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金投資信託で円をヘッジする
日銀が「2%のインフレ目標」を掲げ、物価上昇が日常となった日本。皆さんは、自分の預貯金の「本当の価値」がどうなっているか意識したことはありますか。
結論から言います。国が2%のインフレを目指すということは、私たちが持つ「日本円」の価値を毎年2%ずつ目減りさせるという宣言に他なりません。しかも厄介なのは、日銀にはこれを自ら止める選択肢が事実上ないということです。
今回は、この「止められない貨幣の棄損」から資産を守るために私が実践している「金投資信託の長期保有戦略」と、その裏にあるロジックを整理します。
毎年2%のインフレがもたらす「静かなる資産の消滅」
「たった2%」と思うかもしれません。しかし複利で10年、20年と効いてくると、現金の購買力は次のように目減りします。
- 10年後:円の購買力は約2割目減り(100万円が実質約82万円相当に)
- 20年後:円の購買力は約3割強目減り(100万円が実質約67万円相当に)
国と中央銀行がこの方針を掲げ続ける以上、現金のまま銀行に眠らせておくことは、毎年自動的に資産を失い続ける構造に自ら身を置くことを意味します。
なぜ、日銀は「円安・インフレ」を是正できないのか
ここが本質だと考えています。日銀は理屈の上では利上げでインフレも円安も是正できるはずですが、実際にはそれができません。長年の低金利政策の結果、日本は世界最大級の対外純資産を抱えており、その含み益は円安が進むほど膨らむ構造になっています。ここで本格的に円高方向へ是正しようとすれば、対外資産の含み益が消滅すると同時に、円安を前提に積み上がってきたキャリートレードの巻き戻しが起き、円高と株安・債券安が同時進行しかねません。
つまり、日銀・政府にとって「インフレ・円安の是正」は、口では言えても実行すれば自らの首を絞める選択なのです。1992年の英国のように投機筋に通貨防衛を仕掛けられて負けた「防衛失敗型」の通貨危機とは異なり、日本は変動相場制かつ世界有数の対外純資産国であるがゆえに、むしろ「自分から動けない」構造だと私は整理しています。この前提に立つ限り、円安・インフレは政策的に是正されにくく、目減りは今後も構造的に続く可能性が高いというのが私の結論です。
金利が付かない「金」が、なぜ最強の盾になるのか
この「止められない円安」に対抗するため、私は「金(ゴールド)」の投資信託(為替ヘッジなし)を長期保有しています。「金には利息が付かないから不向き」という教科書的な指摘に反して含み益が乗っている理由は、大きく2つです。
① 「紙のお金」の希薄化に対する解毒剤
金は埋蔵量に上限があり人工的に増やせません。一方、世界の中央銀行は紙幣の供給を拡大し続けています。ライバルである「紙のお金」の価値が相対的に下がることで、金の相対価値が上がっている、というのが私の理解です。
② 「為替ヘッジなし」による円安の二重取り
国際的な金価格はドル建てで決まります。ヘッジなしファンドは、円安が進むと国内基準価額が自動的に押し上げられる仕組みのため、「円の実質価値低下」による目減り分を、金価格の円換算上昇でそのまま相殺してくれます。2章で述べた「日銀は円安を止められない」という構造認識が正しいなら、このヘッジは今後も効き続けるはずだ、というのが私の投資判断の根拠です。
世界最強の買い手「中国人民銀行」という後ろ盾
中国人民銀行は2026年6月も金準備を積み増し、これで20ヶ月連続の買い越しとなりました。6月末の保有量は約7,544万トロイオンス(推計2,300トン超)に達し、これは人民銀行が保有状況をより頻繁に開示するようになった2015年以降で最長の連続買い越し記録です。
出所:Investing.com(2026年7月7日)、Bloomberg(2026年6月6日)、日本経済新聞(2026年5月7日)
米中対立や資産凍結リスクを警戒する中国は、ドル建て資産を減らし金を買い集めています。国家が準備資産として抱えた金は、一般の投資家と違って価格変動で簡単に売却されません。世界中の「自由に売買できる金」が構造的に減り続けているということであり、これが長期保有派にとっての下支え材料になっています。
投資信託というビークルそのもののリスク
「現物(ゴールドバー)ではなく投資信託だと、有事に無価値になるのでは」という懸念については、日本の公募投資信託は法律上「分別管理」が徹底されており、運用会社が破綻しても資産が消えることはありません。
一方で「金融システムそのものが完全にロックされる」ような極端な有事が起きた場合は、銀行預金や株式など決済インフラ全体が同様に機能不全に陥るため、これは金投資信託固有のリスクというより、金融システム全体のテールリスクとして割り切っています。
自分の資産は、自分で守る
日銀がインフレ目標を掲げ続ける以上、そしてその是正が日銀自身の首を絞める以上、円をそのまま持ち続けることは構造的なリスクです。短期的な価格の上下(ノイズ)に一喜一憂する必要はありません。「10年後に円の価値が3割目減りする未来」を見据え、世界の中央銀行と同じ船に乗り、価値の保存手段として淡々と金を保有し続ける。これこそが、これからの時代を生き抜くための最も強固な資産防衛戦略だと私は確信しています。
※なお、金価格(ドル建て)は2026年1月の史上最高値から7月時点で2割超調整する場面もありましたが、これは米金利観測など短期要因によるもので、上記の長期的なヘッジの論理そのものを否定するものではないと判断しています。


