あの子が大切にしていた言葉を |    しおじのし

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  ー裏路地の one dropー

いつものお菓子屋
あの角の店に
笑顔で立っているお姉さんは
「有り難うございます。」
「恐れ入ります。」と、
キャラメルしか買わない僕に
挨拶してくれる。
一寸前の戦争で
弟たちを亡くしたと
酒屋のおばちゃんに聞いた。
いつもお砂糖の匂いがしていた。


僕の自転車の補助輪がとれた頃
お店のシャッターは
降りたまま開かなくなった。
お姉さんは赤い髪をして
かかとの高い靴
駅前でよく見かけた。


季節はずれの大雪が降った晩
お姉さんは店の前で
何かをつぶやいている。
うん。
僕には確かに聞こえた。
匂いはすっかり変わっていたけど



僕達は今、
あの角の店の
シャッターを開ける。
かすかに向こう側から
あの日の匂いがしてる。



僕も同じように言えるだろうか・・・


有り難うございます。
恐れ入ります。