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昔話を、はじめよう。
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〜 Recollect myselves.〜
Written by BlueCat

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【歯の治療のはなし】

 9月か10月に左下5番の抜歯術をし、11月に3番の抜歯術をした。
 5番は少々腫れ、3番はこっぴどく腫れた上、予後があまりよくない。
 ために経過観察のたび口の中(歯茎周辺)を縫合される。だいたい三日後、一週間後、二週間後、といった頻度か。
 もともと粘膜が薄い部位の上、僕の体の粘膜はさらに薄く弱いので、縫合しても切れたり裂けたりしてしまう。場合によっては縫合中に切れることもあった(当然麻酔を受けているので、施術中はほとんど痛みがない)。

 傷は安定し筋トレもできるようになり(療養中は食べて寝て、の繰り返しのため、だらしない体型になる)カフェインや煙草、アルコールも楽しめるようになり、歯磨き(そっと)や入浴(少しずつ)もできるようになるのが1ヶ月後。
 しかし抜歯痕を充填するための人工骨が、今回のものは密度があまり高くなかったらしく、定着するにつれ他のメーカよりも目減りが激しいという。
 それでインプラント基部埋設ついでに人工骨の補充充填を行なったのが1/23。

 抜歯術の時ほどではないが、痛むし腫れる。
 経過観察のたびに縫合され、口の中が糸だらけになるのも相変わらず。
 当初は痛みで恐怖を感じ始めていたのだが、最近は(麻酔を受けていても歯間に針が通るときに感じる)痛みにも慣れ、糸だらけになるほうが裂開したままよりよほどよいだろうと開き直った気持ちでいる。

 今回は基部のメーカも(僕の意思には関係なく先生が)変更したのだが、従前の基部より1.5倍ほども径がある。
 3番は前歯にあたる ── 知らない人のために説明すると、歯列は前歯の中心を基準に、左右奥に向かって1、2、3と番号が振られる、ので「左下3番」は中央歯間から奥に向かって3番目。僕の場合は犬歯のひとつ手前の前歯になる ── のだがそれでもレントゲンでは大きく見える。
 逆に考えれば従前の基部はそれだけ小さくコンパクトだった。
 大きいぶん頑丈なのだろうが、それだけ埋設時に負担はかかるし(各種サイズ展開があると思うが)小柄な体型の人はそもそも使えないこともあるだろう。

 僕がインプラントを選択しているのはシンプルに「ものぐさな性質のため、おそらく入れ歯の手入れを満足にできない」と予測したからだ。
 歯を磨くのも面倒な時があるのに、入れ歯の手入れ(しかも複数)なんて怠るに決まっている。
 しかし左下はほとんどの部位が病巣になってしまっていたため、予定ではほとんど人工歯になる。
 現状、7番はすでにインプラント。1と4は自然歯(両親に感謝)、現在3と5を施術、2と6が病巣のため今年の秋に施術予定。
(入浴制限がひと月は発生するため、僕の掛かっている先生はインプラント施術を秋冬のみする)

 

【言葉遣いのこと】

 今回の施術の一週間ほどまえ、BPと酒を交わす。
 高校時代からそうなのだが、どうも彼は僕の言語能力をかなり高く評価している。
 当然多少の自覚はあるが、それでも僕は自分の言語能力をそれほど高いとは評価できない。

 10代の頃に気付いてからからずっと「思っていることの半分も言葉にできないし、言葉になってしまったものは、思っていることよりずっとイビツなカタチをしていて還元性(言葉から、もとの思いを精確に再現すること)が自分自身でもほとんど不可能だ」と思っている。
 それでも何かを誰かに伝えたり、自分の思いを記録するには言葉を使うしかない。

 最近は体調もあまりよいとは言えないし、(自称百歳なので)生い先も短いし、人生に(こうあれかしという)希望はないし、誰かに伝えたいメッセージを記録しているわけでもないから、Webにもあまり日記を書かなくなった。
 そも僕の書いた言葉から、僕の考えたことを辿ることが可能だったとしても、僕の感情やそれにまつわる経緯の全てを知ることは誰にもできない。僕自身にさえ、書いているときの感情を精確に想起することは不可能で、それにまつわる記憶を完全に思い出せるかと問うたら(僕の場合は記憶の錯誤をいくつか作った経緯もあるため)それも無理だ。

 だから僕の書いている文字列や、僕の発した言葉がどれほど「言葉で表現することがむつかしいこと」を的確に表現することに成功しているとしても、それはその言葉を受け止めた人の感想であって、客観的事実ではないし、僕にとっても正しくはない。
 だからといって僕に他人の感情や感想、その人の世界観を否定する権利はないので、賞賛されれば大人しく感謝する。僕の認識とは異なるとしても、その人にとっての認識は否定の余地がない。

 これは正義や倫理観にも通じるのだが、つまり「共通認識」や「常識」「あたりまえ」「普通」とされる多くのことは「なんとなく多数派だ」と発言者が思っていることがほとんどである。
 それを「個人の見解」と自覚している場合は、何らの否定をする余地もない。
 一方で「当たり前なんだからおまえもそうだろう」と一括りにされれば、さすがに僕も否定する。

 先の例で言えば、友人が僕の言語能力に感嘆しても、その感嘆を僕に押し付けて「お前もそう思うだろう?」と問われれば「全然そうは思わない」と、卑下でも謙遜でもなく否定する。
 彼の感覚している(僕の言語能力に対する)感嘆は彼の感想であって、僕の認識ではない。

 

【両親の言葉遣い】

 僕の父上は東京育ちだったため、群馬にあるにもかかわらず僕の家庭は群馬弁をまったく使わなかった。
 なのでいまだに群馬弁を使うことが少ない。ために一部の土着民から「気取り屋」と認識されることがある(俺も群馬生まれの群馬育ちなんだがな)。

 群馬弁というのは「だ」「べ」「が」「っ」「ん」などを使い、独特の強い音を発する。おそらく強風の中、畑の向こう側にも通じるように発展した結果なのではなかろうか。
 たとえば語尾なら「〜べがな」「〜だんべに」などが知られている。特定の市では「〜だがん」ということもあるようだ。
 僕にはそれらの音が耳に強く汚く感じられるので(僕は濁音を好まない)、なおさら使わない。

 母上は栃木の女だったので、栃木訛りがあった。
 素朴な語尾と、やんわり歌うような拍子の語り言葉が多く、僕は彼女の言葉が大好きだった。
 母親の料理というのはほとんど覚えていない(僕にとって「おふくろの味」なんてものは存在しない)のだが、母親のやわらかな語り口調、というのを僕は記憶している。

 

【来歴】

 初めて書くのだが、僕は3歳の頃から百科事典を読み始めた。
 文字はまだ読めなかったが、写真や図解の多いそれは非常に興味深い内容にあふれていた。
 日本史や世界史だけでなく、宇宙の発生や観測方法について、生命の発生と進化、鉱物と地層、地殻変動と地球の地殻運動、気温や降水量と動植物の生息域、それにともなう人間の活動、科学技術の発達と戦争など、一般的に何らかの科目(化学とか、地質学とか、歴史とか)と分類される多くのことを、何も知らないうちから包括的に見ていた。

 4歳にはひらがなを読めるようになったので読み仮名から漢字を読むこともできるようになった。
 5歳には(漢字の読み方をたびたび尋ねるため、面倒になったらしく)辞書の引き方を姉から教わった。

 それで小学校に通って、退屈した。

 ひらがなが書けない子はもちろん、今説明されたばかりの計算もできないし、当然生物や科学の基礎知識も知らない。
 それでもぼうっと授業を聞くのは平和で楽しかった。
 ちなみに僕はこれまでの人生で、誰かが何かをできないことに対して「なぜこの程度ができないのだ」とイライラしたことがない。僕だってたくさんのこと(速く走るとか、鉄棒の逆上がりとか)はできなかったから、誰だって得意なことがあってできないことがあると、身をもって知っていた。

 だから僕は自分の知識をひけらかすこともできなかったし思いつかなかった。
 まぁ、しなくて正解だったと今は思っているが。

 8歳の時だが、授業で教わっている内容がすでに知っているものだったため教科書の先を読んでいたら教師に「やめなさい」と言われた。
「予習と復習」なんてことを言うタイプの教師だったので意外に感じたが「やめたほうがいいならやめておこう」と、それ以降、現在の授業が既知のものである場合はぼうっと過ごした。
 反発して、隠れてでも先を読んでいれば(将来的に)よかったのだが、教師のいうことを真に受けた挙句、退屈して眠るようになった。
 以前書いたと思うが、僕は宿題も一切しない子供だったが成績は(体育を除いて)非常に優秀だった。
 中学以降、並かそれ以下になっていったのは、あの教師のせいだと密かに思っている。

 

【そのとき学んだこと】

 ひらがなも書けない子供が多かったのに、翌年にはだいたい皆、間違いなくひらがなくらいは書けるようになっていた。掛け算が始まる頃には足し算ができない子はほとんどいなかったし、分数の演算が始まる頃には掛け算ができない子は少なかった。

 皆、僕より少し遅いだけで、できるのだな、と思ったのだ。
 人間は誰でも、早い遅いの別はあるにせよ、今はできないとしても、誰かができることなら、近しい位置まで到達することは可能なのだと。

 僕だって、遅いけれど走ることはできた。
 ゴールできなかった徒競走は一度もない。
 ただ先頭だった試しはなく、最後尾でなかったこともないだけだ。

 それでも誰も、僕を否定したり非難したり馬鹿にしたりはしなかった。
 これは保育園で僕が知らず知らずに学んだ、とても大きなことだと今は思う。
 
<せめてシャワーを浴びたいぜ>

【昔話を書こうと思う】

 老人の昔話と、いい歳をしたおっさんの自慢話は嫌われると相場が決まっている。
 若者からすれば前者は退屈で、後者は滑稽だからだろう。

 僕は子供時代のことを語ることを避けてきた。
 不幸だったから、ではない。

 両親も姉も妹も揃っていて、ペットも犬、猫、(ときどき)鳥(まれに)トカゲもいて、工場兼自宅には従業員の人たちもいて、にぎやかで、あたたかかった。
 思い出す光景が幸福だから、それを思い出して浸る行為が不幸だった。
 少なくとも、過去を思い出す時は現在に不幸に感じている時で、だから思い出すことをやめたのだ。

 もう両親もいなくなり、縁者も次々死んだ。近いうちに従姉妹や僕の姉妹が死に始めるだろう。
 齢を重ねてよかったと、つくづく思う。
 子供の頃から、早く大人に、早く自分で自分の舵を切る自由が欲しかった(できることなら早く老人になって、偉そうなツラで他人に説教の一つもしてやろうと思っていた)。
 それがたとえ親だとしても、自分以外の他人に、まして運や災難に自分の人生を左右されるなんて心底嫌だと思っていた。
 人が死ぬたび、誰かと縁が切れるたび、僕は自由になる。
 運や災難に支配されない方法は、運や災難を支配するか、それらと一緒に生きるかだ。

>>>

 先日、姉の彼氏に「猫君は彼女を作らないの? ひとりで寂しくない?」と問われたのだが、僕は「寂しいのが好きだから」と正直に話した。
(恋人が27人いる話をすると、おそらくややこしくなるので)
 もちろん年に30分くらい寂しさを感じる時はある。しかし寂しいという感情は(自分の中に他の人も棲んでいると)すぐになくなってしまう。
 そんな貴重な寂しさを感じるには、一人でいるほうがいい。

 それに僕はひどく自分勝手で、自分勝手ついでに誰かを傷つける。
 どうでもいい人が相手なら文字通りどうでもいいが、ときには一番近い人を傷つけることだってある。
 10年ほど前にそれを知って以降か。僕は可能な限り、他者との縁を作らないように、断てる縁は断つようにしている。

 未練や後悔、寂寥がないかと問うにそんなはずもない。
 それでも、それらを含めての自由だ。

>>>

「己が何者か 時には立ち止まって 向き合ってみるといい」
 最近プレイした「Ghost of Yotei」の作中に、そんなセリフがある。

 老人の昔話は退屈だという。それはそうだろう。
 しかし若者には振り返る「昔」なんてものがない。
 当たり前だ。振り返らないのが若者の若者たる証だからだ。

 振り返らないのが正解で「昔話なんてくだらない」とうそぶくのが正しい姿勢だろう。
 彼らは己の人生を歩んでいて、まさにそうあるべきで、あとから振り返るための「昔」を今まさに作っている。

 しかし人間は不惑も過ぎるとつい独りよがりになる。
 自分はこうしてやってきたのだから間違っていない、などと広い範囲の根拠もないことを他人に押し付けたりする。そうして頑固でくだらない老人になるのだ。

 だから昔を振り返ろうと思う。
 振り返った昔を、これからようやく書けるようになる。

 わしはもう齢百を超えたので、好き勝手に昔話をしてやろう。
 自分が誰だか、せめて死ぬ前くらいは思い出してもいいだろう。

 無力で未熟で浅慮で、でも未来を夢見て、何ひとつ誰ひとり疑うことを知らず、大切なものばかりだった自分を。
 いつも誰からも ── ただし妹を除いて ── 
大切にされていた自分を。

 素敵だった世界を。

 愛するに足る世界を。







 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
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[Engineer]
  :青猫α:青猫β:黒猫:銀猫:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Darkness-Diary-Ecology-Engineering-Form-Life-Link-Love-Maintenance-Recollect-Stand_Alone-Style-
 
[Module]
  -Breaker-Condencer-Convertor-Generator-Reactor-Resistor-
 
[Object]
  -Book-Camouflage-Friend-Game-Human-Memory-Night-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :暗闇エトランジェ:
:夢見の猫の額の奥に:
 
 
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