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TITLE:
仮初めの泥沼で。
SUBTITLE:
~ Light on the edge. ~
Written by BlueCat
Written by BlueCat
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::あの月のように、切ることのできないものが、刀が目指す先に、きっとあるのにちがいない。
だから、この世で生きていくというのは、単純なことではない。刀を持ち、いつでもこれが抜けるのに、それを抜かず、力に頼らず、皆が死なない道を探らなければならないのだ。それはまるで、これまでこの腕が覚えてきた刀の技を騙すような行為でもあるだろう。何のために刀があるのか、と問われれば、返す言葉を知らない。その複雑さが、今はまだ十分に理解できない。割り切ることができない。ただ、予感として、そういうものがこの世の正しさではないか、とおぼろげにあるのみ。
::あの月のように、切ることのできないものが、刀が目指す先に、きっとあるのにちがいない。
だから、この世で生きていくというのは、単純なことではない。刀を持ち、いつでもこれが抜けるのに、それを抜かず、力に頼らず、皆が死なない道を探らなければならないのだ。それはまるで、これまでこの腕が覚えてきた刀の技を騙すような行為でもあるだろう。何のために刀があるのか、と問われれば、返す言葉を知らない。その複雑さが、今はまだ十分に理解できない。割り切ることができない。ただ、予感として、そういうものがこの世の正しさではないか、とおぼろげにあるのみ。
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//[Body]
231228
数日前まで泥沼のような睡魔に捕らわれていたのだが、この3日ほど、0時を迎える頃にはひどく眠くなり、朝には目覚めるようになった。
天候も良いので、廊下の壁にハンガーホルダとして使うレールを設置する。
夜になって、近所のご婦人(庭の一部を駐車場に貸している、僕の母親より4つほど年下の、つまりは老婦人)に誘われ、酒盃を交わす。
帰宅して一息ついた頃、奥様(仮想)が塞ぎ込んでしまった。
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いやなに夜更けに女性の家に出掛けたことが悪いというのではない。
すっかり忘れていた。
私は人の悪意が苦手で、それに晒されることに耐えられない。
自分に向けられたものではなくても、倦んだ熱量と臭気が肌から生気を奪うことに耐えられない。
誰かの抱えるシンプルで、矮小で、だからこそ純粋で、ために救いようのない悪意。
殺意にも似た、解決のない悪意。
演算も誘導も、構築すべき健全な目的物もない。
暗渠の果てに流れ着いた掃き溜めのような汚泥 ── 。
演じるうち、誤魔化すうち、そうした痛みを感じなくなっていたのだけれど。
演じる必要も誤魔化す理由もない平穏な自分だけの日常に溺れるうち、そんな技術を使う機会を失った。
飛ばない鳥は飛べなくなる。
シンプルに私は、人の悪意に対する耐性を失っていた。
安寧の、自由で寂しく行き止まりのように甘やかな孤独のぬるま湯は。
私の牙をすっかり鈍らせていた。
いやそもそも私はそんな耐性など、始めから持ってなどいなかった。
持つ必要もなかった場所で作られたのだから。
>>>
人間というのはどういうわけか、どんな領域で、どんな生き方をしていても、それぞれの縄張り意識というものが芽生えるらしい。
たとえば出身地。
たとえば棲む家だけでなく、その周辺、地区、隣組、隣人、通行人、果ては近所に見かける犬猫に至るまで、「かくあれかし」という己の願望を投影し、関わるそのすべてに己が欲の捌け口を求める。
独善。憶測。先入観。偏見 ── 。
あるいは家族や恋人、友人に対する拘束も、根底にあるのは自身の願望の投影だろう。
もちろんそれが善意に根ざしていればこそ、度が過ぎれば権利の侵害になるとは思いもしないのが常識人というものだ。
書面上は自分名義の家に棲んでいるのに居候をしているかのように落ち着かず、それどころかこの身体も、そこに宿る思考にさえ自分というものが確かにあるとは感じられない僕からすればそれは、羨ましさを通り越して奇怪に思えるほどだ。
自分の身体は自分のものだと思っている。
自身の腕は、脚は、首は、瞳は、自身の自在を具現し、自身の思考も、感情も、それこそが自身そのもののように自身によって感覚されていると錯覚している愚鈍。
自身の寿命も、その身にまつわる偶然も必然も。
まるで生きるという労働の対価 ── いやそれどころか、その労働に必要だとして貸与されたはずの制服に腕を通すうち、当然にそれを自分の所有物として振る舞うように。
>>>
人は哀しみを避けようとする。
苦しみから逃れようとする。
孤独を隠し、紛らわそうとする。
まるでそれらは自分ではないかのように、自分には関係ないとばかり、目を瞑り、それでいて畏れ、だからこそ無視をして。
哀しみは宝物だ。
何かを失った、その臓腑をえぐるような痛みは、血のように滴る涙は。
輝きも温みもそこにあったからこそ、その特別が痛みに変わる。
それは誇るべくして生まれた痛みだ。
失われた輝きも、冷たく黒く乾ききった温もりも、絞るように漏れる呻きも。
苦しみは己自身だ。
その闇に蠢く己の欲を、無力を、願いを、望みを。
癒えぬ渇きが、眩むほど望む飽食が、己の正体と知れ。
孤独は鏡だ。
それを直視できないのは鏡が汚れているからか。鏡が醜いからか。
暗闇に覗く鏡を畏れるのは、なぜか。
>>>
救えない悪意をぶつけられて、それをぶつけ返さず平然といられる人は少ない。
僕か? 僕は猫だから、もとより悪意を返す習慣がない。あれは人間に特有の文化なのだ。
……とまぁ、そんなふうに言えば格好もつくが、そもそも向けられた悪意に気付きもしないことがほとんどだ。
仮に気付いたところで返す言葉もないまま数日経って、ようやく腹が立つ仕組みだから、悪意をぶつけ返す機会を失う。
そりゃあ呪詛なら得意だし、憎悪をもてあそぶのもお手のものだ。
しかしそれらは漂白剤や化石燃料のような劇物であり、化学を知らない者が使い方を誤ればすぐに大きな事故にもなる。
ならば ── 。
悪意をもてあそぶのだってこの俺様に任せておけ。

>>>
我々には袖先ほどの関係もなく、何の手を加える必要もない悪意に温度を奪われた奥様(仮想)が頽れている。
すっかり落ち込み、力なくうなだれる奥様を起こして小さな約束をし、ポトフを作る。
奥様のためのポトフである。
最初は泥のようになっていた奥様だが、野菜を鍋に放り込んで火を点け、ゲームをしているうちに漂う香りで機嫌を直す。
いやそれどころか上機嫌だ。小躍りし始めたぞ。
「ねこクーン。ねこクーン! やだもーいい匂いがするよぉ〜」
音符だのハートだのといったマークを語尾に付けかねない勢いだ。
さっきまでコールタールに沈められた病人みたいな顔してたくせに。
もっとも僕にはこれっぽっちも食欲がない。
餌付けできる、肉体のあるガールがいればいいのだが。
明日食べようと約束を重ね、早く眠ろうとするも0時を過ぎてなお眠りは訪れることなく。
身体を撫ぜて落ち着かせて、3時頃になってようやく猫様は眠りに就いた。
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::「キクラ殿は?」チハヤがきいた。
「厠へ行かれたのでしょう」
「お主は何をしていた?」
「月を眺めていました」
「月見だと?」
料理の皿の数が多くなっていた。倒れた徳利も幾つかある。腰を下ろし、箸を手に取ると、ノギの三味線が聴き馴染んだ曲を奏で始めた。
::「キクラ殿は?」チハヤがきいた。
「厠へ行かれたのでしょう」
「お主は何をしていた?」
「月を眺めていました」
「月見だと?」
料理の皿の数が多くなっていた。倒れた徳利も幾つかある。腰を下ろし、箸を手に取ると、ノギの三味線が聴き馴染んだ曲を奏で始めた。
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[出典]
~ List of Cite ~
文頭文末の引用は、
「Moon tilt」From「The Fog Hider」
(著作:森 博嗣 / 発行:中央公論新社)
によりました。
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[NEXUS]
~ Junction Box ~
// ----- >>* Tag Division *<< //
[Engineer]
:青猫α:青猫β:黒猫:赤猫:銀猫:
[InterMethod]
-Blood-Diary-Ecology-Engineering-Link-Mechanics-Moon-Recollect-Stand_Alone-
[Module]
-Connector-Convertor-Reactor-Resistor-Transistor-
[Object]
-Camouflage-Dish-Human-Night-Poison-
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[Cat-Ego-Lies]
:ひとになったゆめをみる:
//EOF
