なんじゃここ、という此処ですが
修理したジュエリーが速攻壊れたので再度修理(なんと有料
)。
社長が生きていたらプライドが許さなかっただろう。
壊れたことも、有料修理だということも。
わたしも許さないしね
それにしても此処はその大昔、閉店後夜中まで遊んだ場所だったのが懐かしい。
今は、なんじゃ此処は?というほど気位の高い店構えになったが、
こうなるまえの、いかにも街の宝石店というような雰囲気がすきだった。
社長も単にお金がなかったからなのかわからないが、いつも同じシャツとスラックスで、髪も薄くなりつつあるのに整えないものだから、ぼさぼさというより心もとないさらさらで、言いようのない狂気と長閑さを備えていた。
あのときの仲間ともすっかり縁遠くなり、そんななか奇遇なことに社長とは縁があって、細々と続いていたのにあっけなく死んでしまって、この場所にたったひとりで、社長がデザインしたジュエリーの修理を持ち込んでいることのなんてつまらないことか。
社長!
わたしを此処にもどさないで。ジュエリーは二度と壊さないでください。
7月の納骨が終わったらお墓にちゃんと会いに行きますから。
そういえばそろそろ四十九日だ。
大丈夫。忘れはしませんから。
あぢさゐの隙間を埋める恨みごと
漕戸 もり
