一枚の写真から、匂いも焼き加減も思い出すことができる。(干からびた魚に見えるけれど、実際は焼きたてで身の詰まった鯖だった)

と同時に、ひとりひとつずつありまぁ〜すという、鼻ピアスの無愛想な女の子のアルバイトの声も甦る。

コース料理だったので、どの料理もひとりにひとつは当たり前なのだけど、魚1尾まるっとというと、もうそれ以外の役者はいらないというくらいインパクトがある。

極端に言えば、これだけで酒の肴は十分という気分になる。出すタイミングを誤ると、今まではいったいなんだったのか、と思うし、このあと焼き鳥なんかだと胸焼けがしそうだ。

ちなみに、これに続いた鶏肉の炙り焼き?と玉ねぎの天ぷらは、同席した若い友人に譲り、最後まで鯖でちびりちびりお酒を嗜んだのであった。

まあ、大衆居酒屋でそこまで真摯に考えてコース料理を考える経費も労力もないだろう。

高望みするなら他へどうぞ。

はい、わかりました。

 

顔の向きもご自由に

 

花冷の空いた茶碗を重ねたり   漕戸もり

 

お店で空いたお皿を重ねるのはどうも苦手だ。

いくら食洗機に入れてしまうとわかっていても、うわぁとうわぁと叫びたいのを堪えている。

仕事も恋人との間も絶好調の友人が、空いたお皿はこっちなどと言ってさくさくと集め、バベルの塔の如く積み上げるのを見ると、いけないものを見てしまったような心地になる。

お皿の裏側まで汚さなくても、と。

おっと、つまらない正義感を振りかざしてしまった。

つくづく政治家には向かないタイプだと思う。