歌は大好きだ。
子どもが小さい頃は、家にいる間、一日中歌って過ごした。「おかあさんといっしょ」や「みんなのうた」の歌から始まって、「童謡」「唱歌」、そして「フォークソング」「歌謡曲」まで。ジャンルは問わない。歌っても歌っても飽きないし、なにより楽しい。
私の子どもが生まれたのは1980年代だが、ちょうど「おかあさんといっしょ」では、「にこにこぷん」をやっていた。じゃじゃまる・ぴっころ・ぽろり、3人のキャラクターの劇とともに「わーい、わーい。にこにこ、ぷん」の歌が聞こえると、子どもはテレビに釘付けになる。
じゃじゃまるの動きにあわせて踊りながら歌う。当時、ほとんど家にいる生活をしていたので、私も子どもと一緒の歌にはまってしまった。
散歩をする途中、子どもの手をとって大きく前後ろに動かす。スキップする。歌う。子どもを背負って料理を作る。歌う。掃除をする。歌う。洗濯をする。歌う。上の二人の娘を両手に抱え、下の息子を背負ってあやす。歌う。・・・若いからできたことだとは思うが、今振り返ると、すごいバイタリティーだ。本当に、いったいどれだけの歌を歌ってきたのだろう。
思い返すと、子どもがお腹の中にいる頃も、やっぱり歌っていた。お腹の中でも、歌声ってきこえるのか、よくお腹を蹴られていた気がする。口ずさむ曲は音程がきれいなものが多い。歌いやすく、あやしやすくもある曲だ。岩波文庫の『日本唱歌集』や、童謡の絵本はぼろぼろになってしまった。
「むかしむかしうらしまは、助けた亀につれられて・・・」という浦島太郎の歌は、物語構成になっていて5番まである長い歌だが、すっかり覚えてしまったくらいだ。昔の歌も、今の歌に無い味があって、なかなか素敵である。
娘たちは「おかあさんといっしょ」の『ぼくのミックスジュース』が大好きだったことを思い出す。「キリンさん」を発音できず、「チリンさん」と言っていた娘は、歌う時も、自分の発音に直して歌った。2歳になる前から歌っていた上の娘は「みっくすじゅーす」を「みかちかじゅーす」としか発音できない。
「みかちかじゅーす、みかちかじゅーす、みかちかじゅ~うす。
こいつをググッとのみほせば、あとはすっかり、いいちょうし!!
あのね、それでね、のおはなしと、ほんわかおふろの、いいきもちと、
それにゆうべのこわいゆめ。みんなミキチャーにちゅめこんで・・・」
大声で歌う歌が、あまりにかわいらしく、愛らしかった。下の子たちも同様だ。周りは相当うるさかっただろうと推測するが、誰からもお小言をいただいたことは無い。
特に上の娘は、歌い始めると止まらない。親戚一同が集まった折、彼女が歌をあまりに歌うので、すっかりおもちゃにされてしまった。「みかちかじゅーす」から始まった歌は、「ぞうさん」になり「うらしまたろう」になった。止まらない。最後には「女ひとり」を熱唱してしまった。
「ちょうと、おおはら、さんじぇんいん。
こい~に、ちゅかれた、おん~なが、しとり~・・・
(京都、大原、三千院 恋に疲れた女がひとり・・・)」
おいおい。私が口ずさんでいた歌なのだろうね。まいった。娘は結婚後、旦那さんと一緒に京都に旅行し、大原の三千院を訪ねたそうだ。「何でか、三千院って、ひっかかってたんだよねぇ。なんでだろ。」歌に、決まってるじゃないの。
娘たちは小学校・中学校でコーラス部に所属し、全国コンクールにも出場した。上の娘は趣味で声楽をやったこともある。専門的ではないが、音楽好きで育ったことがうれしい。子どもたちは皆ピアノが好きで、常時ふたの開いているリビングのピアノを通りすがりに弾いていく。今家にいる私よりずっとピアノがうまい下の娘は、主人のひく旋律に伴奏を入れてくれたりもしている。
主人はクラシックギターを弾くし、サックスや横笛に挑戦したりと忙しい。自分の部屋にこもって音楽を聴くのも趣味だ。(ちなみに、私が主人と知り合ったのは大学のクラシックギタークラブである。上の娘は同じ大学の同じクラブに入り、そこで知り合った私の主人と同じくらいギター大好きの彼と結婚した。)
「かあさん、また歌ってたよ。」といきなり娘から声がかかる。街で歩きながら、小声で(と思うが)何か歌っていたらしい。バイクに乗っている時も、いつのまにか歌っている。周りの人はびっくりするだろう。しかし、知らないうちに歌っているというのもはずかしい。長年の癖とはいえ、少々気を付けようとは思っている。
教師という職業柄、声は大きい(らしい)。歌うことが声帯を鍛えたのではないかと自分ではひそかに思っている。しかし、ひそひそ話しのつもりが、周りにすっかり聞こえていて自分でも驚くことがある。娘に言わせると「よく通る声」なのだそうだ。朝、私が声をかけると「心臓がビクッとする」という。目覚ましでは起きないが、ママの声だと起きてしまう、のだそうだ。・・・これは、声の大きさのせいではないと思うけど。
それにしても、歌を歌うことは素敵だ。
隠れカラオケファンで、おさそいがあると、「うーん。都合がついたらね。」と言いつつ、内心嬉しい。声は商売道具なので潰す訳にはいかないが、お酒を飲んで歌うとなんだか気持ちまですっきりする。
いや、マイクを持って離さないというタイプではないので、どうぞ安心して誘って下さい。