フライフィッシング専用区のある高知県の川へ1泊2日で遠征に出かけた。

久しぶりの釣りだ。

専用区であるからには、釣りは毛バリ釣りオンリー。

魚を傷つけないために、バーブレスとよばれる「かえし」のない針を使用し、キャッチアンドリリース、つまり釣った魚はすべてその場で放すというのが鉄則である。

 

午前3時半に起きて、かず君の愛車にロッド(釣り竿)やらベストやら着替えの入ったバッグやら、コーヒーやら、缶ビールやお肉やウインナーやキャベツやピーマンの入ったクーラーやら、おやつの塩豆大福やらとにかくゴタゴタと詰め込んで、夜明け前の高速道路に突入する。

このところ雨の日が続いていたが、祈りが通じたのか、天気はくもりときどき晴れの予想。

かず君は、釣り遠征に行く時は台風の速度さえも変えてしまう強運の持ち主なのだ。

 

四国山地の渓流N川は、惚れ惚れと見とれるくらい美しい川である。

川底の石は青や紫のまるで宝石のような色。

その上を流れる水は、離れて見ると透明なエメラルドグリーンだ。

その中を泳ぐアメゴとよばれる魚も、川石と同じ青みがかった魚体に鮮やかな朱点を持つ、それはそれは綺麗な魚なのだ。

しかし、さずがに毛バリ釣り専用区。

何度も釣り上げられてはまた川に戻されている魚たちは、しっかり学習しているために、そう簡単には釣り上げられない。

師匠のかず君も、フライフィッシングを始めたばかりの頃、修行のために通った川である。

 

私が初めてこの川に来たのは一昨年の秋。

まだど素人だった私は、ここで一匹の魚も釣ることができなかった。

釣るどころか、私の落としたフライに反応すらしてもらえなかった。

その時私は、フライフィッシングの難しさを痛感するとともに、心密かにリベンジを誓ったのである。

(いつかぜーったいこの川でアメゴを釣ってやる!)

それ以来、N川のアメゴを釣ることは、私の始まったばかりのフライフィッシング人生の目標となったのであった。(大げさだな)

 

まだ下手くそながら、何とかリベンジを果たしたのは1年後。

小さいが、とびきり美しい色白のアメゴを釣り上げたときは、ホントにホントに嬉しかった。

 

これがその時釣ったアメゴ。

 

前置きが長くなったが、今回の釣果。

台風による増水も引き、まずまずのコンディションらしい。

「いい時に来られましたねー」と管理人さん。

勧められて初めて入った川の上流部で、期待に胸躍らせながらフライを落とせどなぜか反応なし。

たまにぴしゃりと出てくるが、竿を振り上げると「スカッ」である。

ああ、どうして喰ってくれないんだ。

結局、かず君がイワナを二匹とチビアメゴと「まあまあの」アメゴを一匹ずつ。

私はオレンジの斑点が綺麗な小さなイワナを一匹だけ。

 

私が釣ったイワナ。結局これ一匹で終了。

 

かず君が釣ったチビアメゴ。チビでもホントに綺麗なんだな。

 

そう。簡単に釣れないのがこのN川なのだ。

なんだか割り切れない気分で、帰り道を歩きながらも、ちらちらと未練がましく川を振り返る。

「まあでも、明日があるさ!」

ゲストハウスでシャワーを浴び、肉を焼き、缶ビールを開ける。

 

「cogyの『チビ』イワナに乾杯!」

「かず君の『まあまあ』のアメゴに乾杯!」

 

二人ともややムッとしながら、ビールを飲み乾したのだった。