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「夏枯れ相場」「投機筋の円売りポジションの積み上がり」「為替介入による急反転」――この3つが揃うと、過去に大幅な円高局面が生まれてきました。2026年7月前半の現在、ドル円は7月1日に一時1ドル=162円84銭まで下落し、約39年半ぶりの円安水準に達しています。市場の緊張感はピークに近づいています。
7月後半に「大幅な円高」へ振れる可能性を支える3つの連鎖と、その反対に円安圧力を再び強めうるリスク要因を、事実と推論を分けて整理します。
空売りの臨界点――ショートスクイーズの土壌
投機的な円の空売りポジションが積み上がるほど、「これ以上売るエネルギーがない」状態に近づき、ある日突然、買い戻し(ショートスクイーズ)による急激な円高が起こりやすくなります。これは2024年夏など過去の局面でも見られたパターンです。
実際、6月22日には一時161円93銭まで円安が進んだ後、片山さつき財務相とベッセント米財務長官のオンライン会談が報じられただけで、ドル円は161円08銭まで急速に円高方向へ振れました。(出典:三井住友DSアセットマネジメント 市川レポート)この値動きの大きさそのものが、積み上がった円売りポジションの巻き戻し余地の大きさを示唆していると考えられます。
夏枯れ相場(薄商い)の罠
7月後半から8月にかけては海外機関投資家やヘッジファンドが夏季休暇に入り、市場の取引量が細る「夏枯れ相場」になりやすい時期です。取引量が薄い市場では、少額の注文でも価格が大きく飛びやすく、ここで政府・日銀による「不意打ちの介入」が入れば、流動性の薄さゆえに売りが売りを呼ぶパニック的な円高が誘発されやすくなります。
この点、財務省による4月28日~5月27日の為替介入総額は11兆7,349億円に達し、世界のドル円取引量(1日平均約68.7兆円)に対しては、仮に1日で実施したと想定した場合17%相当という大規模なものでした。(出典:三井住友DSアセットマネジメント 市川レポート)片山財務相は「断固たる措置」「常に準備はできている」といった発言を繰り返しており、7月1日時点でも財務省から為替介入に関する踏み込んだ発言はまだ出ていない一方、市場ボラティリティが週間・月間とも7%台半ばまで上昇しています。薄商いの中でこのボラティリティがもう一段上昇すれば、介入の可能性は一気に高まると見られます。
7月末の金融政策イベント――日米そろい踏み
日銀は6月の会合で政策金利を0.25%引き上げ、1.00%とすることを決定しました(1995年以来31年ぶりの水準)。次回会合は7月30日・31日に予定されており、この回では「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)も公表されます。(出典:日本銀行)
米国側では、5月22日にケビン・ウォーシュ氏がFRB議長に就任しました。同氏は7月2日の会見で「政策金利の予測は出さなかった。役に立たないから」と述べ、7月の利上げ・利下げいずれについても明言を避けつつ、FRBの保有資産(バランスシート)縮小への意欲を示しています。(出典:日本経済新聞、時事通信)
現在の日米金利差を背景とした円売り需要(1ドル=162円台)に対し、仮に7月末に向けて日銀の追加引き締め姿勢と米側の利上げ観測後退が重なれば、介入がなくとも自律的に円高へ振れる可能性はあります。ただしウォーシュ議長はかつてタカ派として知られた人物であり、トランプ大統領からは「やや敵対的」と評されるなど、必ずしも市場が期待するような明確なハト派シグナルを出すとは限らない点には注意が必要です。(出典:時事通信)
客観的なリスク視点――原油高という「下値の支え」
ここまでの3つの連鎖は、いずれも円高方向への巻き戻しを支持する材料です。しかし、それを打ち消しかねないリスク要因が足元で強まっています。
7月9日、米国がイランの船舶攻撃に対する報復攻撃を行ったと発表し、イラン側も報復を表明しました。この影響でWTI原油価格は2営業日続伸し、75ドル台で推移しています。(出典:OANDA証券マーケットレポート)中東情勢は2月末の軍事作戦開始以降、断続的な緊張が続いており、日本は原油輸入の9割以上を中東に依存する構造にあります。(出典:野村総合研究所)
原油高は日本にとって「実需の円売り(貿易赤字要因)」を強制的に発生させます。これが下値を支える形になるため、仮に介入や政策要因で一時的に円高に振れても、実需の円売りに押し戻されて「一時的な急落にとどまり、その後再び円安に戻る」という過去の失敗パターンを繰り返すリスクが同時に存在します。
加えて、7月8日には日本の長期金利(新発10年物国債利回り)が一時2.865%まで上昇し、29年ぶりの高水準となりました。財政悪化懸念と原油供給不安が背景とされています。(出典:時事通信)長期金利の上昇は本来円買い要因になり得ますが、それが財政悪化懸念からくるものである場合、円の信認そのものへの懸念に転じるリスクもあり、単純な「金利差縮小=円高」という図式では説明しきれない複雑さがあります。
まとめ
「投機筋のポジション解消」「薄商いの中での介入警戒」「日米中銀イベント(日銀7/30-31会合、ウォーシュFRB議長の政策運営)」が重なる7月後半は、過去の経験則に照らせば、一気に円高に振れる可能性(巻き戻り)への警戒を高めるべき期間だと考えられます。
ただし、中東情勢の緊迫化に伴う原油高が実需の円売りを強制する構造は変わっておらず、介入が入っても「一時的な急落にとどまり再び円安に戻る」という過去の失敗パターンを繰り返すリスクも、同時に高い警戒感を持って見ておく必要があります。


