出不精である。
仕事やのっぴきならない用事があって、その<ついで>に
温泉につかったり、城址を訪ねたり、なにやら高いところや低いところ(渓谷ですな)
をのぼったりくだったりすることはあるけど、先日、
そのようにして訪れた場所の土産を、360日旅をしているような友人に
「旅行のおみやげ」と言って渡したら、
「それは旅ではない。出張の土産だ」と窘められた。
そう言われてみればそうだ。
温泉は疲れを癒すはずなのに、帰ってくれば<ああ疲れた。家がいちばん>などと
これみよがしに寝転がっている。
 
趣味は旅行です、と言う人以外(←ここ重要)の人に会ったことがない、
というとちょっと大げさかもしれないけど、趣味でなくても
「大型連休に旅行でも行こうか~」とか
「海外いきてぇ~」とか
「温泉の計画立てようぜ」とか
更に言えば旅でなくても、
「富山の〇〇をたべにきた」とか
「沖縄の○○○○を一度近くで見てみたい」だとか、そんな思いを
日常でふと漏らすことがある人以外(←ここ再び重要)の人に会ったためしがない。
 
お前はそんなふうに思ったことがないのか?と問われると、
世間体もあるので言ったことはあるし、
むしろ人間関係を良好に保つため、自ら率先して発信することはある。
そう。
言ったことはあるが、思ったことは人生で数えるほどしかない。
ときどき家人が「人生で一度は○○(よくわからない外国)に行き
○○○(理解不能な滝やら岩やらのたぐい)を間近で見たい」などと、
独り言ちているけれど、わたしが
「へえ、そうでっかご苦労様ですな」という態度なので、
その手の夢を語ることがなくなってきた。
もしいつかわたしが、よくわからない国の意味不明な土産を買ってきたら、
それはわたしの旅ではなく、家人の旅に同行したために買う<出張土産>なのだろう。
つくづく面白みのない人生である。
 
      半島をブーツに喩へ草むしり    漕戸 もり
 
 
 
いただく旅のお土産は無条件で嬉しい。