ここ十数年で情報環境は格段に変わってしまった。
特にパソコンの進化には目を見張るものがある。
ワープロだけで頑張っていた頃、パソコンが入ってくることに心情的にひどく抵抗していたことを思い出す。
「ワープロで事足りているのに、なーんでパソコンなんか使わなくちゃいけないの。」
「ネットにつなぐなんて必要ないよねぇ。」
思っていた自分が、ほとんど信じられない。
今では、パソコンもネットもないところでの仕事なんて、ありえなくなってしまったからである。
初めてパソコンにさわった時、とてもとても驚きだった。
マウスでクリックして画面が変わる?
アイコンを画面上でスライドさせる?
複数の画面が重なって表示される?
今では子どもでさえ普通に扱っている画面そのものが、不思議でたまらなかった。
使い方がよくわかっていなかったので、テレビと同じ感覚で電源のスイッチを切ってしまったりして、何度主人に注意されたことだろう。
IT関係に勤めている主人にしてみれば、呆れるばかりだったのだろうが、私にとってみれば全くの未知の世界なのだ。
テレビと同じじゃん、なんて単純に思っていた。
恐ろしいことである。
その未知の訳のわからない世界が日常になるなんて、その頃は想像もできなかった。
大学の卒論に取り組んだのは昭和50年代の初めだが、原稿用紙70枚を清書するのに「相当な」時間を費やした。
書くだけで大変である。
当時は手書きが基本だったので、一文字間違っても最初から書き直し。
書いては捨て、書いては捨て、いったい何倍の紙を無駄にしたことだろう。
今ではパソコンで文書を作るなど、楽な作業である。
文章を書くのにも構成は画面上で出来る。
コピー&ペーストを使うと、長い文章もあっという間に切り貼りして順序を入れ替えることも出来てしまう。
信じられないほどの簡単さだ。
今、卒論を書いたら、どんなにいっぱい書けるだろう。
いや、今だと私は無駄なことを山のように書いてしまいそうだ。
あまりの便利さにだらだらと文をつないでいきそうな感じがする。
そぎ落としたきちんとした論文にはきっとならないだろう。
(これじゃ、だめですね。)
教員になってしばらくは、学生さんにレポートを課すことはずい分と控えめにしてきた。
「文を書く大変さ」を知っていたからである。
学生時代に1つの教科でレポート原稿用紙10枚と言われた時の衝撃を忘れられない。
その時は、泣きかぶってレポートに取り組んだ。
ひどい先生だ、と皆で文句たらたら恨み言を言っていたことを思い出す。
その先生はレポート課題を延々と出し続けた。
今思うと、当たり前のことだったのかもしれないが、辟易した私を含めた大多数の学生は、途中でその講義の受講を放棄した。
今、あの数回提出したレポートの時間があったら、あの先生の1年分の課題はクリアできたよね。
レポートを出すことで意欲を無くさせてしまうような講義はしたくないのが本音である。
どうすれば、面白く取り組んでくれるのだろう。
そう考えるうちに、周りの情報環境の方が大きく変化してしまった。
その流れで、私も、最近学生さんにレポートを課すことに、それほど抵抗を感じなくなった。
パソコンを使えば以前のような手書きの苦労をする必要もないし、なにより時間をそれほど使わずに済むことを知ってしまったからである。
しかし、学生さんたちはレポートの手間も相当「だめ」なのだと言う。
ちょっとの文章も自分で書くことがイヤなのだそうだ。
「書きたいことなんて何もないもん」と言う。
最終的に切羽詰まった学生さんは、ネットを切り貼りしたりして(!)要領よくレポートをまとめたりするようになった。
本当に「良し悪し」である。
レポートは、形としては出来上がっているけれど、ちゃんと考えて四苦八苦しながら書いた文章とはずい分と趣が違っているからである。
誰の文章なのかなぁ、と思う。
「いいかげんにせいよ」と文句の1つも言いたくなる。
だって、読んでいて、全く面白くないんだもん。
中に、ぽつぽつと悩みながら書かれた文章を見つけると、必要以上に感激してしまう。
やっぱり、自分の文章を紡ぐことの楽しさが無いのだろうな。
考えてみると「書きたいことがない」のに無理やり書かせているんだから、当たり前の結果と言えば結果だ。
きっと、書きたいことがでてくれば、躊躇なく文章は湧き上がってくる、と思う。
便利さが、必ずしも楽しさを生み出すとは限らない。
楽しいから、便利さが際立つのである。当たり前か。
昨年あたりから、このブログを書き始めた。
今、週に1篇のペースで書いているけれど、書きたいことが次々に出てきて、逆に困ってしまう。
だから、やたらと長い文章になってしまう。
楽しい。
歳を重ねたせいかもしれないなぁ、なんて思っている。
家でパソコンに向かう時間も多くなってしまった。
いつまで続けられるかはわからないけれど、話題があれば、もう少しは続けられそうである。
パソコンがなかったら、こんな文章書きたくても、到底形にならなかっただろうし、ましてや、人に読んでもらうなんてことも出来なかっただろう。
私にとっては、便利さは楽しさを生み出しているな、と思う。
こんなに楽に書けるなんて・・・。パソコンに感謝。