プラネタリウム | くにこ先生のコーヒーブレイク

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通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 博物館のプラネタリウムの、あのすえたようなにおいが好きだ。
 古代の遺跡から発掘された土器や、動物のはく製や、ちょっと年代物の機械・・・。
 雑多に置かれた様々な展示物のかすかなにおいが合わさって、博物館独特の雰囲気をかもし出す。
 プラネタリウムの座席の背もたれを倒して目をつぶると、時代の流れが身体に染みてくるような感じさえする。
 心臓の拍動まで遅くなっていくような不思議な感覚である。

 全天を縮小した丸いドームに映し出される星々は、人工的だが、夜空にはこんなにも星があったのかと
 再認識させられる。
 (もちろん、これよりずっとずっと星の数は多いのだけれど。)
 説明とともに天球が回転していくと、まるで自分が回っていくような錯覚に見舞われ、思わず目を閉じてしまう。
 私も空間に浮かぶ「地球という星」の住人なのである。
 地球も人も巨大な宇宙の微細な一つの構成物に過ぎないことを考えると、日頃の大変さなんて無意味に思えて
 くるから不思議である。

 プラネタリウムで半分眠りながら、宇宙のことを考えるなんて、かなり贅沢な至高のひと時だ。
 本当ならば、夜、大きな原っぱに大の字に寝て、夜空を見上げながら思いを巡らすっていうのが筋
 なんだろうけれどね。
 そんな私にとっての非日常の設定をしなくても、街中で、昼間に、宇宙に思いを馳せられるっていうのだから、
 博物館・プラネタリウムには感謝するしかない。


 それにしても、これほどたくさんの星はどうやって生まれてきたのだろう。
 恒星=光る星はそれぞれが燃えている天体だ。
 太陽の大きさを考えると宇宙の想像を絶するような大きさにあらためて感動してしまう。
 こんな世界を見せてくれるなんて、神様もずいぶん素敵なことをしてくれる。

 それにしても、宇宙って何だろう・・・。


 ビッグバンからこの宇宙は生まれたのだという。
 今の科学では無の状態から10のマイナス35乗秒、100000000000000000000000000000000000分の1秒後
 まで遡ることができるそうだ。
 0の数を見ただけでなんだか想像もできないような時間だけど、「あっ」と言うこともできないくらいの
 短い間にこの広大な宇宙の膨張が始まったらしい。
 137億年前の出来事というが、そんなことを調べ計算してきた天文学者や物理学者って、本当にすごいと思う。

 だけど、10のマイナス35乗秒以前ってどんな状態だったのだろう。
 「無」から「有」が生まれるって、どういうことなのか。
 ビッグバンが起こってから極小の宇宙がでっかく成長したというのも相当無理をして想像しなければ
 ならないが、それでも「有るもの」が変化するのだから、まだわかる。
 しかし、「無いもの」から物質が出てくるなんて想像は、かなり難しい。
 「ゆらぎ」から生まれたというけれど、揺らぐためには「揺らぐもの」が必要なのではないか、なんて
 素人だから考えてしまう。

 どうなのかな。


 先日、リサ・ランドールさんの異次元の話を本で読んでいたのだけれど、ものすごく面白かった。
 その中で、「二次元世界の人にとって、三次元世界のボールが通り過ぎるとはどう認識されるのか」
 ということを書いた小説の紹介があった。

 二次元世界の人には、ボールが通り抜けるとき、大きさがだんだんと大きくなって、まただんだんと
 小さくなる円盤のように映る、というのである。
 二次元世界では立体は存在せず、平面のみの世界だから、平らな「円」しか存在しない。
 なるほど。
 二次元世界の人はペラァと広がり、そして小さくなっていく円を認識はできても、球体については
 想像もできないということか。
 (でも、もっと考えると、二次元世界の人が円を認識できるかどうかも疑問なのだけれど・・・。)

 そう考えると、もし多次元世界があるとしたら、三次元世界に生きる私たちの認識は、相当限定された
 狭い認識なのだろうな。
 
 多次元世界がもしあると仮定すると、無から何かが生まれるなんていうことは、そう不思議なことでは
 ないのかもしれないと思う。


 発想する、想像する楽しさは、きっと人間に与えられた「おくりもの」なのだろう。
 どれほど考えても行き着く果てがないほど、物事は不思議に満ちている。
 こうやって、私が存在すること、パソコンに向き合っていること、文を綴っていること、どれをとっても
 不思議といえば不思議なのである。

 先日ノーベル賞を取られた先生方は、原子より小さいクウォークの研究をされているのだということだった。
 原子は、原子核(陽子と中性子)と電子からできていると学生時代に勉強したけれど、確か原子核と電子の間は
 スカスカで間があいているのだと習った覚えがある。
 だとしたら、なんで私の指は、パソコンのキーを通り抜けないのだろう。宇宙もスカスカだとしたら、
 クウォークはどういう動きをするのだろう。・・・。


 きりがなく時間は流れ、きりがなく疑問は続く。
 プラネタリウムで過ごす時間は、日常から離れた思考のきっかけになる。

 たまには、こんな時間もあっていい。