歌会のお菓子のほとんどは手土産になる。
だからって、菓子はいらないという声を聞いたことがない。
歌を読み合う只中に、ふと傍らの甘いの辛いの硬いの柔らかいのの色とりどりに目を遣ると、
リセットされる感情が確かにある。
音のたたないさざ波のような菓子を、ひとつふたつ選び口に溶かしているうちに、
先程とは真逆の解釈が立ち上がってくることも珍しくない。
 
心を持ち寄って灯り合うような歌会に、子どもの遠足のような喜びを得て読みといてゆく。
短歌の神さまから許してもらっているような時間とおもう。
 
手土産は翌朝のおめざに。結社大会のお土産も嬉しく、暗記パンのように食べる。
 

ふざけたとしてもあなたのワイシャツのなかにもどつてしまふ夕暮れ  漕戸もり

〜東桜歌会9月詠草より

 

秋高しワイシャツにある予備釦

漕戸もり

 

あ。

題詠はワイシャツではありません。

得体の知れないものです。