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脱線し続ければ孤独にはなる。
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~ The Derailer. ~
Written by BlueCat

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230409

 昨年の夏の終わりに堆肥場を作った。
 刈り取った草を千切っては投げ、千切っては投げしていたのだが、いい感じの腐植になるまでには思った以上に時間が掛かった。
 細菌系資材が足りないのかと思い、足したりもした。

 しかしどれほどその必要があったろう。それでも腐植はなかなかできなかった。
 なぜといってそれは冬だから。

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 現在は主に、米ぬかを主体に使っている。
 ぬか漬けに使われるように、掛かったそれを発酵させる効果がある。

 僕の棲むエリアではたいていコイン精米所がホームセンタの近所にあるので、見かけたらぬか室から頂いていた。
 もちろん無料である。
 しかし当たり日ばかりではない。せっかくキャンピングカーで詰める袋と下敷きの大型プラトレイを持っていったのに、手ぶらで帰ることもある。
 米ぬかのためだけにあちこち出かける気にもならないから、思ったほどは集まらない。

 ところでお米を(スーパーではなく)米屋で買っているので、ためしにぬかを扱っているか訊ねたら、15kg500円だという。
 即買った。
 安定して(むしろ必ず)手に入るのはありがたいし、自分で袋詰めする必要もないのだから、しめたものである。

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 うまく白カビが繁殖した部分からは湯気が上がり、枯れ葉やら枯れ草やらシュレッドした枝が発酵している。
 手で掴めば、手袋越しにもあたたかく、香りは濃厚な土の匂いをさせている。

 半年越しではあるが、堆肥がきちんと出来つつある。
 一部、嫌気性菌が発生して青カビが繁殖している部分もある。
 青カビの部分はいい匂いがまったくしない(基本的に有害なので良い子は匂いを嗅がないように)。

 好気性菌を増やすため、数日おきに撹拌を繰り返す。
(冬の間は、むしろ放って置いても問題ないレベルで発酵が進まなかった)
 コーヒーかすや生ゴミも、気が向いたら堆肥場に放り込んでいる。

 雑草堆肥のアイディアは、Youtube の園芸系チャンネルで知った。それで堆肥場を作ることにしたのだ。
 枯れた雑草の山だったものが、今は宝の山に見える。
 もう焼く必要もない。

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 どうやら子供の頃から、周囲の人がしていないことばかりしていた気がする。
 もちろん同じ事をしようと思ってもできないことが多かった。
 体力も財力も、他の子に比べると圧倒的になかったので、手の届く範囲で、自分のしたいことを選ぶ必要があった。
 おそらく指をくわえて羨んでいるだけの盆暗ではなかったことは幸いだっただろうか。

 TVゲームが欲しいとなれば自分でゲームを作った。
 家具が欲しければ材料を集めて自分で作った。
 自転車が欲しければ、撤去ビラの付いた自転車を集めて ── 犯罪です ── 寄せ集めの部品から自転車を作った。

 結局、子供の頃とさして変わらないことをしている。
 少なくとも周囲を見回しても、自宅の床や壁をリフォームしたり、キャンピングキャビンを買ってソーラ発電システムを組み上げたり、パブリッククラウドサービスを嫌ってプライベートサーバを立ち上げたり、庭を開墾して堆肥を作ったりしている人は見かけない。
 生活に根ざしたものも、単純なテクノロジィも、農業も工業も家事もホビィも一緒くたにして暮らしている。

 もちろん皆が皆こんなことばかりしていたら、世の中は停滞してしまうかもしれない。
 僕の場合は専業主夫(仮想)であるにもかかわらず、家事をそんなにしなくても奥様(仮想)に叱られたり、邪険にされたりしない、というのが大きい。

 そういえば設計の仕事をしていた頃は図面を書くよりCADのマクロを組んでいる時間の方が長かったし、保険のセールスをさせ
れば、とりあえず自社の商品を売らなかった。
 急がば回れ、という言葉を僕は結構信じていて、実のところ遠回りには違いないから時間的な効率は悪いのだが、道に迷う回数を重ねたぶんだけ、迷子の経験が生きてくる。いわゆる「潰しが効き」やすくなる。

 もっともどんなに潰しが効くにせよ、無職になったらそこまでだ。
 今まで積んだどんな経験も、回り道も、そのすべてをかき集めてまた新しい道に迷い込むより仕方ない。

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 子供の頃はもう少し、まともな将来像を描いていた気がする。
 まともな大人になって、まともな家庭を築けるのではないかと、思ったこともあった。
 しかし名も知れぬ誰かに与えられているだけのレールを進まされていることに気付いてしまったから、脱線を目論んだところ、あまりにも簡単に僕は脱線した。
 その意味で言えば僕の反抗期は10歳に始まったことになるか。

 不良になるとか、そういうわかりやすいレールに乗った、ステレオタイプな脱線や反抗ではない。
 自我らしい自我が芽生え、反抗期が訪れ、周囲と衝突しながら自身の領域を確立する(あるいはしようとして失敗に終わる)という馬鹿馬鹿しいありようを、僕は冷ややかに諦めた。
 その時点で保有する以上の自我を必要としなかったし、反抗期などない方が良いだろうと判断されたし、周囲と衝突するのは割に合わないと13歳の春の終わりに思った。
 それでも自身の領域を確立しようと思うなら、なににつけブルーオーシャンを目指すよりない。

 周囲と競争せずに自分の立ち位置を確保するためには、周囲と同じことをするわけにはいかない。
 同じことをしてしまえば、自分にそのつもりがなくとも、同じことをしている誰かから、あるいは観察している誰かから、競争していると見なされてしまう。比較されてしまう。

 もちろん未開の領域を開拓するには相応に失敗のリスクが伴うし、失敗する確率の方が高いと見積もって行動していた。
 年金受給年齢になったら(満足な収入が継続的に確保できるわけではないので)大人しく野垂れ死のうと思っていたのはそのためだ。
 僕がその後も生き残る確率は低く、肉体的な限界もそのあたりで迎えるはずで、つまり老後なんてものを考える必要が僕にはなかった。

 まともな家庭を作るなど、10代のうちに諦めた。まともでない家庭に育った自分に、それを手に入れることは不可能なはずだと容易に算出できた。
 当然にまともな大人になることも不可能だと最終的に悟った。まともな人間のフリをして海原(レッドオーシャンの方)を泳ぎ抜けようという戦略にシフトした。

 親に倣う気などさらさらなかったし、友人や教師や上司や先輩に、倣うべき人は見つからなかった。
 完璧な人間も、尊敬に値する者も、憧れる対象もいなかった。
 書物に溺れたのは、そのヴァーチャルの中では、まともな、あるいは完璧な人間が存在し、尊敬に値する行いがあったからだ。
 情報の中、ヴァーチャルの世界には、矛盾の有無にかかわらず、憧れ焦がれ、沿い重ねるべきと思える理想があった。

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 周囲の人間が僕を、孤高だとか、高尚だとか、独自の世界に生きると評したのは、つまり僕が人々をして人間を諦めていたからだろう。
 良い面ばかりの人間なんて、どこにもいなかった。
 自分自身だって、綺麗な部分だけでなど構成されていない。
 キュートなガールを見かければユーワクしたくなるものだし、玄関にやってきたら取りあえず押し倒す。
(僕が通報/逮捕されていないのは、相手の意向を無視したりはしないというそれだけの理由だ)

 他人を下世話だと嗤い続けてきたが、一番下世話なのは自分だと知りつつ、それを隠して僕は生きている。

 僕は自分が思っているよりはるかに幸運に恵まれたことになる。
 いったいどれだけのイキモノが、ネコノカミサマに祈った程度で、願うとおりの道を彷徨えるというのだろう。

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 独学ばかりの人生だ。
 腐葉土のあたたかさと香りを愉しみながら、昨年はまったく開墾が進まなかった花壇を眺める。
 切り倒した木の切り株からは新芽が伸びている(今年こそは掘り返してやる)。

 ネコノカミサマに祈り願うとはどういうことなのだろう。
 結局それは、僕が選択し、実行しているようにも思える。
 けれども大いに、運が左右してもいる。

 ところで叔母と叔父が設置したコンポストは、なぜあんなに内容物が分解されないままだったのか、つくづく疑問である。







 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
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[Engineer]
  :青猫:黒猫:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Convergence-Diary-Ecology-Engineering-Form-Interface-Life-Memory-Stand_Alone-Style-
 
[Module]
  -Condencer-Generator-
[Object]
  -Garden-Human-Memory-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :家庭菜園ティストの狂気:君は首輪で繋がれて:夢見の猫の額の奥に:
 
 
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