持ち主が必ずしも勝つとは限らない。
そんなことがあるのがゲームの世界である。
結局僕は友達はおろかレベルの高いコンピュータにまでボロクソにやられて、トーナメントは勝ち抜けず、普通の対戦でも何回もコンテニューするはめになった。
ゲームは楽しいが、・・・勝てないとくやしい。
何度もなんどもやり直して、やられて倒れて強くなる。
こうして繰り返し頑張って上達していくのは、現実も一種の育成ゲームのようだと、ふと考えてしまった。
痛い奴だな、と友達が帰った後、ゲームをそのままに机の上のジュースやお茶を台所に持って行きながら、すこし苦笑いをする。
ゲームはゲーム、現実は現実である。
たぶん、さっきみたいなことをお兄ちゃんに言ったら、バカじゃねえの、って無表情で蔑まれるだろう。
絶対に言わないようにしよう・・・。
残ってしまったお菓子をつまみつつ、つけっぱなしにしていたテレビに目をやると、いじめで自殺した生徒がどうとか、新たな政治家の立候補がなんだとか、キャスターが原稿を読み、コメンテーターのおじさんが身振り手振りを交えて自分の意見を論じる。
僕の周りにはあいにく死んでしまった人はいないので、周りで誰かが亡くなったときの悲しみなんてのはよくわからない。
・・・いや、正確にいえば死んでしまった人は、・・・いる。
僕が物心つく前、お兄ちゃんの記憶にもはっきりとはないらしいのだが、おじいちゃんが死んだ・・・らしい。
もっと前には、おばあちゃんも死んじゃったんだって聞いた。
おばあちゃんが死んじゃったのは、僕もお兄ちゃんも生まれる前なんだとか・・・。
それでもやっぱり、悲しみなんてのは実感してなかっただろうし、現に今でもそうだから誰かが死んだときの悲しい感情は分からない。
真面目な表情のキャスターが、次のニュースを読み始める前にテレビを切る。
自分の部屋に退散しようとして玄関横の階段に一歩足を踏み出した時、鍵の回る音が聞こえ扉がガチャリと開く。
「あぁ~、つかれた~。」
玄関マットの上にかばんを放り投げるようにおろしたお兄ちゃんは、座り込むのと同時に息を吐いた。
後ろに突っ張った腕に汗が流れる。
ぐっと顔を上に向けてのけぞった身体のいたる所から、疲れが出てくるのが見えてくるようだった。
「おかえり。大変そうだね、部活。」
「まだまだ、走ってばっかだよ。体力なんか上級生に及ばないからな。もっともっと持久力あげないと、試合なんかもってのほかだよ。・・・でも、試合してぇ~。」
「・・・練習、がんばりなよ。んじゃ僕は上行くから。あ、晩メシ何にする?」
「なんでもいいよ。・・・ピザでも取るか?ま、とりあえずシャワー浴びてから考えとくわ。」
そう言って起き上がるお兄ちゃんの姿を途中まで眺め、振り返って僕は再び階段を上がり始める。
読みかけのマンガでも読もう・・・。
その時の僕は昼間の男のことなんて完全に忘れて自分の部屋に戻っていた。
階下で浴室のドアが開き、そして閉まる音が聞こえた。
僕はベッドに体を投げ出し、枕の傍らにあった、昨日寝る前に読んでいたマンガを再び開く。
ヒーローであるそのマンガの主人公は、何回も挑みやり直し、そのたびに強くなっていく。
そしてヒーローは、どんなに傷ついても、どんなに瀕死の状況でも、必ずいろんなことに勝つのだ。
そんなことがあるのがゲームの世界である。
結局僕は友達はおろかレベルの高いコンピュータにまでボロクソにやられて、トーナメントは勝ち抜けず、普通の対戦でも何回もコンテニューするはめになった。
ゲームは楽しいが、・・・勝てないとくやしい。
何度もなんどもやり直して、やられて倒れて強くなる。
こうして繰り返し頑張って上達していくのは、現実も一種の育成ゲームのようだと、ふと考えてしまった。
痛い奴だな、と友達が帰った後、ゲームをそのままに机の上のジュースやお茶を台所に持って行きながら、すこし苦笑いをする。
ゲームはゲーム、現実は現実である。
たぶん、さっきみたいなことをお兄ちゃんに言ったら、バカじゃねえの、って無表情で蔑まれるだろう。
絶対に言わないようにしよう・・・。
残ってしまったお菓子をつまみつつ、つけっぱなしにしていたテレビに目をやると、いじめで自殺した生徒がどうとか、新たな政治家の立候補がなんだとか、キャスターが原稿を読み、コメンテーターのおじさんが身振り手振りを交えて自分の意見を論じる。
僕の周りにはあいにく死んでしまった人はいないので、周りで誰かが亡くなったときの悲しみなんてのはよくわからない。
・・・いや、正確にいえば死んでしまった人は、・・・いる。
僕が物心つく前、お兄ちゃんの記憶にもはっきりとはないらしいのだが、おじいちゃんが死んだ・・・らしい。
もっと前には、おばあちゃんも死んじゃったんだって聞いた。
おばあちゃんが死んじゃったのは、僕もお兄ちゃんも生まれる前なんだとか・・・。
それでもやっぱり、悲しみなんてのは実感してなかっただろうし、現に今でもそうだから誰かが死んだときの悲しい感情は分からない。
真面目な表情のキャスターが、次のニュースを読み始める前にテレビを切る。
自分の部屋に退散しようとして玄関横の階段に一歩足を踏み出した時、鍵の回る音が聞こえ扉がガチャリと開く。
「あぁ~、つかれた~。」
玄関マットの上にかばんを放り投げるようにおろしたお兄ちゃんは、座り込むのと同時に息を吐いた。
後ろに突っ張った腕に汗が流れる。
ぐっと顔を上に向けてのけぞった身体のいたる所から、疲れが出てくるのが見えてくるようだった。
「おかえり。大変そうだね、部活。」
「まだまだ、走ってばっかだよ。体力なんか上級生に及ばないからな。もっともっと持久力あげないと、試合なんかもってのほかだよ。・・・でも、試合してぇ~。」
「・・・練習、がんばりなよ。んじゃ僕は上行くから。あ、晩メシ何にする?」
「なんでもいいよ。・・・ピザでも取るか?ま、とりあえずシャワー浴びてから考えとくわ。」
そう言って起き上がるお兄ちゃんの姿を途中まで眺め、振り返って僕は再び階段を上がり始める。
読みかけのマンガでも読もう・・・。
その時の僕は昼間の男のことなんて完全に忘れて自分の部屋に戻っていた。
階下で浴室のドアが開き、そして閉まる音が聞こえた。
僕はベッドに体を投げ出し、枕の傍らにあった、昨日寝る前に読んでいたマンガを再び開く。
ヒーローであるそのマンガの主人公は、何回も挑みやり直し、そのたびに強くなっていく。
そしてヒーローは、どんなに傷ついても、どんなに瀕死の状況でも、必ずいろんなことに勝つのだ。