映画『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズは
女寅さんというか、イギリス版女はつらいよだ。
なんの変哲もない日常と妙齢の女に
次から次へといい男が現れる。
いい男、ではなく、これが
恋愛にかすりもしない男ならば誰にでも現れる。
それこそ毎日会っている。
スーパーに行けば魚売り場のお兄ちゃん、
タクシーに乗れば話好きのおじさん、
書店に行けば一緒に目当ての本を探してくれる親切なアルバイトくん。
たとえいい男?だとしても
惚れたはれた、なんてことにはならないものだ。
あちらもこちらも忙しい。
いちいちときめいていたら、
心がいくつあってももたないではないか。
けれど、寅さんやブリジットの場合は違う。
会う人会う人、あちらはなぜか恋する準備ができていて、
寅さんやブリジットに会うや否や
ものすごい勢いでモーションを仕掛けてくるのだ。
ものごとにはタイミングというものがある。
映画やドラマは、そのタイミングというものが
ないとはじまらないのだから仕方がないとはいえ、
恋をする準備がある人がいて、
ふわっとそこへ飛び込んでゆけば
日々孤軍奮闘中の男(女)は
掴まれてしまうだろう。
身も心も。
映画『ブリジット・ジョーンズの日記』は
漸くこの年になって、
ばかばかしいおとぎ話として観れば
悪くないんじゃないかと思えるようになった。
それは正月に父母が観ていた『男はつらいよ』と同じく、
恋愛というよりも、
めでたしめでたし、と思いつつ
あゝ平凡な毎日がいちばん、と安堵する
我が身ふりかえりのような映画だからかもしれない。
演じるのはレネー・ゼルウィガー。
多少の整形は仕方ないにしろ
年相応に崩れていって欲しいものだ。
寅さんは死んでしまって若いままだけど、
そんなの全然嬉しくない。
一緒にとことん崩れましょうよ。