何故か、主人との旅行帰りだ。
我が家に戻る前に、私たちはお土産を渡しに、隣にある私の実家、一人暮らしをしている母のところを
訪れた。
「ただいま~。」
「あら、お帰り。早かったね~。」と元気そうな母。
「直接来たんよ。」
「まぁ、そうね。楽しかった?」
「うん。お土産持ってきた。」
「そんなん、よかったのに。ありがとねぇ。」
・・・・・・・
「お夕飯は、もう食べたの?」と私。
「いやぁ、まだよ。」
「じゃ、作ってあげよっか。」
「疲れてるのに、いいよ。」
「いや、どうせ、帰ったら作らんといかんから・・・ここで作るよ。」
・・・・・・・
台所に立った私は、くつろいでいる主人と母の会話を聞きながら、食材を探した。
冷蔵庫には、卵が何パックも、山のように入っている。
「お母さん、卵、ありすぎ。」
「だって、一人だから残るんよ。生協からは毎週送って来るし。卵は、食べないし。」
「食べないって。・・・じゃ、卵でなんか作るわ。」
・・・・・・
ところが、一体いつの卵なのか、どれも古くて使えそうもない。
「こりゃだめだ。おかあさん、(私の)家から、何か持ってくるね。」
「何かって?」
「お魚、冷凍してあるから。」
・・・・・・
私は、鍵をもって我が家に向かう。
たった1週間ほどの留守だったのに、ずい分と久しぶりな感じがする。
鍵を差し込むと、中から物音がする。
「え。」
背中がぞくっとするような恐怖心。
そっとドアを開けると、目の前に、中に向かう足のかかとが見えた。
「だれ?」声にならない声。
中に誰かいる。
どろぼう?強盗?・・・
「あ。」
そう言ってこちらを振り返ったのは、年の頃30くらいの見知らぬ男性だ。
「誰ですか?」
・・・・・・
彼は、無言で、不敵な笑いを浮かべている。
そして、何もしゃべらない。
動かない。
廊下の奥のリビングを覗くと、ドアが開いていて、何人もの人が動いているのが見える。
何だかおじいさんやおばあさんたちのようだ。
何をしゃべっているのか分からないが、結構な人数のように思える。
「・・・何なさってるんですか?」
「・・・(無言)。」
「警察呼びますよ。」
「・・・。」つっ立って笑みを浮かべて動かない男性。
・・・・・・
私は、手を震わせながら携帯を取り出し、110番に電話を入れた。
「はい、警察です。事件ですか、事故ですか?」
「・・・う。う。」言葉が出てこない私。
「どうされましたか?・・・あなたがしゃべらないとわからないんですよ!!
しっかりしてください!!」
めちゃくちゃ大きなゲキが飛ぶ。声だけで心臓が飛び出しそうだ。
「・・・留守だった家に、人がいるんですぅ。」
「わかりましたぁ!!」
警察の人は、ものすごい大声叫んだあと、いきなり電話を切った。
大丈夫か?住所も聞かれなかったけれど、逆探知で住所もわかるのかな?警察って、あんな対応するの?
来てくれる人は、派出所から来るのかな?自転車で?・・・
様々なことが『瞬時』に頭に浮かぶ。
向こうの部屋では、どうもお年寄りの談笑が続いているようだ。
ん?・・・中年女性の大きな声が聞こえてくる。
「私が立候補いたしましたのは・・・。」
え、え、え?
選挙運動してるの?家の中で?
混乱している私は、何が何だかわからない。
外を見ると、先ほどまで明るかった空が真っ暗になっている。
慣れた手つきで廊下の灯りを付けたかの男性は、同じ姿勢で同じ笑顔で、また何もしゃべらず不動の姿勢で
立っている。
人形か?
こわすぎる。
「東京都知事選では、小池百合子氏が当選したわけですが・・・。」
奥から聞こえる声。・・・。
「お~い。起きんか~い。」
いきなり聞こえる主人の声。
「は。・・・???」
・・・・・・
私は、リビングのソファで目を覚まし、飛び起きた。
頭が、ぼうとしている。
どうも、いつのまにかうたたねをしていたらしい。
肩が重く、冷たい。
冷房が効いていたせいなのか、それとも怖さで寒いのか・・・。
「なんちゅう顔してんの。」と主人。
「・・・めちゃくちゃ怖い夢見てた。」
「なんじゃい、そりゃ。」
・・・・・・
目の前のテレビでは、夕方のニュースが流れていた。
東京都知事選の解説があっている。
画面の中で、小池さんが集まった聴衆に笑顔で手を振っているのが見えた。
「こわかったぁ。」
・・・・・・
あきれ顔の主人を前に、今見た夢の話をする私。
「きみ、夢なんて、よう覚えとるね。」
「だって、超リアルだったんだもん。それに、すごいわぁ。ニュースの音が、夢で合成されてちゃんと
話に組み込まれてるんだよ~。」
「そういえば、耳が一番最後まで残るらしいよ。感覚器官の中で・・・。死ぬ時もね、他の感覚が
なくなっても、みんなが周りで泣いてるのが聞こえるんだって。」
「へぇ。それはそれで、こわいね。・・・いや、いいか・・・。いや、こわいわ。」
・・・・・・
真夏の夜の怖い夢の話、でした。
(追記)
夏に、新婚旅行以来の夫婦二人の旅行を予定しているところです。
冷蔵庫の残り少なくなった卵の在庫、母に勧めているデイサービス、先日の障がい者施設の大事件、
そして、東京都知事選・・・。
思い出してみると、様々な最近の出来事が組み合わされた夢でした。
人間の頭って、結構すごい。