運賃が一万円をこえる客人のことをオバケと呼ぶとか。
(めったに現れないことから)
流しでも、たまにオバケに会える。
ただし私の場合は料金メーターなどないので、
客人が自発的にオバケとなる。ニュアンスはより神様に近くなる。
しかし、とりあえずオバケとしておこう。
オバケの方々にはお世話になっている。
が、オバケの登場を期待してはならない、と私は自戒する。
オバケとの遭遇はいつでも思いがけない。
つまりコントロールできない。
そして、何だって思いがけないことの方が面白いし嬉しいからだ。
若くしてオバケになった某御仁はこう言っていた。
「どこでも、とくべつなサービスを受けたと感じたら何か返したい。自分は若いから、場合によってチップを出すことが失礼かもしれない、そう思い何もできないこともある。自分が返せるのは金くらいしかない。だから気持ちを素直にお金にしたいだけなんだ」
またある若い衆(たぶん従業員たち)を連れた旦那オバケは、まずこう言った。
「おい、おまえたち。歌を頼みたかったら自分で出しなさいよ」
そういってオバケはオバケの紙幣をだし、オバケ好みの歌をオーダーする。
私はこれで彼ら皆にサービスしても全然かまわないし、
ボスの力で楽しむ、というのは通常の風景だ。
しかし、ボスのオバケがそう言うので各々好きなものを頼むため
やがて、従業員もオーダーをはじめる。そして一番若い青年が私にオファーする。
「いま彼(若い従業員)が出したワンコインは(私の)諭吉よりも大きいんですよ」
これはキレイごとでなく、本当のことなんだろう、と
私に実感として伝わってきてしまった。
さてオバケ(実際は神様です)にも色んなスタイルがある。
下記オバケタイプA~Zです。(Hまで)
オバケA
・周囲のために流しをふるまい場を動かすオバケ
「皆さん、好きな歌を頼んでくださーい」
オバケB
・好きなだけ流しを愉しむオバケ
「今夜はキミを買ったョ」
オバケC
・思いきって験をかつぐ感じのオバケ
「金は天下のまわりものだからさ!」
オバケD
・単に酒で勢いづいた結果のオバケ
「HOO!あんた最高だ」
オバケE
・諭吉がデフォルトであるオバケ
「これでいいかな、ありがとう楽しかったよ」
オバケF
・孤軍奮闘の流しを激励するオバケ
「応援する、やめないで続けてくれよ」
オバケG
・見栄をはるためにオバケ
「いやオレこの人に100万は使ってるよ」(使ってない)
オバケH
・みんなの分を立て替えるオバケ
「おつり出ますか」
