2022年夏の吉本興業御園座ウイークの最後を飾った兵頭大樹さんの独演会。
兵頭さんの面白さは、人に教えたくない先物買いのような味がする。
似たようなことを兵頭さんのファンはきっと全員思っているものだから、
秘密結社のような公演を、選ばれし者みたいな顔をしてずっと観てゆくものだとばかり思っていた。
ところが今回は、なんと1,100人越えの来場者という。
わたしが本妻、あなたが二号さん、三号さん…という間柄であれ、
あのひとを好きなのはかわりないのだから仲良くしましょうね、というように
観客席はすっかり温かなムードになっていたのも、兵頭さんの飾らない話芸の影響だろう。
これがアイドルならば、血みどろの話のひとつふたつご披露できたのだろうが、
披露できなかったことを喜びとしよう

今回の吉本興業御園座ウイークも、都合の許す限り通ったけれど、
話芸だけで二時間もたせるのは兵頭さん以外に見当たらなかった。
あの笑い飯でもミキでも和牛でも、約一時間半のステージでお腹一杯になった。
いい意味でも悪い意味でも。
※山里亮太さん独演会は新型コロナ感染のため急遽公演中止となりました
舞台装飾も何もなく映像上映などの派手な演出もない。
かえってなにもないのが心地いい兵頭大樹の「おしゃべり大好き」。
芸人さんだけでなくどんな職業の方も、いくら研鑽を積んでもモノにならないひともいれば、
スッと交わるように手に仕事が馴染むひともいる。
この公演で、兵頭さんが「すべらない話」で話す100倍楽しい話も大好きだけれど、
話と話のつなぎ目のようなほっこりとした話が温かい

このあと大阪や東京公演が控えているので、あまり内容を言うのは慎みたいのだけれど、
自分は飽き性で、やろうと思ったことをつぎつぎとはじめてはどれも長続きしないのだ、と
ぽつり言ってから、それでも不思議とお笑いだけはやめようと思ったことが一度もないんです、
とすこし笑った。
仕事が手に馴染むとはいえ成功するとは限らない。
兵頭さんが成功したかどうかはわからないけれど、
~そもそも芸人に成功ということばをあてがうことに違和感があるけれど~
座る箱がひとつあるだけの殺風景な舞台は、
兵頭さんのやめようと思ったことがない理由が乗っかっているようだった。
そのつづきをまた来年も観にいきます。
アイドル並みの兵頭大樹グッズ
買う人の列ができていました
草いきれ緞帳降りてだれも草 漕戸 もり
