寒いね | くにこ先生のコーヒーブレイク

くにこ先生のコーヒーブレイク

通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 先日、久しぶりにピザ屋さんにお昼のピザを注文した。
 いつもメニューは決まっていて、ミックスピザとピリ辛ピザの2枚である。
 十分な大きさなので、大抵はお腹いっぱいになるくらいの量である。
 コーヒーを入れて待っていると、ピザ屋さんは、ちょうど時間通りにやってくる。

 屋根つきのバイクに乗ってやって来たアルバイトのお兄さんが、チャイムを鳴らす。

 ピン・ポン・・・

 「はぁい。」
 「お待たせしました。ピザ○○○です。」
 「すぐ行きまぁす。」

 玄関を開けると、四角い黒いケースを片手に抱えたお兄さんが立っている。
 赤いサンタクロースの衣装である。
 普段着のGパンとセーターの上に、薄手のペラペラの赤い服。
 白い縁取りが付けてあって、かろうじて『サンタさん』だ。

 「お待たせしました。」
 「ありがとう。」
 「ミックスピザとピリ辛ピザの2点ですね。お熱いのでお気を付け下さい。」

 アツアツのピザの箱を取り出してくれる。早口で言う彼は、なんとなく気恥ずかしそうだ。
 思わず、声をかけてしまった。

 「サンタさんなんですねぇ。」
 「あ、はい。」
 「子どもさんたちは、喜ばれるでしょう?」
 「はぁ。」
 「でも、大変ですねぇ。」
 「はぁ。」

 はにかみながら照れ笑いをして、アルバイトのお兄さんは、テキパキと明細を渡してくれる。

 「○○円になります。」
 「はい、ちょうど、ね。」
 「ありがとうございます。ちょうど、いただきます。・・・ありがとうございましたぁ。」

 サンタのお兄さんは、元気のいい声を残して、赤い服の裾をピラピラさせながら、玄関の戸を閉めた。

 アツアツのピザといれたてのコーヒー。
 寒い日の昼食には、何よりのメニューだった。


 毎年、この時期になると、ピザ屋さんはサンタの服装でやってくる。
 クリスマスが近づいたんだなぁ、と、いやでも意識する格好である。
 それにしても、いつも寒そうだなぁと感じるのはなぜだろう。
 アルバイトの学生さんが皆スリムなお兄さんだからかもしれない。
 いや、衣装があまりにも薄手の生地だからかもしれない。

 寒々しい上着がもう少し厚手でふわふわの生地だったら、もう少し温かいサンタさんになるような気がするん
 だけど。
 せめてもう少しふくよかなサンタさんらしくなれば、クリスマスの雰囲気は一気に増すのに、と思うのである。

 最近は、若い人たちが痩せすぎではないか、と心配したくなるほどだ。
 スリムな人が多くなって、さまざまなお店の宣伝マンもなんだか冬は寒そうで、見ているほうが「寒くないの
 かな」と同情してしまう始末。

 街の通りは、今、クリスマス商戦まっただ中で、着ぐるみを着た人たちをよく見かける。
 ピンクのウサギさんだったり、白黒のパンダさんだったり、うす茶色のクマさんだったり・・・。

 その着ぐるみさんたちが、なぜか、ほとんど貧相で寒そうなのである。
 頭は大きいのに身体はペラペラ、フニャフニャだ。
 おまけに、服の表面は、なぜか薄汚れてしまっている。
 小さな子どもたちがべたべたと触るからかも。

 それでも着ぐるみさんたちはなかなかの人気者だ。
 子どもたちは、物珍しいのか、彼らの周りに張り付いて、ペラペラの布を引っ張っている。
 引っ張られて倒れそうになりながら、大きな手で皆と握手をする、手を振る、くるくる回る、大きな頭で頷く。
 傾きそうな頭を支えてあげたくなるほどの頑張りようだ。
 それにしても、実に、大変なアルバイトなのだろうな。

 実際のところ、このアルバイト、夏はやたらと暑いらしい。
 すっぽりと大きな頭を被ると、風が通らず汗が噴き出すのだという。
 冬、寒そうに見えるあの薄手の生地も、実は思った以上に暖かい(暑い)のかもしれない。


 それでも、宣伝は『見た目』なのである。

 中で頑張っているアルバイトさんたちには申し訳ないが、夏は暑くても、涼しげで元気な動物さんたちでいて
 欲しい。
 そして、冬には、やっぱり、ふっくらしたサンタさんや、丸々・堂々とした動物たちに変身して欲しい。
 きっと、見ている人は、それだけで、心豊かにクリスマスを迎えようかな、と考え、そしてお財布の紐を
 少しばかりゆるやかにしてくれるのではないかな、と思うのである。


 不景気な寒い話ばっかりが飛び交う昨今、気持ちだけでも暖かくなる『見た目』を求めたい。