銘柄やなんだを考えるのが面倒なので、家飲みワインは
RカマンでもMバリュでもIオンでもキャンティ一択だったが、
猛暑をきっかけに買い物すらも億劫になってきて
もっぱら瓶類は、ネットショッピングを利用することが多くなってきた。
怠慢?
いえいえ、そのぶん読書や詩歌制作の時間が増えるとおもえば
大いに結構。
人生の時間はいつまでも潤沢にあるとおもってはいけません。
今回注文したセットに、
ソムリエ氏のワイン紹介文が同封されていたので読んでみる。
インフィニト メルロー 2021(赤)
カシスやブルーベリーといった小粒のベリーが豊かに香り、
少しずつミントやホワイトペッパーのニュアンスが現れます。
果実由来の甘やかさと上品な酸が重なった明るい雰囲気で、
濃厚で丸みのある味わいは飲み応えがありながらも優しい印象を与えてくれます。
〜TAKAMURA WINE HOUSEチラシより引用〜
そうかそうか、どれ試してみよう。
小粒のベリー、たしかにこれは大粒のベリーではない。
苺はベリーに属さないけれど、間違いなくそちら側ではない印象がある。
少しずつミント、ホワイトペッパー。
!
言われてみればそうだ。
爽やかさがきて、そのあとピリッとくる刺激。
わかるわかる、と調子づいて飲んでいたらわからなくなってしまった。
一度口を濯いでから、もうひとくち含む。
果実の甘やかさ、上品な酸味(微炭酸のことを上品な酸とは恐れ入ります)。
濃厚で丸み、ぽてっとした感じか。
あなたって優しそうなひと、いやワインっていうこと、十分わかりました。
ソムリエというソムリエはすべて「鈴木ジェロニモ」を懐に隠し持っているのではないか。
ワインもこんなふうに説明されれば本望だろう。
それにしても素晴らしい。
先日ワインエキスパートの試験に合格した友人がいるが、
次回の飲み会で彼がどんな説明をしてくれるのか楽しみになってきた。
親しいだけにわたしたち友人のハードルは高い。
そんなの蘊蓄じゃん、と軽口を叩く酔っ払いであり、
最も修行しがいのある悪魔の飲み会である。
そのことを誰よりもわかっているのが、ワインエキスパートの彼なのである。
PayPayで購ふ冬苺。袋ください 漕戸もり
今日も中部日本歌集を読んでいきましょう。
ああここで謝るべきと思へどもアマリリスの茎あまりに太し
谷口富美子 連作 夕陽 より引用「第六十八集中部日本歌集」収録
たらればの連続で人生はあるのだが、
あのときどうして〇〇しなかった、
或いは言わなかった(引用歌では謝らなかったのだろう)かを振り返ると、
たいてい理由はどうでもいいようなことが多い。
それでも考えていると、
だってアマリリスの茎があまりにも太ってたんだもん、
は実によく言い得ていて、これまで神妙に考えていたことが
すっかりばかばかしくなってしまった。
気分がいい。
アマリリスの茎をじっくりみたことはないし、
植物専門家でもないから詳細はわわからないが、
水を含んだ木偶の坊のような印象が脳裏に浮かぶので、
まさしくそんなものに気を取られたら、
謝るどころか興醒めしてしまうだろう。
アマリリスの太った茎、謝ることをためらう感情、
ともにひたりと合う。
太し と結句に置いてアマリリス側の
そんなこと知らんがな、というふてぶてしさも伝わってくるので
軽快なおもしろみもある歌となった。
今後わたしが謝らなかったらそういうことにしよう。
今すぐに、想像のアマリリスを心に植えてみようとおもいます。

