土方歳三の詠んだ『木曽掛橋』 | 徒然探訪録

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 今回奈良井宿を訪ねるきっかけになったのは、新選組結成150周年記念事業として、浪士組が上洛時に通った中山道を歩くプロジェクトが進行中で、浪士組一行も奈良井宿に宿泊していること、また恐らく上洛前かと思われますが、土方歳三は『木曽掛橋』という和歌八首を詠んでおり、和歌に詠んだ木曽八景が奈良井宿から中津川宿を通過する間にある風景だったからです。

土方歳三が詠んだ『木曽掛橋』


徳音晩鐘  山てらは そとともわかす ほとときす ふもとにひひく いりあひのかね

徳音寺は木曽義仲の菩提寺で、晩秋の夕暮れにつく暮六つの鐘の音が有名です。


駒嶽夕照  こまのたけ はるる夕日に みる雪の ひかりもさむく まかふしらくも

秋から春まで白雪の駒ケ岳連峰が夕日に映えて赤紫色に光り輝くさまは、幻想的な美しさです。


掛橋朝霞  たちわたる あしたのくもも 色深き かすみにこむる 木曾のかけはし

上松より4㎞の地点にある桟は、初夏の頃の木々の緑、木曽川の藍、様々な形の花崗岩が
朝もやの中に霞んで見える風景が一番美しいとされています。


寝覚夜雨  かりまくら ねさめのとこの 山風も あめになりけり 夜半のさひしさ

木曽川の急流に浸食されて出来た奇岩が梅雨の頃時雨ると、
寝覚めの床一帯の風情をさらに趣深いものにします。


風越晴嵐  明けわたる ひかりもみえて 風越の 高根はれゆく よるのうきくも

緑の草山を爽快な夏風が吹き越してゆくさまは雄大な眺めです。


小野瀑布  しろたえに みる一すしは 手つくりの それかとまかふ おのの瀧つせ

御嶽信仰の行者にとって水行の場であった小野の瀑布。
背後に風越山を配し、流れ落ちるさまはじつに雄大です。
古より中山道でも知られた名所で、『中山道六十三次』にも描かれています。


与川秋月  あかすみむ よかわのなみに すむ月の かけもちりなむ あきのやまみす

現在の南木曾町にあたりますが、ここから眺める仲秋の名月は
周囲の山々の景色と相まって木曾随一だと言われています。


浪士組一行がこれらの景色を見ている余裕はなかったとは思いますが、
彼らも宿泊した奈良井宿を訪ね、土方歳三も和歌にした木曽路を少しでも歩けたことは、
この夏のとても良い思い出になりました。



▲記事に掲載出来なかった写真を動画にまとめました。

以上で今回の奈良井宿についてのレポートは終了となります。


参考HP:『木曽路.com』
『木曽路を歩く』
参考文献:『土方歳三日記 上』筑摩書房 菊地明著