おとうとというたよりなさは言いようがない。
たとえおとうとがだれそれに尊敬されていようとも
信憑性がない。
その尊敬ですらたよりない。
ともだちが大挙におしよせてふたつの鍋にカレーをこしらえるけれど
嬉しいんだか、なんで夕食を近所の居酒屋ですませてこんかね、というか
実にやっかいである。
なんなのだろう、おとうとというのは。
 
おとうとの住む町である。
雪国である。
あにもあにで心配ではあるけれど
おとうとが雪国にいるというのが余計いけない。
やわらかいとおもったら凍っている。
雪は時間が経つと凍るのだ。
そのわかりにくさがたよりなさの起源なのである。
 
  熱帯びて湯豆腐くづしつつ掬う濁ることなきおとうとのみづ
                  漕戸 もり