ありえないこと | くにこ先生のコーヒーブレイク

くにこ先生のコーヒーブレイク

通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 以前、『偶然』というブログを書いたことがある。
 長年全く会わなかった友人と、偶然これも行くこともないレストランで遭遇したこと、そして、高校の
 同級生が語ってくれた、偶然にもドーバー海峡で友だちと同じ船に乗り合わせたという話。
 偶然、なんて、これくらいで打ち止めかなぁ、と思っていた。
 ところが、先日のこと・・・。

 その日、息子が他県に行くというので、たまたま休みだった私は、駅まで彼を車で送って行った。
 家を出るときに、下の娘が外出したということを聞いていたので、駅からの帰りに合流できたら一緒に
 帰れるのにと思って、車からハンズフリーの電話をかけたのである。
 2度ほど電話したのだが、留守電になるので、「まぁいいや、連絡があったら、迎えに行こう」と思って
 帰りを急ぐことにした。

 駅からの道はいろいろあるが、その日は裏道を通った。
 しばらく進むと、娘から電話の電話。

 「あれ、かあさん、電話した?」
 「うん。」
 「今、どこ?」
 「うーん、と、新町かな。」
 「エー、新町のどこ?」
 「○○パンのとこ。」
 「え~、前にいるよ、前。」
 「え、あっ、いた。」

 道の向い側に、娘がいる。
 車を停車させると、彼女は携帯を手に持ったまま、慌てて道を渡ってやってきた。

 車に乗り込んだ娘も、私も笑い転げた。

 「びっくりー。なぁんで、こんなとこにいるの?」
 「ほんと、びっくり。いるって、たまたまたまたま通っただけだよ。」
 「なんで、なんで。」
 「さと(息子)を駅に送って行った帰り。ちいちゃんも、なんで、ここにいたん?」
 「たまたま、ほんと。あのね、今日インテリアのお店に行こうと思って、バスに乗ったんやけどね、
  乗り間違えたみたいで、途中からバスが違う方向に行ってさ。
  それで、慌てて降りて、これから歩いてお店に行こうと思ってたとこ。」
 「えー、それにしても、すごいねぇ。」
 「すごーい、偶然。」

 新町というのは、熊本城の南に位置する城下町の名残を残す古い町である。
 私が、この新町を通るのは、熊本駅に行く時か、親せきの家に行く時くらいしかない。
 1か月に1回も利用するだろうか、という道である。
 娘が外出する時は、ほとんどが熊本市の中心街付近なので、この新町を通る機会はもっと少ないに違いない。

 熊本市は、面積にして400㎢ 弱、73万の人口を抱える中核市である。
 2012年には、政令指定都市への移行も予定され、道路も縦横に通っている。
 ・・・何が言いたいか、というと、これほどたくさんの道の中で、この道路を通ることは「めったにない」
 ということだ。

 さらに、あの時間帯。
 平日の午後3時過ぎのことだった。
 たまたま娘も私も同じ日が休みになって、それぞれに違う予定で動いていた。
 娘も私もお互いにどこにいるのか、全く知らなかったのである。
 これまた、何が言いたいか、というと、あの時間に同じ場所に居合わせるということも「めったにない」
 というか、ほとんど、「ありえない」ことなのであった。


 あの日、あの時間、あの場所、あのタイミングでなければ。

 「なんか、すごいね。」
 「うん。なんか、意味あんのかな?」
 「会ってなかったら、なんか事故に合ってたりして・・・」
 「きゃー、やだ。そんなのあり得ないし。だけど、いいことあるかも。」
 「あはは。ほんと。」
 「あんなことってないよね。」
 「うん。ないない。」


 まあ、残念なことに、この偶然のありえない出来事があってから、とりたてて良いことも悪いことも
 起こらなかった。
 そして、これは、とりたてて意味のある出来事、でもなかった。
 まあ、当たり前だけど。


 それにしても、偶然というのは、起こりうるものなのだ。
 そう考えると、宝くじに当たるのもあり、なのかな。
 いやいや、偶然というものが、めったに起こらないとして、めったに起こらないことがすでに起こったの
 だから、宝くじは無理だろうな。