職業病なので仕方がないけれど、
いくら腹式呼吸を心得ているとはいえ、
数日仕事がつづくと途端にざらっとする喉。
だから休みの日はできるだけ喋らないし小声で過ごすので、
わが家はたいていしずかである。
家人が勢いよくなにか話していても、
ハ行でちゃんと間に合う。
 
はぁ
ひぇ〜
ふうん
へぇ
ほほう
 
以上。
 
今は聞こえないふりもうまくなったので、
はたからみると家人は、単なる独り言を言っている変な男だ。
昨日はアメリカ大統領選について持論を滔々と語っていた(とおもう)。
ハ行で返事は完璧なのだけど、
家人の持論のひと言目からきれいさっぱり思いだせない。
あの男は一体なにを論じていたのだろうか。
 
 
 
 
咽喉科で貰う喉薬。最近美白効果もあると知って驚く。
 

秋の日を並んでいたらしげるから種火からしげつてしまふから

漕戸もり

 

喉にはいつも種火が燃えている。

激しさはないけれど絶対枯れないような。

 
 
 
 
中部日本歌集を読んでいきましょう。
 
何にでもかかる日本の税金が梅のかをりにかかる二〇二五年

荻原裕幸 連作 梅香税 より引用「第六十八集中部日本歌集」収録

 

荻原さんの歌の魅力はなんといっても視線のゆたかさだ。

変幻自在に移ってゆく視線の先に、つまらないものなどひとつもない。

先日から、日本でもアメリカでも選挙選挙で(名古屋はいよいよ市長選も控えている)

詩になりにくいような日常がつづいているとおもっていたが、

詩になりにくいと考えるのは勝手な思い込みで、

もしかしたら詩そのものがあふれているのでは、と期待させてくれるような歌を引いてみた。

二〇二五年の予想は不穏であるが、美しくもあり残酷に感じるのは短歌ならでは。

経済誌の経済予測を読むよりも一層心に響く一首となった。

ふりかかる。

花粉の手触りも含めて憎き花粉症まで想起させて絶妙。

師匠、さすがです。