以前は高岳や新栄が主な夜の飲み処と決めていた。

以前といっても、もうずいぶん長いこと。20年?もっとかもしれない。

2時間で出ていけとも言われないし、大抵(雇われだとしても)魅力的な店主がいて、旨い酒や料理にありつける可能性が高い。おもてなししたいひとがいる場合、間違いも少ない。というかわたしが落ち着ける。

その夜の飲み処に、近ごろ金山北という場面が加わった。

日本特殊陶業市民会館の裏手あたりといえばわかりやすいか。

イオンやスギ薬局の脇の細い道を喧騒から逃れるように行けばゆくほど、塩加減のよい干物というかさっぱりとしたきっぷのいい店主というか、そういう趣のあるものごとが集まる潮だまりのような店が、ほつりほつりとあらわれる。

だとしても、金山という街をみくびると大惨事が起きる。

鄙びた古い旅館跡のような酒処に入ると、回りのお客さまが同伴出勤前のカップルで埋め尽くされていたことがあって、地酒一杯で退出してきたという悪夢もあった。これも一度や二度ではないし、これからも、又新栄でも高岳でも、永遠に出くわすだろう『学習』である。

だとしても、お金も時間も限りのある身の上、数多の酒飲みユーチューバさまの足元には到底及ばないけれど、扉を開くときの臭覚を研ぎ澄ませていたいと思う。

 

 

月下美人と対等にあるやわらぎ水

 

 

霜の果やはらぎみづに洗ふ舌     漕戸もり

 

 

初めてのテーブル席だったけれど、ここはカウンター席がおすすめ。