こんにちは、ないとめあです。
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2026年2月28日、米国がイランへの軍事攻撃を開始し、イランは報復としてホルムズ海峡を事実上封鎖した。世界の石油消費量の約2割が通過するこの「チョークポイント」が塞がれた今、日本のエネルギー安全保障は戦後最大級の試練に直面している。
にもかかわらず、日本政府の動きは鈍い。「直ちに影響はない」ってどこかで聞いたような言葉が、また繰り返されようとしている。
■ 数字が示す日本の脆弱性
まず現実を直視しよう。日本は原油輸入の約95%を中東に依存している。その大半がホルムズ海峡を通って運ばれてくる。「備蓄254日分があるから大丈夫」という声もあるが、問題はそこではない。
原油価格はすでに封鎖前の67ドル(2月27日)から、3月9日時点で115ドルを超えた。北海ブレント原油は一時118.73ドルをつけ、120ドルに向かう勢いだ。タンカー運賃は先週比2倍超となり、過去10年で最高水準に達している。
カタールのエネルギー大臣は「原油150ドル」を公式に警告している。これは絵空事ではない。UAE・クウェート・イラクはすでに生産削減を開始しており、供給ショックは二重構造になっている──海峡を通れないことによる輸送の断絶と、産油国自身の生産削減が同時進行しているのだ。
⚠ スタグフレーションへのシナリオ(推論)
原油が150ドルに達した場合、ガソリン価格は1リットル200円超が確実視される。電気・ガス料金も連動して上昇し、食料品・物流コストを押し上げる。一方で、実質賃金の低下により個人消費は冷え込む。「物価高+景気後退」──これが教科書的なスタグフレーションだ。備蓄を消費しながらインフレが進行し、その間に景気が壊死していく。
■ 「航空爆撃で解決できる」という幻想
根本的な問題を指摘しなければならない。米国・イスラエルが航空攻撃を続けても、ホルムズ海峡の封鎖は解けない。なぜか。イラン革命防衛隊(IRGC)の海軍拠点・沿岸ミサイル陣地・小型高速艇・機雷敷設能力は、イラン本土の沿岸部や島嶼部の地下施設に分散配備されている。航空爆撃はこれらを完全に無力化できない。地下・洞窟施設は爆撃耐性が高く、破壊しても再建・再配備が可能だからだ。
ホルムズ海峡を本当に「開通」させるには、イランの海岸線を物理的に占領するしかない。それはイラク戦争を超える規模の地上作戦を意味し、米国に現実的な実行意思があるとは思えない。つまり構造的に言えば、こうなる。
| 対応策 | 効果 |
|---|---|
| 航空爆撃のみ | 妨害能力を完全排除できない |
| 地上占領 | 政治的・軍事的コストが許容不可能 |
| ∴ 封鎖の長期化 | 構造的に不可避(推論) |
イランにとってホルムズ海峡の妨害は「唯一の非対称カード」だ。通常戦力では米・イスラエルに勝てない以上、この手段を手放す合理的理由がない。イランが「長期戦を想定している」のは軍事的合理性として正確である。
■ 「254日分の備蓄」が焼け石に水になる日
備蓄の意味は、封鎖の期間によって根本的に変わる。
| 封鎖期間の想定 | 備蓄の意味 |
|---|---|
| 数週間 | 十分な緩衝材 |
| 数ヶ月 | 消費しながら代替調達を模索 |
| 1年超(長期化) | 備蓄は焼け石に水。構造的危機へ |
代替調達先(西アフリカ・米国・カナダ)の拡大には時間とコストがかかる。その間も原油110〜150ドルが続けば、備蓄を使いながらもインフレが止まらないという最悪の構図が現実になる。
■ 日本政府が今すぐすべきこと
政府は「楽観シナリオ」ではなく、「封鎖が1年以上続く」という悲観シナリオをベースに動くべきだ。具体的には以下の対応が急務である。
① 即時の経済対策:減税・補助金の発動
補正予算による支出増は財政コストが大きく、家計への波及が遅い。消費税の引き下げなど、即効性のある減税を今すぐ議論すべきだ。コストプッシュ型インフレへの対応を先送りすれば、消費の冷え込みと物価上昇の悪循環は加速する。
② 自衛隊によるタンカー護衛の検討
日本は自国のエネルギー安全保障を、米軍の「善意」に丸投げしてきた。だがトランプ政権下で「米国が日本のために動く」という前提は揺らいでいる。現行の安保法制の枠内で、自衛隊によるタンカー護衛の実施を真剣に検討すべき段階に来ている。まずは海賊対処法の運用拡大や、アデン湾からホルムズ方向への護衛範囲延長など、現行法で可能な第一歩から動くべきだ。
③ 中東依存からの構造転換の本格化
これは中長期の課題だが、今こそ議論を加速させる好機だ。再生可能エネルギーへの移行、調達先の多様化、原子力の活用、いずれも「できればやる」ではなく「やらなければ生き残れない」課題として位置づけるべきだ。
■ 「直ちに影響はない」の次に来るもの
日本政府が危機を甘く見る最大の理由は、備蓄という「時間のバッファ」が存在するからだ。しかしそのバッファは、長期封鎖の前では意味を失う。イランは長期戦を想定している。ホルムズ海峡の妨害は彼らにとって低コストで高効果の手段だ。米国が海岸線を占領しない限り、封鎖は続く。そしてその可能性は現実的ではない。
スタグフレーションは、突然やってくるわけではない。「直ちに影響はない」という言葉の陰で、じわじわと家計と企業の体力が削られていく。その時になって政府が動き出しても、手遅れになる。
問うべきは「なぜ対策が遅れているのか」だ。答えは単純かもしれない、危機を危機と考えていない、対応能力不足なため楽観的に常に考えているからである。
では、また!




