お年寄りの仕事 | くにこ先生のコーヒーブレイク

くにこ先生のコーヒーブレイク

通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 ドライブスルーのファストフード店へハンバーガーを買いに出かけた。
 高齢者のアルバイトの方を積極的に受け入れているお店である。
 若いお兄さんやお姉さんに交じって、おじいちゃんやおばあちゃんがエプロンをつけて頑張っている。

 この店舗では、いつもひとりのおばあちゃんが、皆と一緒にチャキチャキと仕事をこなしておられる。
 先方のおばあちゃんは私のことをご存じないのだろうが、私は来るたびに、何故か気になっている方なのだ。

 店舗の外にあるメニューの看板の前に車を止めると、横のスピーカーから、おばあちゃんの元気な声が
 聞こえてくる。

 「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、マイクに向かって、どうぞ。」
 「こんにちは。お願いします。えーと、○○チーズバーガーを2つ。」
 「○○チーズバーガーを2つ。」
 「ロースカツバーガーを1つ。」
 「ロースカツバーガーを1つ。」
 「サウザン野菜バーガーを、ソースぬきで1つ。」
 「海鮮かきあげを1つ。」
 「あ、いえ、サウザン野菜バーガーを・・・」
 「あぁ、失礼しました。海鮮かきあげですか?」
 「あ、いえ、サウザン野菜バーガー・・・」
 「サウ、あ、サウザン野菜バーガーですね。」
 「ソース抜きで。」
 「は? ソース・・・」
 「ソースを抜いてもらえますか?」
 「ソースを抜いて…はい、ソースを抜いてですね。」
 「すみません。サウザン野菜バーガーソース抜きで、はい。」
 「はいはい、失礼しました。サウザン野菜バーガーのソース抜きですね。おひとつ。」
 「はい、1つ。」
 ・・・・・・

 いつもの3倍くらいの時間がかかったけれど、ちゃんと伝わったようだ。
 
 車を進めると、若いお姉さんが、窓口で再度注文を繰り返し確認した後、料金と引き換えに商品を渡してくれた。
 ややこしい注文だったけれど、ちゃんとサウザン野菜バーガーはソース抜きで作ってあった。

 隣では、かのおばあちゃんがにこにこ笑いながら、次のお客さんにマイクから声をかけている。
 若いお姉さんと同じお店の制服と帽子がよく似合っていた。


 最近、高齢の方がアルバイトで働いておられる場面をよく見かけるようになった。
 若い人と並んで、同じかわいらしい制服を着て、元気に働く姿はなかなか素敵だ。
 スーパーやファストフード店やコンビニなど、職場は様々である。
 もっといろいろな職場があるのかもしれないが、私の目に入っていないだけなのだろう。

 歳をとれば、身体がだんだんと不自由になり、眼が悪くなり、判断力が無くなってくる、というけれど、
 本当に人それぞれである。
 70や80を超しても元気な方は沢山おられるし、そんな方を職場が活用しないほうはない。
 働く意欲のある方を積極的に受け入れるのは、社会にとってもプラスになるはずなのである。

 先ほどのファストフード店で、もしあの応対を若い人がやったとしたら、きっと反応は別のものになった
 ような気がする。

 何やってんのかねぇ、ちゃんと聞いてよ、聞き間違いなんてありえないでしょ、とかね。
 結構、厳しかったりして・・・。(いや、もちろん、心の声ですよ。)

 それでも、おばあちゃんだと、とてもこんな反応にはならない。

 あぁ、仕方ないよね。
 こっちの注文の仕方が悪かったよね。
 面倒くさいこと頼んじゃって悪かったかなぁ。

 なんて、相当のことは許せちゃうような気がするのである。
 のんびり待つことも、そう悪くはない、と思える。
 おばあちゃんマジック、とでもいうのかな。

 そのうち、誰もが歳を重ね、おじいちゃん・おばあちゃんの仲間入りをするのである。

 人を許せる優しい社会は、悪くない。

 高齢者が可能な限りいきいきと働ける社会は、きっと若い人もいきいきと働ける社会に繋がっていくことだろう。
 
 こんな働き方の中に、少子高齢社会の問題の打開策だって見えてくるかもしれないではないか。