紙の匂いだ
紙にもいろいろあって
おびただしい紙は
冊子 書籍 書類 
印刷物とはちがう手書きのメモのたぐい
それから
真新しい これから刻まれるのを待っている
コピー用紙
たしかあのとき と思うとき
森の記憶が淡いほうが どことなくちゃんとしていて
森の記憶が濃いほうが 傷ついているのだ
バックヤードは雑然と
そのどちらとも まるで受け容れていなくて
パソコンやコピー機がふううううと息を吐きつづけている
受け容れない というのは
突き放す というのとは違う
その証拠みたいなバックヤードなのである
 
 
    茉莉花の急に泣き出しても困る   漕戸 もり