瞬くように過ぎた一月。
味がよく沁みこむからと、大根へ刃を向けるときですら、どこか躊躇うような、心が痛むことが次々と起こった。よくもまあ涸れないものだ、と感心するほどに。
今年描きはじめた絵は、下書きすらままならないで、明日から如月。
極めつけかよ
事件は酷い。許されないし、許してはいけない。
けれど、阿呆なわたしは、奥西元死刑囚を挟んで存在した女たちを慮る。
閉じられた生活の中に、美しい男がいたことを憎む。
憎むのは、女たち以外のすべてだ。
あのときの村人も、令和の人々も、感情を沈めて奥西を仰ぎみる。
美しい男としての奥西をあおぐ。
雨後の草引きぬく力貸してから返してといふさざんかが咲く
漕戸 もり
