トトロ
大好きな駅前の本屋が無くなっていた
あたしの歩く速度は脳を支配する出来事と反比例した
いつも自転車で笑いながら駆け抜けた道を10年経った今ゆっくり歩いてみた
あの日は目の高さに見えていたたんぽぽも今はフェンスを隔てた世界にあった
砂埃も掛け声も太陽も草も
今はあたしのものではない気がしていた
生い茂る街路樹を見上げるとあの日の太陽や雨がそこにあった
笑っていた
悩んでいた
みんなこうして生きていくのに取り残されてしまったような寂しさを感じるのはなんでだろう
忘れているのに思い出すと手放したくないと焦る
無くした恋に似た景色の中でたくさんの「毎日」を思い出した
ちっぽけな言葉につまずいて小さな言動ですら臆病になるあたしはきっと取り残されている
周りにあの日の景色はないのにあの日に取り残されたあたしは時間の隙間でもがいていた
だからここに立つとこんな気持ちに支配されてしまう
君がいるからと言う簡単で甘い言葉を後ろ手に隠して立ち尽くす
もうここにいるしかないの
眩しいフェンスの向こうには行けない
君を見つめる事しかできない




