雪空の下 重心が心許なくなる
無表情の人たちと たくさんすれ違った雪の日
無表情は 不機嫌に間違えられやすいから注意が必要だ
とても失礼な言い方だけど
どんなに頭のいいひとでも
不機嫌じゃないと証明するのは
なかなか容易ではない
不機嫌だと思われないよう張り切るものだから
まるで真っ二つに割った白菜のように
渦巻いている複雑そうな内側を うっかりさらけ出してしまう
白菜の魂の半分で じゅうぶん満たされてしまうようになって
わたしにはもう必要のない 片割れたちとすれ違い
手放したほうの雪の空をおもうとき やっと無表情を張りつかせているのだろう
白菜として
雪の日の 白菜のような寂しさとして
漕戸 もり 「雪と白菜」より
猫のお腹みたい
蜂蜜の白く固まる雪の日よ 抱きしめるには距離が足りない
漕戸 もり
