歳を重ねる | くにこ先生のコーヒーブレイク

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通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 同窓会は好きではない。
 ここ10年ほどは、ご案内をいただいても、ほとんど返事も出さず、失礼ばかりしている。
 学校時代の友達に会えるのは、懐かしくもあるが、年を重ねていく自分自身と否が応でも向き合わねばならないからである。

 学生さんは、いつもわざわざ私の年齢を尋ね、そして答えさせる。
 「53さい。」
 「えー。」
 「わかーい!!」
と言われるほど、・・・歳をとっているのだなぁ、と自覚する。

 まあそこそこ私は見た目が若いらしい。
 いつも5歳から10歳くらいは若く見られている。
 (これは、確かというわけではない。 
  周りの人が私を思いやって、そう言ってくれているのかもしれないし。)
 主人もまた、太っているせいか(いや、今減量中でした!!)しわがほとんど無く、若く見られている。

 「だけどさ、仕事の時は、若く見られると困るんだよね。」
 こんな若造に話して分かるのか、と最初いぶかられるのだ、という。
 歳を聞いて初めて相手の人は安心するらしい。

 “若い”というのは、ほめ言葉の場合もあるが、実は必ずしもそうとは限らないのである。
 彼は、若く見られることがまんざらでもなさそうだが、これから60・70と歳をどう重ねていくのだろう。

 もちろん、この歳になると5歳、10歳の差はほとんど意味がないといえばないのだけれど、歳の話が出るたびに、次第に「らしさ」について考えてしまう。

 はっきり言って、よく分からないのである。
 どうすれば50過ぎの“素敵なおばさま”らしくなれるのだろう。
 もしかして、充分“おばさん”らしくなっているのかもしれないという思いはあるが、それは自分の思い描く“おばさま”では決してないような気がする。


 大学1年生の頃だった。
 勉強を教えていた中学生の女の子を、バスのターミナルまで送っていった時のことである。
 時間は夜の10時近かったと思う。
 彼女のバスを見送り、ひとり階段を上っていたら、前に人相の悪い2人の男が立ちはだかった。

 こわい。
と思った瞬間、一人が私を見下ろすように「君、どこの中学校?」と問いかけた。

 え?
もう一人は私の横に張り付いている。

 一瞬にして様々なことを考えた。口調、態度、服装、・・・そうか、補導か。
 あの、○○大ですけど。

 えっ、大学生?・・補導員だけど、学生証は持ってる?(相当きつい高圧的な言い方だ。)
 ・・・はい。(学生証を差し出した。)
 ・・・・・失礼しました。(ほんとに、失礼である。)気をつけて帰って下さい。
 はぁ、ありがとうございます。

 いぶかしそうな視線を後に感じながら、階段をかけ上った。
 まったく!! 
 悪いことなんてしてないでしょ。 
 中学生はないでしょ、中学生は。

 しかし、私が悪かったのである。
 私はといえば、その時、ミニスカートのチェックのワンピース、白のハイソックス、髪は二つに結んでリボン・・・その上、童顔・すっぴんなのだから、間違われても仕方がなかったのだ。
 今ではありえない格好である。
 (言い訳がましいが、その頃アイドルはそんな格好をしていて、真似している子も多かった。)
 今の小学生の方がずっと大人っぽい。

 まったく、中学生で補導されるなんて。
 
 家族にも、あきれられてしまった。


 なかなか歳相応に見られなくても、歳だけは重ねざるをえない。
 私は、30になった年に「大人の女に変身しよう」と一大決心をした。

 誕生日。 
 街に出て、ロングのウィッグとワンピース、サングラス、思いっきり赤い口紅を買い、デパートのトイレで変身した。

 うーん。大人っぽい。

 しかし、どう見ても「変な人」だったに違いない。

 家族をだまそうと思って、はりきって家に帰った。
 しかし、思いっきりきどった
 「ごめん下さい。」
の声だけで、あっという間に、私と見破られてしまった。

 あはは。あんた、ホントに、ばっかじゃないの。


 以来、外見で大人のいい女になるのはあきらめた。しかし・・・。


 たまに、街で同級生らしき人を見かけることがある。
 相応に歳を重ね、年輪のある生き方をした顔立ち、姿、物腰だ。
 自分自身の生き方や、スタイルについてあらためて考え直してしまう。
 「らしさ」は内面から作られる、というが、なかなか口で言うほど簡単ではない。

 さらに、歳の取り方は人それぞれで、個体差があまりに大きい。
 40を過ぎるあたりから、一段とその差は大きくなるようだ。


 40歳を迎えての同窓会の時である。
 白髪の見覚えのない先生と目が合ったので、挨拶をした。

 「先生、お久しぶりでございます。」
 「やぁ、久しぶり。・・・でもさ、僕、山下。同級生だってば。」

 !!!・・・絶句してしまった。
 ほんとうに、ごめんなさい。
 だけど、本当に貫禄があって、素敵なおじさまだったよ。
 って、許してね。