長らくMCを務めさせていただいていたジャズのビックバンドが、メンバーチェンジを経て初リサイタルをするというので聴きにいってきた。
半分は知った顔だけれど、半分は初めましてのメンバー。
とは言っても、経験者ばかりなので慣れたものである。
以前のコンサートマスターが解散を決めてから、紆余曲折。
今のコンマス、バンマスのがんばりがわかるリサイタルだった。
席は以前のコンマスと隣だったので、彼の甘&激辛解説付き。
同業者の感想はなかなか手厳しいが、そうなってしまうのもわかるからふむふむと聞いていた。
聞いていたけれど、その感想は、わたしなんぞが同意できるものではない。
音楽は好きだし、ジャズも大好きだけれど、楽器はピアノとアコースティックギターが少々の身の上で、言えるのは<よかった>とか<みんなたのしそうだった>とかそれくらいで、仮に、素人のわたしでもわかるようなミスタッチがあったとしても、安易に<あそこ、間違えてたよね>などと言ってはいけないような気がするのだ。
 
エンターテイメントの世界に携わっていると、エンタメ他種の出来栄えを、簡単に悪いほうに評価することがはばかられるものだ。それは、駄作を披露するためにそこに立っている者などひとりもいないことと、そこまでに費やした時間や労力を<知っている>からである。
出来具合をばさばさと切り捨て、嫌味のひとつも言えるのは同業者だけだ。
そういう意味で、良い悪いどちらとも評価をしてもらえる優れた同業者を、いかに数多く持っているかがじぶんの財産になる。同業者は辛口だからと、耳を綴じていてはそのひとのエンタメ人生の先は短い。
お客様に褒められたり、良かったとか、憧れますとか言っていただけたり、仕事をリピートしていただけたりすることは、エンタメでは<あたりまえ>のことなので、ときどきそういうことをSNSであげているひとを見ると、心のなかで気落ちする。それがかわいい後輩だったりすると、もうたまらなくがっかりするのである。
 
新ビックバンド。
よかったです。
これからも応援します。
嘘ではない。
でも、
薬にはならない感想です。
 
 
 
 夏館乾いてゐるか濡れてゐる   漕戸 もり