気に入っていた焼肉店の屋号が変わったり、同じくホルモン屋の接客がどうも荒くなったりして、それで最近立ち寄るようになった焼肉屋さん。飛騨牛専門とうたうだけあって、それなりのお値段はするけれど、客席のどこからも見えるようお店の中央に肉をしつらえるキッチンがあり、ひとりの白衣を着た男性が黙々と作業をしているのがいい。更に、彼は無口なのだが、お客さまの入退出の際だけ、ここはオペラ座かと思うようなテノール歌手ばりの艶のある声で「いらっしゃいませぇ」「お待たせいたしましたぁ」「ありがとうございましたぁ」などといきなり張り上げるので、びっくりさせられる仕組みになっている。こういうびっくりなら、いくらでもうけたい。うざっ、と思えるかどうか、自分自身の健康のバロメーターにもなり便利でもある。
ただし、好きになりそうなあなたにも唯一の盲点があった。
案件でもなんでもないからずばり言うけれど、どうでもいいお店ならずばりどころか、声にすることすら勿体無くてただ通わなくなるだけだから、そこのところの愛は知っておいてほしい。
 
メニューに日本酒がない☔️
 
確認なのですが、焼肉と日本酒ってバカップル?
 
メニューにないだけでは挫けません。ということでお店のお姉さんにお尋ねしました。
するとお姉さんは焼酎のページを指さして「こちらです」とおっしゃる。
ああ確かに!焼酎とてJAPANのお酒ですね。あなたは正しい、正しいですけれどもね、大将に一度聞いてきてもらえませんか、と聞くわけです。サラリーマン社会でいうところの「上司を出せ」ですか?いやいや、一応そうなんですけど、アルバイトのお姉さんが辞めてしまわないよう、やさしくやさしく言いました。暫くするとお姉さんは戻ってきて「小瓶の山田錦ならあります」と言うので、それしかないならそれで、とお願いしたのですが、次にお姉さんが来て言うには「本日山田錦は売り切れてしまい、こちらならあります」とのことで(開店したばかりのお時間でしたけれどもね、まあまあそれはいいでしょう)出てきたのが越乃寒梅小瓶。
これって…。
酒問屋さんからの試供品?
まさかテノール歌手大将の私物?
どちらでもいいし、どちらも正解だっていい。
そんなことより、もしよろしければメニューに日本酒を載せてくださいませんか、という
黄金週間仕事終わりの夜のお願いでした。
 
こう見えて熊のように食べる

 
 

平服でどふぞかひこは空のままで    漕戸もり