部屋だ。

ハズレかなーと思いつつ、またエレベーターで1つ昇る。

エレベーターを降りてすぐのその部屋に入ると、なるほどシャワーはローマで泊まったレップブリカのように簡易的なものだ。

それよりも期待していた窓からの景色だ。

ドキドキしながら窓を開けてみた。

ベランダしか見えなかった・・・



おかしいなーと思いながらも、部屋を出て、すぐ隣にあるベランダのガーデンへの扉を開き共同のベランダへ出た。

すると確かに絶景!ドゥオーモまで視界をさえぎるものはなく、感動的な姿が飛び込んできた。

大きな建造物なら日本で見慣れているはずなのに、なんだか現実じゃないような風景だ。



これは、ワインでも買ってきて、是非ともここで飲まなきゃならない。

丁度洗濯もしなくちゃならないところだし、買い物がてら洗濯物を持ってコインランドリーへ。

前日のホテルで教えてくれたコインランドリーに行き洗濯物を突っ込み、ボタンを押した。

洗濯機にはボタンが3つほどあって説明書きがあったけど、よくわからないので適当なボタンを押したら動きだした。
まあ、言葉がわからないので多くは望めない。そんなところでよしとすることにした。



スーパーはコインランドリーの近くにあったので、洗濯をしてる間に買い物をすませることにする。

期待以上にワインは豊富。そして値段が安かった。

ワインに関しては、日本にいてもフランスやイタリアを飲むことが多いので、わざわざそこで飲むこともないようにも思えたが、値段と気分ということで安めのワインを一本。

フィレンツェで食べたかった、水牛のモッツアレラチーズと生ハム(プロシュート)、炭酸の入っていない水を買った。

遅い時間に食べた昼食でお腹はすいていないし、部屋に帰れば朝食の時に頂いた例のカラカラのパン、ビスコッティがあるし、夕食はそんなところで十分だ。



かごの中の物をレジのベルトコンベアーに乗せて、後ろの人との仕切り版を置いた。

イタリアでのスーパーの買い物も2回目となったので、今度はちゃんと(自然に)会計を済ますことが出来た。

袋は日本から持ってきた、小袋に入ったナイロンの買い物袋。100円ショップで買ったものだ。

買い物は万事うまくいき、ご機嫌でスーパーを出る。



しかし、出口から30秒ほど歩いたところで、子連れのイタリア人のおばさんが血相を変えて飛んできた。

おばさんの必死の口調と悲壮な表情に血の気が引いた。


鼓動は早くなって、体温が上昇した。



どうやら、何かを盗られたか落としてしまったらしい・・・



つづく・・・

早足のイタリアのおばさんの後を追う数十秒の間は、時間が非常に長く感じた。

頭の中は多少混乱している・・・

後ろのポケットを触ると、財布はチェーンを付けているので落としたりはしていないようだ。

そうすると、まさか腹巻型の貴重品袋?

その中にはパスポートや航空券、トラベラーズチェックなどすべての貴重品が入っている。

スリには細心の注意を払っていたはずなのに・・・


その時までは楽しい旅行も、パスポートなどの貴重品を失ってしまえば一気にどん底の気分になる。

でも貴重品袋を盗られたらさすがに気付くか?

いつの間にか落としてたのかな?

手で確認をするよりも早く色々な思いが駆け巡る。

もしかしたら、このおばさんの罠で着いていったらいけないのかもしれない・・・

気が動転して視界も狭くなっていた。



そこへ、おばさんが、ここだ!と指を差した。


その指の先には濃い緑の小さなナイロン袋がある。

近くにいた若いイタリア人女性がその動作に気付いて、それを拾って手渡してくれた。


「グラッツェ・・・」(ありがとう・・・)


それは、100円ショップで買った買い物袋をコンパクトに折って収納する為の袋だった。


確かに俺のだ。


おばさんはまだ悲壮感の漂う表情で、「この子が見つけた。この子が見つけた。」と子供を指差して連呼している。

「ありがとう。どうもありがとう。」親子に向かって何度も言ったが、正直、拾って持ってきてくれるともっとありがたいと思った。

人間の身体機能は、事実にかかわらずに言葉のみでも変化するものだ。

昔、自己啓発の本で読んだ内容を身をもって体感できた。

いやあ、一人旅って勉強になるなあ・・・汗

ちょっと寿命が縮まったかもわかんないけど、フィレンツェの人は優しいというデータもインプットされた。

ホッとしたところで、あってもなくてもいいような収納袋はもう落とさないように、ポケットの奥に押し込んだ。

コインランドリーに行ったら、まだ洗濯は終わってなかったのでその場で少し待つ。

コインランドリーの中では狭い空間で他人と一緒にならなければいけないので、どのように振舞ったらいいのかわからない。

しかし、話しかけても喋れるわけでもないし黙って洗濯が終わるのを待った。



洗濯が終わってホテルに向かうと、もうすっかり日は暮れていた。

レップブリカ広場のメリーゴーランドは既にライトアップされている。

夜の街は昼間よりも美しく活気があるようにも思えた。

先程の動揺はもう治まり、ワクワクした気持ちで胸が満たされてきた。


ホテルは広場のすぐ近く。


部屋に荷物を置いて、洗濯物を干した後に、もう一度街に繰り出すことにした。



つづく・・・