
きれいな表紙は森本良成さんの装丁。
渋谷さんの詩は非常に個性的。いわゆる現代詩だが、それほど難しいものではない。
どちらかと言えば読みやすい。
でも、しっかりと内容を捕まえるには少々難儀な面もある。
表現が独特なのである。
一つ例を挙げよう。
←クリック。「薄暮」という詩。
彼独特の世界観でありながら、言われてみると、みなが感じ取れるものでもあるような。
もっといえば共感できてしまう。とんでもないような気がするが、じっくりと読めば、「そういえばそんな気にもなるなあ」と。
スッキリとはしないが、「わけわからん」というものでもなく。
常識的にはとんでもないことを書いているようにも思えるが、なにか共感できるところがあり、「自分がある」ということの不思議を思わせられてしまう。
普通につきつめてゆけばそれは哲学、あるいは宗教になるのかもしれないが、彼はそうならない。
その手前で、不思議そうな顔をして、いつまでも空の青を眺めているような。
もう一篇。巻末の詩。
「途上者」です。
この街を行く理由を帯びない私が
見知らぬ顔の散らばる街路を歩いている
どの地点で立ち止まっても
そんな私を歓迎する風も声もない
この広がりの広がる果てに
私は安堵の居場所をねがいながら
私は生まれた時からの途上者
いつまで経っても一人の
もう長く会わないが、また一度渋谷君に会いたいな。