こんにちは!こんばんは!
「日経平均が大きく下がっているから、日本株全体が暴落しているのかな……?」
そう思って、手元の保有銘柄や高配当株ETFを見てみると、「あれ? むしろ上がっている?」と違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。一見すると矛盾しているように見えるこの現象ですが、相場全体が崩れているのではなく、資金の「引っ越し」、すなわちセクターローテーションが起きていることが原因のようです。
今回は、足元で起きている二極化相場のカラクリと、「この状況はいつまで続くのか」「S&P500や日経平均は本格的な下落トレンドに入ってしまうのか」について見ていきます。
日経平均が下がっても「高配当株・バリュー株」が強い理由
日経平均株価が大きく下落しても、市場全体が全面安になっているわけではありません。
2026年7月6日には、日経平均株価が前週末比6.38円安とほぼ横ばいで終える一方、東証プライム市場では値上がり銘柄が7割を超え、TOPIXは最高値を更新しました。物色の軸がグロース株から景気敏感・バリュー株へと移っていたことが、当時の株式市況記事でも報じられています[1]。指数だけを見ていると分かりにくいものの、個別銘柄・業種単位で見ると「指数安・中身高」の乖離が実際に起きていたことになります。
なぜ、このような乖離が生まれるのでしょうか。理由は大きく2つあります。
原因①:日経平均という指数の「偏り」
日経平均株価は、株価水準の高い銘柄(いわゆる値がさ株)の影響を強く受ける仕組みになっています。東京エレクトロンなどの半導体関連株や、ソフトバンクグループといった一部の大型株が売られるだけで、指数全体が大きく押し下げられてしまうのです。
原因②:グロースからバリューへの資金シフト
これまで、相場を牽引してきた米国のAI・半導体セクターに調整が入ったことを受け、投資家が過熱感のあるハイテク株(グロース株)の利益を確定し、その資金を利回りが高く割安感のある高配当株やバリュー株(金融、自動車、陸運など)へ移す動きが加速しています。
お金が市場から逃げ出しているのではなく、銘柄を乗り換えているだけ、と捉えるのが実態に近いといえます。
この二極化は「米国選挙前まで」続くのか
この現象について、「米国の選挙前、つまり政治的な不透明感がある時期までは続くのではないか」という見方をされる方もいらっしゃいます。
結論から申し上げると、政治日程そのものよりも、金利や企業業績の動きによって、もっと早いタイミングで巻き戻されるか、逆に構造として定着していく可能性が高いと考えられます。
理由は以下の3点です。
主因は、政治ではなく「日米の金利差」と「日銀の利上げ」
2026年7月時点で日本の長期金利は約29年ぶりの水準となる2.7%台後半まで上昇しており[2]、日銀の金融政策正常化を背景に国内金利は上昇基調にあります。米国10年債利回りも4%台後半の高水準が続いており、日米金利差は依然として大きい状態です[3]。
こうした金利環境の下では、利ざやが拡大する銀行・保険などの金融株や、現金を多く持つ割安株が買われやすい構造が生まれます。
AI・半導体セクターの業績サイクル
半導体株などの調整は、主要企業の決算や業績見通しが改善すれば買い戻しが入る性質のものです。そのため選挙日程を待たずに、業績次第で二極化が一時的に解消へ向かう可能性があります。
東証の改革要請による本質的な評価
東京証券取引所は、2023年3月31日にプライム市場・スタンダード市場の全上場企業に対し、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの状況を改善するため「資本コストや株価を意識した経営」の実践を要請しました[4]。この要請を受け、対応方針を開示する企業の割合はプライム市場で31%から49%へと増加しています[5]。
この流れの中で、日本企業は自社株買いや増配を積極的に行うようになってきています。バリュー株高は単なる一時的な避難先ではなく、企業の構造改革に対する正当な評価という側面も持っていると考えられます。
S&P500やNASDAQ100、日経平均は「下落基調」に入るのか
「ハイテク株や日経平均が重いなら、米国株(S&P500、NASDAQ100)や日本株も、ここから長期の下落トレンドに入るのでは」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、長期的な下落基調(ベアマーケット)に入る可能性は現時点では低く、多くの場合は「高値圏でのスピード調整(レンジ相場)」にとどまると見ています。
業績(ファンダメンタルズ)は崩れていない
現在の調整は企業の業績悪化そのものではなく、行き過ぎた期待感の修正という性格が強いといえます。大手IT企業の売上や利益自体は力強く伸びており、業績が下値を支える構図に変わりはありません。
S&P500はバリュー株が支える
S&P500にはハイテクだけでなく、金融やヘルスケアなどのバリューセクターも含まれています。ハイテクが売られても他のセクターが買われるため、指数全体としては下値が固くなりやすい構造です。
一方で、金利や為替の急変、あるいは大手ハイテク企業の決算下振れが重なれば、レンジ内にとどまらず一段の調整(3,000円超の急落など)に発展する可能性もある点には注意が必要です。市場では、ヘッジファンドの日本株エクスポージャーや信用取引の買い残高の多さから、過去の急落局面と比較して調整に対する脆弱性が増しているとの指摘も出ています[6]。
今後の各指数のイメージ
- NASDAQ100(調整・もみ合い):ハイテク比率が高いため一時的に上値が重くなりますが、AI投資の収益化や好決算が確認できれば、再び買われる展開へ向かう可能性があります。
- S&P500(横ばい〜レンジ相場):バリュー株の底堅さがハイテクの下げを打ち消し、下値の固い展開が続くとみられます。
- 日経平均(指数は停滞・中身は活発):値がさ半導体株が足を引っ張るため急上昇はしにくいものの、TOPIXや中小型・バリュー株が市場を下支えする構図が続くと考えられます。
市場の変化に振り回されないために
現在の相場は、「日本株も米国株も全面安」という悲観的な状況ではありません。むしろ、ハイテク一本足打法で指数を引き上げてきたフェーズから、セクター間で資金が循環する「物色相場」へと変わってきた、と捉えるのが自然です。
指数だけを見ていると「相場が崩れている」ように見えますが、中身を見れば高配当株やバリュー株など、しっかり買われているセクターが存在します。
指数の短期的なニュースに一喜一憂せず、今どのセクターに資金が流れ込んでいるのか、その構造的な変化を見極めながら投資戦略を立てていきたいところです。
出典:
[1] 株探ニュース「日経平均は小幅安、バリュー株への物色続く/相場概況」(2026年7月6日)
[2] 「日経平均7万円攻防で高配当株はどう動いた?」(2026年7月)
[3] Desk Research Design「マーケットレビュー」(2026年7月6日)
[4] PwC Japan「資本コストや株価を意識した経営(2023年度)―東証PBR1倍割れ改善要請への考察―」
[5] レイヤーズ・コンサルティング「東証がPBR1倍割れ対応策開示企業一覧を開示」
[6] 野村證券「東証株式市況|投資情報」
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


