名古屋駅で待ち合わせする場所の定番ワンツーといえば、ナナちゃん人形か金時計(銀時計の場合、いちいち「いい?金じゃないよ、銀ね。ギン!西口の方!新幹線の方!」などと念を押さないといけないので、なかなかランクインしない)に決まっている。
同じ名古屋駅でも桜通りや那古野方面へ行く場合は別にして、ざっくりと名古屋駅で集まるとき、この2か所のどちらかを押さえておけば間違いない。
 
この日はナナちゃんで待ち合わせ。
先に着いたよ、という顔つきのひとは、大抵ナナちゃんの写真を撮りながら待つ。
いやわたしは撮らんよ、というひとは、ナナちゃんを撮っているひとを眺めながら待つ。
いずれにせよ、ナナちゃんは何らかの影響を待つ人に与えながら、待ち合わせ場所に待ち続ける。
待っているのかどうかはわからないけど、ナナちゃん自身も待ってることにしておいた方が、待ち合わせキングにはふさわしいような気がするのだ。
キングじゃない、クィーンか。
 
彼女はいつもひとり佇んでいて、寂しそうだと思うかもしれないが、それは取り越し苦労というものだ。
よく考えてみて欲しい。
寂しいとき、両の手の甲を上に見せ、オノマトベで表すと「きゃっ♡」のような動作をするだろうか。
もし「しますよ」という人がいたとしても、そんな人は決して信用してはならない。
ちなみにこの所作は「きゃっ♡」以外に「うわ♡」「いやん♡」「わー♡」とも表現する。
さらに、ナナちゃんの顔に表情はないが、点のような待ち人を発見し、遥か遠くをじっと見定めているような気配がある。
待ち人が、まさにこちらに向かって来る様子を、待つ側から捉えた瞬間。
なんだかこちらまで温かい気持ちになるじゃない。
大体、会いたくもない人との待ち合わせ場所に、ナナちゃんを選ばないだろう。
それは、ネーミングのせいもあるけれど、ナナちゃんの持つ、どことなく温かな想像がわたしたちをそうさせるのだと思う。
 
すこしだけ待つ時間があったので、派手なナナちゃんの写真を撮りながら想像した取りとめもないこと。
金を買いましょう、だそうです。
 
 
 
待つあいだ、当然写真を撮りますね
 
 

明瞭なひとが夏服脱ぎ着する  漕戸もり

 

夏服の着脱をオノマトベで表すと「するっ」となります。

奥ゆかしく「はらり」と言ったりもします。