名駅(名古屋駅。迷駅ともいう)周辺で仕事があがると、
以前はデパートや地下街をひととおり冷やかしてから帰るのが定番だった。
だった。
過去形。
名駅はいつからコートのポケットにみつけた去年の飴のような、
すこし溶けて歪んでいるのに、ぜんぜん劣化していないよという顔を
見せるようになってしまったのだろう。
がんばってもがんばっても、むしろ頑張るほどに
がたいの立派な空虚をみているようだ。
デパートはイオンではない。
生活はインテリア雑誌のなかにはない。
飲食だってゆっくり食べられない。
手の届かないものも、身の丈に合ったものもどれも中途半端で、
急かされているような名古屋駅からすっかり遠のいてしまった。
駅があるのは、こういう場合名古屋駅にとって不利かもしれない。
さっさと見切りをつけやすいからだ。
仕事場を離れて向かうのは、郊外のセレクトショップが集まる大型施設。
この日は、名駅から乗り換えなしでいける上小田井。
休日に雨だったりすると、
一日大型商業施設で過ごすというファミリーがいるというのも納得。
そのうえ、デパートにしかないはずのお品も扱っている店舗がふえてきた。
こともあろうに、住みたいな、とまでおもう。
こういうときは非常に危険な魔法にかかりやすい。
うっかり必要のないものを買ったり、食べてしまうのだった。
あれ、これって昔名駅で散々経験してきたことじゃね?
おいおい、名古屋駅。
かりにも唯一無二のときがあったから、あなたばかりのせいにはしない。
しないけれど、
あなたって一度でもわたしのことわかってくれようとしたことってあるのっ?
って言いたくもなります。
膕の現品限り白さかな 漕戸 もり
写真は、プロローグミラー。
鏡ではなく、花瓶を置いたり、指輪や時計や鍵などを休ませるトレーのこと。
無駄な買い物は大切。
※なぜか写真が横。失礼。
