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寂しさは感情ではなく欲である。
SUBTITLE:
~ Rotten fuel. ~
Written by BlueCat

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230101

 和尚が2人でオショウガツー。

 年末年始といえば僕のサンクチュアリ、すなわち聖域だった。
 なぜといって大晦日とお正月だけは統計的に外部からのアクセスがなく、つまり僕の時間に闖入するものがまず存在しなかった。

 僕は親戚のところに出かけたり、初詣をしたりもしない。
 おせち料理も興味がないし蕎麦や雑煮は食べたいときに食べることにしている。
 年賀状も出さないし、送られてきた年賀状に返事を出すこともなく、だいたい3年後に破棄される。
 おかげで10年以上前から受け取る年賀状がなくなった。
 当時はまだ、世俗でも年賀状をやり取りする人は多かったように思う。
 ちなみに僕は20年前からTV番組を見ないし新聞も取っていない。
 去年あたりはアンテナを屋根から取り外したので、NHKを見るための通信設備を(TVがあっても)所有していないことになる。

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 仕事があったころは年始といえばだいたいヒマで、まぁせいぜい得意先に挨拶回りするくらい。
 しかし挨拶回りとは何だろう。放っておけば、いずれかのタイミングで必ず顔を合わせるはずだ。
 わざわざ年末年始にかこつけて顔を合わせやり取りをしないと存続できないような関係なら、そんなものはなくなってもよいのではないかと、ずっと思っていた。

 今は分かる。
 それは経済のためだ。メカニズムが自身に有利に働くために、集団の中での立ち回りを決める。
 決めているのは自分自身だと一部の人間は思うだろうが僕はそうではなかった。
 集団やメカニズムに強要された様式が、僕は大嫌いだった。
 その不自由。
 伝統だとか習慣だとか常識だとか、僕が決めたものではないすべてを僕は嫌っていた。
 周囲の一部の人だけ知っているが、僕は非常に傲慢で自分勝手なイキモノだ。

 一定以上の距離を取っていれば、僕は他者との接触を好まず、とても控えめなイキモノに観察されるはずだ。
 慇懃無礼なほど礼儀正しく振る舞うので距離を感じるだろうし、シャイに見えることもあると思う。
 しかし実のところ他者のと距離を制御しているだけのことで、老若男女問わず初対面でも「オレたちマブ(マブダチ≒親友)だし」とかなんとか嘘を並べながら肩を組むくらいのことはできる。
 ものすごくMPを消費する上、何の役にも立たないスキルなので使う機会がないが。

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 数年前に無職になってから、毎日がお正月のようになってしまった。
 聖域というのは、凡俗に汚れた日常があればこそ特別なのであって、普段からそんな場所で暮らしていたらありがたみがないのかといったらそんなことはなく、僕は外部からのアクセスがほとんど存在しない今の日常を気に入っている。

 世の中には「とにかく誰でもいいから自分のそばに居てほしい」というタイプの、いわば寂しがりとでもいうべき性質の人たちがいる。
 賑やかさが好きな人たちも、きっとこの部類ではないかと想像するが、僕の想像が及ばない領域なので精確さは期待できない。

 人間というのは我がままなもので、寂しさが満たされてしまうと今度は「この人のここが良くない」「この人のここがいい」と、他人の性質について選り好みを始める。
 友人同士の諍いに始まり、恋人や配偶者に対する愚痴もその延長線上にある。
 何が問題かというと、寂しいからといって人間関係について厳選しなかったことだろう。
 何が可笑しいといって、自ら選んだ誰かを貶すことは、そのまま自身を貶すことに等しいことだ。
 お腹が空いているからといって、道ばたに落ちている鮭の切り身(生)を食せばお腹を壊す確率が高い。
 そういうものに似ている。

 以前1度だけ、付き合った女が直前の恋人を持ち出しては「猫さんのここがあの人より良い」と聞かせてくることがあった。
 なるほど世の中には、他者と比較してより優れていると褒められることで喜ぶ人間もいるのだろう。あるいはその人自身がそういう価値観の持ち主だったか。
 僕は上記の通りの価値観の持ち主なので(これは酷いな)と思い、黙って聞き流していた。
 おそらくここに書くのが初めての愚痴となる。誰にも話したことはない。

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 いずれにせよ空腹で死にそうなら、やむを得ず質の悪いもので肉体を満たす必要もあるとは思う。
 清潔でないトイレや何もない屋外で用を足したり、公園のベンチで寝たり、道に落ちている生肉を食べたり、といったようなことは「そうしなければどうにもならない」という選択肢のない状況の結果、発生するものだろう。

 だからきっと、寂しさは欲なのだろう。
 食欲と同じで、その欲が強い人はとにかく大量の人間を自分の視界に置きたがるのではないだろうか。
 自分以外の誰かの気配や、それらが自分に対して注意を払ってくれることであるとか、さらには誰かと知り合いだ、とか、誰かの連絡先を知っている、とか、そういうものが心の安寧をもたらすのだろう。
 こうした欲求はとくに子供の頃には必須のものだと言える。
 他人の居る場所に安心を見出し、自分以外に誰もいない場所を忌避しないと、環境に起因した事故に遭ったり、攻撃性の高い他者の被害を受けることもある。

 僕だって子供の頃はこれでも寂しがりではあったのだ。
 しかし自分にとって都合の良い他人を好む自分を嫌というほど自覚していたので、他人を道具遣いしない環境を徐々に構築してしまった。
 僕は都合のいい人間が、男女問わず大好きだ。女だったら格別ではないだろうか。
 そしてその自分を、僕は嫌った。

 結果としての孤独が今ここにある。
 さすが潔癖な完全主義者。まさか実現するなんて誰が思うものか。

 他人が必要なくなったのは、他人に求める機能を自分の能力として身に付けたからだろう。
 僕は衣食住のほとんどを自力で ── 主に経済力で ── 満たすことができる。
 経済の主要な部分も、自分で満たすことができる。
 精神的な部分(たとえば愛情であるとか、優しさであるとか、癒やしであるとか)さえも自分で満たすことができる。

 自分の欲に対して自給自足が可能になるほど、他人は基本的に自分の自由を阻害する要素に過ぎなくなる。
 それでも他者と関わり合うことが避けられない場面は存在するので、たとえば仕事なら、考えの合わない相手と手を組む必要があったり、生理的に好かない相手に我慢することもあった。
 それはある意味で他者を餌にすることであり、他者を道具遣いする事であり、他者を養分にすることであり、自分自身をケダモノに貶めることでもある。

 そこまで潔癖な思考は、果たして良いとは思っていない。
 国会議員をしながらパパ活するくらいの方が、たぶん健全だろう。
 けれども僕には、それはできない。
 都合のいい他人も、都合の悪い他人も、自分の欲の捌け口にすることを許せない。
 四捨五入を2度繰り返せば齢百にも到達する(47を四捨五入して50、それを四捨五入すれば100である)ので、さすがにそこまで潔癖ではないか。
 凡俗にまみれ、ケダモノであり続ける自分を、許すでもなく放置することはできるようになった。
 それが良いことかどうかは分からないが。

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 自由である上で、欲求というのはそのほとんどが邪魔になる。
 欲求を満たすことが自由だという考え方もあるだろう。
 しかし欲求が手軽であるほど、手に入る満足も自由も軽薄だ。
 果たして重厚で崇高な欲求は ── それを満たすことさえ困難な上に ── 持ち続けることも、発生することも容易ではない。
 そしてそれが満たされたところで、それ(欲求の発生と充足)自体はたいした問題ではない。
 なぜといって拡大され、より大きな意味を持つ欲求とは、個体レベルでのそれを大きく上回るからだ。
 集団にとっての欲、社会にとっての欲、それを満たすことは大きな意味を持つが、それゆえ寄与した個体にとってたいした意味を持たない。
 けれど、それこそが動物としての欲から自由になることにも思える。

 たぶん子供の頃から僕は自由を求めていて、自身の欲求さえもまるで見ず知らずの他人のように、寄せ付けたくなかったのかもしれない。
 そもそも自己というのは不自由だ。生きるということも相当に不自由。

 では死は自由か。
 ある意味ではその通り。
 自由も不自由も、その概念すら存在しない状況は、未だに蠱惑の存在だ。
 しかし不自由を愉しむことが生であり、また生きることの極意かもしれない。

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 自分の誕生日も年齢も、僕はよく忘れてしまうのだが、干支は覚えている。
 だから干支が回ってくると、時計を合わせるようにして自分の年齢を自覚する。
 12の倍数だから(あれ今46だっけ? 47だっけ?)という僅かな誤差に悩まされないのがいい。

 ぴょんぴょん可愛いうさぎ年。今年は48歳になるのだと知る。
 きっと60歳でも思うだろう。
 そしてほぼ毎日しているのに飽きもせず、余命を計算するのだ。

 うさぎは寂しがりだという説があるが、転じてうさぎ年生まれのすべてが寂しがりだとは思わない方がいいだろう ── 特に猫の魂を宿しているタイプは。

 世界遺産がそうであったように、聖域と呼ばれるような場所に人間というケダモノが増えると、それは凡俗に汚れるからだ。







 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
 
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[Engineer]
  :青猫α:黒猫:赤猫:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Darkness-Diary-Ecology-Engineering-Form-Link-Mechanics-Recollect-Stand_Alone-Style-
 
[Module]
  -Condencer-Generator-Reactor-Resistor-
 
[Object]
  -Human-Memory-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :夢見の猫の額の奥に:
 
 
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