幻太郎さんの詩集 | 喫茶店の書斎から

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コーヒーカップの耳

入院前後に届いていた詩集。



『みずいろの含羞』ですが、井口幻太郎さんからお贈りいただいたもの。
そこで思い出して、一冊の詩集を探し出してきた。



幻太郎さんから、ずいぶん昔にお贈りいただいたもの。『野の鈴』です。
まことに美しい詩集。箱入りです。
開いてみると紙片が挟んであった。わたしの字で「いいなあ!いいなあ!と独り言を言いながら読んでいた。」とある。
さらに「20年の匂い」とメモしている。意味がもう一つ分らない。よく考えてみた。
この詩集は昭和60年発行である。中村隆さんが丁寧な跋文を書いておられる。
そうか、昭和60年発行だが、わたしが戴いたのは、その20年後だったというわけか。
そのころに幻太郎さんと、ちょっとしたきっかけで接触が出来たのだろう。
この詩集『野の鈴』から一篇紹介しましょう。
いくつかの詩にわたしは、杉山平一先生のように鉛筆で丸印をつけているが、
この詩には二重丸をつけている。



それから、もっと後にあるこの詩にも丸印をつけている。

  知っている人が道路でごみを集めていた
  というと
  しっかり勉強しないとああなるよ

  それからその子は
  車が出る時ぼくに気付いて
  手を振ってくれたと
  言いたかったのだそうだ
          (清掃夫)


幻太郎さんの詩は、取り立てて特別のことが書かれているわけではない。
しかし、読む者の心の中に静かに入り込んでくる。
小さな声で、そっとささやいてくれるように。
そして、じんわりと暖かなものを感じさせてくれる。さらに少しばかりの愛(かな)しみも。

さて、今回お贈りいただいた『みずいろの含羞』である。
実は入退院騒ぎの中で、まだゆっくりとは読ませて頂いてはいない。
最初の3篇を読んだところ。
その3篇を上げておきましょう。







「星影」「異星人」「果実」です。
これから先を読むのが楽しみです。わくわくします。

井口幻太郎さんのこと、以前にも書いてました。
『奇妙な商売』という詩集をお贈りいただいた時のことです。

https://blog.goo.ne.jp/coffeecup0816/e/ad30af55caa7bc41e684d66ddbb6d9c6