ふわふわした言葉たちに囲まれていると 

ときにおなかにたまる言葉が欲しくなる 

ズシリと重い言葉が欲しくなる 

記憶の断片を頼りに 

「その人の名を知らない 沢口靖子 NHK」 

で検索してみる 

いい時代になったものだ 

一昔前なら 

それを得るのに、大変な手間と時間を必要とするであろう情報でさえ 

瞬時に手に入れることができる 

で、たどり着いたのが次の詩だ 




『その人の名を知らず』 


無名の人達が居る 

生まれ、愛し、別れ 

死ぬ人たちが居る 


人は国境をつくる 

国境を越えるのは 

時には暴力 

時には愛 


愛は鳥のように軽やかに 

国境を越える 

無数に流された血がある 

勝利と敗北 

希望と挫折 

絶望と再起 



古い時代は 

新しい時代を拒んで 

壁をつくる 



壁を押し流す大河の水に 

元の雨の一滴を 

見分けることは出来ない 



幸せないまをつくったのは誰かと 

大地に訊こう 

風に訊こう 



大地は答える 

無名の無数の人・・・・ 



風は答える 

その人の名を 

私は知らない 


大野靖子 作 
「その人の名を知らず」 


昔のNHKドラマの一コマ 

上の詩は、そのエンディングに 

沢口靖子が、生まれて間もない子供を抱いて 

革命に命を落とした恋人の故郷へ向かって 

中国の田舎を歩いているシーンを背景に 

朗読されている。