毎年、この時期になるとやたらと忙しい。
年度末から年度始めにかけて、やらなければならないことが山のようにあるからである。
学校では、学生さんたちが卒業し、そしてまた新しい学生さんたちがやってくる。
エンドレスのこの状況は何度経験しても、時間の短縮を図ることができない。
特に時間をとるのが、学生さんたちや卒業生さんたちとの会話である。
この時期、あわただしさの中で、慣れ親しんだ学生さんたちが去っていく。
ほとんが、新しい社会人として職業生活に入っている。
なぜか4月中は、毎日のように入れ替わり立ち代り、仕事を終えた後、卒業生が顔を出す。
「やっと1日終わりました。」
「疲れたぁ。」
「結構、楽しかったですよ。」
報告を受けながら、やっとのことで卒業した学生さんの社会人への豹変振りに驚く毎日である。
田村さん(男性です)は、老人関係の施設に就職した。
お年寄りと話すのが好きだといって、この仕事を選択したのである。
遅刻が多かった彼だが、なんと仕事についてから毎日、始業の45分前には職場につくの
だそうである。
「やっぱ、仕事だけん、遅れるとまずいっすよ。」
「だよねぇ。」
「早く行ってやんないといけないことって、あるんですよね。」
「そっか。大変ねぇ。田村さん、頑張ってるんだ。」
「だって、社会人ですから。
・・・でも、学校いた頃は、9時の始まりなのに9時起きなんてこと、ありましたもんね。
考えられないっすよね。・・・ありえんけん。」
「あはは。そうでしたね。ありえなかったですよね。」
すごい変身である。
彼は1日も遅刻せず、仕事に熱心に取り組んで、先日は初めての夜勤も経験したのだという。
一所懸命の様子は結構素敵だ。
職場の雰囲気に慣れるのに四苦八苦しているようだが、息切れしないように、
ゆっくり頑張って欲しい。
森山さん(男性です)も、老人関係の施設に就職した。
絶対福祉には行かない、と言っていた彼だが、就職の時期になって一転、施設の職員を
目指した。
夕刻をまわって、学校にやって来た彼は、明かりが点いていたから誰かいるかなぁ
と思って立ち寄ったのだ、と言った。
「だりぃっすよ。」
彼の第一声だ。
今どきの学生さんは、よく「だるい、だるい」という。
何をしても「だるい」のだそうだ。
かったるい、という意味かな。
だからといって、「いや」と言う意味ではなさそうである。
「ほーんと、だりぃ。」
「なんで?」
「だって、一日中立ちっぱなしですよ。だりぃじゃないですか。」
笑顔で話すから、きつくてどうしようもないって訳でもないのだろうな。
立ちっぱなしだったというのに、椅子にも座らず、彼は「だりぃ」を連発する。
「だりぃ・・・。」
「仕事、どお?」
「えー、だりぃですよ。でも、いやじゃない。今日なんか、オムツ替えもしたけん。」
「そお。大変だったね。」
「ばあちゃんたち、えらい、感謝さすけん。(おばあちゃんたちが、とても感謝してくれる)」
楽しそうである。
よかった。
「だりぃ」は彼の照れ隠しなのかも。
お年寄りの施設に限らず、様々な施設での仕事はとても大変なのだけれど、
若い彼らがその担い手となっているのである。
大変でも頑張ってくれるおかげで、どれだけの人が支えられていることだろう。
様々な卒業生たちが、それぞれの職場で第一歩を踏み出している。
また同時に、新しい学生さんたちが、学校にやってきて学生生活をはじめる。
「専門の勉強、難しいです。」
「60点が合格点なんて、高すぎません?」
「一人暮らしだから、朝、遅刻しそー。」
これも毎年同じ会話である。新入学の学生さんたちもまた、新しい生活に慣れるのに一所懸命だ。
1ヶ月もたつと、すっかり生活も落ち着いて、新入生のぼやきも、卒業生の訪問も
だんだんと少なくなるのである。
きれいな桜の季節は、こうしてあわただしく、忙しく過ぎていく。
桜が散り、緑の葉がいっぱいになる頃、今度はまた違った話題でお腹がいっぱいに膨らんだ
卒業生たちが、学校にやってくるのである。