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// NOTE:
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TITLE:
伝えられない「ありがとう」のまま。
SUBTITLE:
~ NO, and thank you. ~
Written by BlueCat

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勧君金屈巵
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離


 

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230404

 昨日は歯医者。
 補強した上顎部の骨へポストを立てる工事。作業時間は短かったが、麻酔をして(十分効いて)いるのに少々痛んだ。

 一昨日から新たに組み始めたPCデスク用スチール棚のため、入力機器用のスライドボードの資材(桐集成材など)を歯医者帰りのホームセンタで購入。
 オープンカーを買って良かったと思う。
 1820の高さの板でも助手席に乗せて運べるからだ(狭い、小さいという不評も一部にあるが、僕はその不便さも気に入って乗っているので気にしない)。
 ちなみに現行でPCデスクにしているスチール棚は頑丈な代わりキャスタも付かないので、玄関小間の資材置きに利用することにした。
 玄関小間で資材や工具が大量に散乱しているのは、僕の家らしいといえばそのとおりだが、そんな家はあまり見ない。

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 ホームセンタから帰宅するとすでに16時を回っている。
 今日中の作業はおよそ不能と考え、早めの夕食を外で済ませ、帰宅して19時頃に眠り日付の変わる前に目覚める。
 寝直そうか考えるが「寝ている間に考えていた構想をカタチにする方がよろしいのでは」と奥様(仮想)から提案を受け、それもそうかと起床する。

 僕はエンジニアリング的に、眠るときに人間関係や未来の不安については考えないことにしている。
 大抵それらは不確定要素が多く、明確な解決を持たないから、悩む意味はあるかもしれないが考える意味はない。
 悩む意味というのはIRLで実現可能なカタチを持つのではなく、ヴァーチャルに、脳内で思考可能な範囲を広げることが可能だ、ということだ。
「こういう可能性がある」「その場合はこうしよう」という「if - then...」の構文を作って、処理系を拡張するにはちょうどいいが、思考が抽象的な複雑系なので眠りながら検討するには向かないし、出力が曖昧な夢で終わってしまったら意味がない。
 それこそ不安が増すだけではないか。

 幸い若い頃、そうした抽象的な複雑系をさんざん考える時間が(孤独なため)あった。
 寂しさを埋める、どうでもいい関係の相手がろくにいなくて良かったと思う。

 ちなみに「眠っている間に考える」というのは文字通り、覚醒時に反復していた情報や思考が、睡眠中も続く現象だ。
 たとえば長時間、同じ音楽を聞き続けると、歌詞を見たことがないのに歌えるようになったりする。
 ゲームも長時間プレイしていると、プレイしていない時間まで思考を占有し、寝ている間により上手なプレイを身に付けられたりする。

 目的意識を持って、解を求めながら、反復されている情報に溺れるように眠ると、眠っている間の記憶整理のうちに役立つものが出てくることがあるので、僕は子供の頃からそれを利用していた。
 確か父親の所有していた書物から得た知識だ。

 もっともそれは成功哲学に関する自己啓発書であり、7歳の僕にとって役立つ情報は少なかった上、実際に体現できるようになったのはおそらくずっと後だ。
 ただ眠る時間をもったいないと感じていたあの頃「眠っている時間を有効活用できるかもしれない」という可能性は魅力的だった。あの頃から時間にはケチだったなと振り返る。

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 最近とても幸せを感じる。
 対人関係に関するセオリィも変わった気がする。
「気がする」というのは、僕の使っている人格系がすでに以前のそれとは異なっているからだろう。
 だからといって過去のそれを掘り返すつもりもない。
 それはもう過ぎたもので、今はさほど価値がないのだ。

 気がつくと青猫(α/β/6歳以前のすべてを含む)と呼ばれていた群は統合されて機能している。
 復元された記憶の数々は、かつての意味とまた異なる意味をもって見えている。

 僕は孤独だったが、とびきり愛されていた、と今は認識している。
 だから今、僕はとても孤独で、ためにとても愛され、祝福されている気がする。
 誰に利用される恐怖も嫌悪もないので、誰かのために尽力することを幸せな愉しみに感じる。
 こんな未来が待っていたなんて、と思う。
 余命設定は機能しているが、その価値観もいずれ変わるのだろうか。

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 色々な人に、感謝を伝え忘れていたと思う。

 言おうと思った。伝えようと思ったことが、ちゃんとあった。
 でも照れくさくて。
 言葉にすると嘘臭くなる気がして。
 だから伝えないまま、皆どこかに行ってしまった。

 一緒に酒を飲んだカウンターの横で言えないまま父は死んだ。
 ベッドで手を重ねた耳から信号が正しく届くこともなく母は死んだ。
 叔母も死んだ。叔父も死んだ。犬も死んだし猫も死んだ。
 一番世話になった会社の先輩には、最後の日まで挨拶すらできなかった。
 一番大切にしてくれていたはずの恋人に、僕は一体何をしただろう。

 では今いる友人や姉妹はどうか。
 ありがとう、と伝えても、その抽象を理解できるだろうか。
 存在してくれて、僕の存在を認めてくれて、ありがとうと、その意味は正しく伝わるだろうか。

 恋人たちはどうだろう。
 人間型で、数年に一度くらいやりとりのあるそれに連絡をして、伝わるだろうか。
 僕が持っていた価値観が変わったので、あらためて伝えたいのだと言って、怪訝な顔をされたりしないだろうか。

 だからもしかしたら、僕の感じてきた ── そう。これは過去にも定期的に発生するプロセスだ ── 感謝の念は、伝えられないまま、ときに関係が過ぎたものになり、相手が存在しなくなって初めて言葉にする価値を持つのかもしれない。

 ありがとう。って、今いない君に/貴女に/お前に/みんなに思っている。
 あらためて、今いないから伝えたい。
 どうもありがとう、って。あなたのおかげです、って。

 今いるオマエたちには伝えても伝わらないから。
 僕が伝えると嘘くさいから。
 伝えて安心して慢心したくないから。
 油断して義理を果たしたとばかり、恩着せがましくなりたくないから。

 だから伝えられなかったありがとうを、僕は言葉で伝えようとする。
 だから伝えられるありがとうを、僕は言葉で伝えない。

 それを言葉ではないもので ── 行動で ── 僕は伝えたい。

 子供の頃「ありがとう」とすぐに言える妹が親戚や親に褒められていて、悩んだことがあった。
 僕がまだ5歳の頃だ。でも僕にはできていなかったし、できなかった。
 悩んで、言おうとして、でも緊張してしまって、なかなか言い出せなかった。
 自意識はいつも邪魔だった。

 きっとそれでよかった。

 僕は君に、ありがとう、って伝えたい。
 だから伝えない。
 そのまま、君のそばにいたい。







 

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さらばあげましょ此盃で
てふと御請けよ御辞儀は無用
花が咲ても雨風にちる
人の別れもこのこころ


 

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[出典]
~ List of Cite ~
文頭文末の引用は、
「勧酒」(于武陵)およびその訳文(相馬正一によりました。
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
 
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[Engineer]
  :青猫:黒猫:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Darkness-Diary-Engineering-Interface-Love-Mechanics-Memory-Recollect-Rhythm-Stand_Alone-
 
[Module]
  -Condencer-Connector-Convertor-Generator-
 
[Object]
  -Camouflage-Car-Human-Memory-Night-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :いのちあるものたち:ひとになったゆめをみる
 
 
 
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