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弱者のための社会であることを強者は忘れがちだ。
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Written by BlueCat

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 無職(独身専業主夫、あるいは独居自宅警備員)になる前から、僕の時間の使い方はズレていた。
 主流とされるべきそれと違い、僕は人の居ない方へ向かう習性がある。

 たくさんの人が向かっている方向があると、取りあえず停止するか、人々が来た方向(もしくは向かっている方向の逆方向)に行こうとする。
 これは行動でもそうだし、時間の使い方もそのようだ。

 子供の頃から不思議だったのだが、一般に人はピークやラッシュが発生するような行動をする。
 通勤や帰省、行楽など、個人の行動はともかくとして、全体が動く方向性やパターンが存在している。
 僕はひねくれた ── というより単にものぐさな ── 子供だったので、通勤と通学のラッシュが同時発生する様子をして「いっそのこと、学校は1時間遅く登校するようにすればいいのに」と低学年の頃から思っていた。

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 会社員になってからも、早めに仕事を済ませて早めに退社することが多かった。
 残業手当のある会社ではなかったし、夜中だろうと土日祝日だろうと顧客が指定すれば仕事をするのが当たり前だったので、成果を上げる ── あるいは与えられたタスクを完遂する ── ことのみを問題としていた。

 なので午後の3時にとりあえず退社して自宅に戻ってゲームをしたり公園でしばらく昼寝をして、20時にスケジュールされた顧客と商談するということもあれば、雪の降る午前2時に事故を起こした顧客に呼ばれて事故現場に向かうこともあった。
 当時はまだ携帯端末でオンライン処理ができない時代だったので、会社のオンラインシステムを使えるよう自宅にも相応のシステムを(自腹で)構築した。
 結果、電話とコンピュータで完結可能な事案は自宅でもできたし、営業については目的の時間と場所さえ間違わなければ完結できた。

 実に10年以上前から、テレワークのようなことをしていたことになる。
 営業に出かけるのも面倒で、電話や郵送で手続きできる顧客にはそれを勧めていたし、自動車保険も率先して3年の契約期間を勧めていた。
 今では当たり前かもしれない(業界に居ないので分からない)が「訪問し顧客と対面することこそ至上」みたいなスタイルや考え方に否定的だった。
 顧客は営業に会いたい(顔を見たい)わけではなく、適切な商品を適切に購入したいだけで、可能なら誰にも会わず自動的に手続きができるならそれが一番だ、と思っていた(僕がそうだから)。
 ただし対面の時だけは(以前も書いたが)他社の商品を勧めることがあった。
 そんなことをするのは僕だけだったので、周囲の同業者(上司や同僚も含む)には否定的な人も居たが、実際にお客様はそれでよいと言う人もいたし、対面を求めるお客様とだけ会えばいいので時間が節約できた。

 営業で移動する時間が消滅すると時間が余る ── 営業職が移動にほとんどの時間を浪費しているという体感の事実は立証された。
 余った時間に必要な事務処理を前倒しで行う。
 すると翌日の午前中はブログを書いていてもまだ時間が余る。
 同僚やパートさんの質問に答えたり、与えられた雑務をこなしてもなお余る。昼食を摂らないからなおさらだったかもしれない。
 突発的に発生するタスク(主に事故処理)をするためには、そういったバッファやマージン、要は時間や気力や体力的な余白を多く持っていた方が有利だったのだ。
 まぁだいたい遊んだり寝ていたりしたが。それでも与えられたタスクのほとんどは完結していたから、周囲を眺めて「真面目だなぁ」「もっと遊んでいても仕事は終わると思うんだけどなぁ」と思っていた。

 結果、定時より早くに仕事が片付いてしまうので、午後に外出の用事をこさえて直帰する。
 だいたい15時前後には(その後にアポイントが入っていても)買い物をするようになったのはその頃からか。
 会社員としてはアウトだけれど、どうせ時間は余っているし、スーパーなんて移動の道中にいくらでもある。
 私生活の時間効率を高めると、結果、仕事の時間効率も上昇する。
 会社員の倫理としてアウトかセーフかは度外視しても問題ない、というのが僕の思考だったのだ。

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 なので未だに、時間を拘束されさえすれば給与が発生するという仕組みに馴染めない。
 バイトでもそうだ ── なのでタダで働いたり、給与を店長にあげてしまったりする ── し、会社員だと「残業せずに定時で帰れ」とか命令しつつ暗に自宅で事務仕事をするように仕向けるタイプの会社には辟易した。
 残業代なんか要らないからしたいだけ仕事をしたいのだ。
 好き勝手に仕事をさせてもらいたい(好き勝手に業務を終えたい)し、仕事をする場所や手段だって好き勝手にさせてもらいたい、というワガママをそれ(だいたい40歳)まで体現していたので無理もない。
 今思えば、あんなに自由な会社員を他に見たことがなかった。
 きっと2度とできないだろうから、その意味で転職などしなければ良かったとは思う。
 その当時の会社は今や徒歩2分の距離にあるし。

 いずれにせよ直接的にでなくとも収益を上げる活動とそうでないものがある一方、時間というのは放っておけば経過してしまう尺度なので、時間単位によって成果(賃金)を測る思考様式は馴染まない。
 当然、最低賃金だとか残業/深夜/早朝/休日手当の概念について「?」となってしまう。
 もちろんその倫理 ── 僕にとってそれらイレギュラな時間における賃金の概念はただの倫理である ── は分かる。
 しかし倫理だけで金銭的成果は生まれない。だからその矛盾に疲れる。
 倫理だけで経済が回るなら、この国はこんなにジリ貧になっていない。
 この国が貧しいのは、倫理が失われているからか、経済がうまく作用しなくなったか、そもそも経済あるいは倫理のいずれかもしくは両方のメカニズムに欠陥があるからだろう。

 お金を稼ぐ上で倫理上のグレーゾーンは発生する。
 営業の移動中に私的な買い物をするのは倫理的にはアウトだが、その労働者の時間効率が上昇することで最終的な業務効率も上がるなら、黙認して良いと僕は思ってしまう(懲戒されるリスクも含め自己責任だが)。
 正しく業務することはもちろん間違ってはいない。しかし正しさはときどき無駄を生む。

 100人で100人101脚走を行うとしたら、だいたい一番遅い人間に合わせる必要がある。
 速く走れる人の脚力は、まったくもって発揮されず、ただの無駄になる。
 集団や社会では、そうやって動作を制限されることがある。
 もちろんだからこそ倫理が守られる。
 転んで怪我をする弱者を作らないための、それは優しさだ。
 しかし学問であれお金稼ぎであれ、自由競争であるのも事実ではないのか。

 実のないカタチだけの空論が大義名分を背負っていて、だから多くの人はその矛盾を無視して信じてしまう。
 しかし多分、それで良いのだろうとも最近は思うようになった。

 社会にはたくさんの人がいる。
 能力のある人よりも、能力があると自負しているだけの普通の人の方が多いし、もっといえば能力がない人も多い。
 また能力は増えることもあれば減ることもある。不変の尺度ではない。
 無能と貧乏人は死ね、という考え方は潔くて好きだが、社会はそういう倫理では作られていない。
 能力のない人もお金のない人も、最低限(それがどの程度の水準を指すのかは知らないが)の生活をできるように作られている。
 だから能力が無くても、知識の無い新人でも、1時間あたりで賃金が貰える仕組みは社会的に善良なのだ。

 自営(あるいは経営者)をしていると、そういう倫理が空論に思えるだけのことだろう。




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 年末年始や休日は、多くの人が動く。
 その傾向を観察し、それとは逆の方向に行動する。

 ずっとそれを繰り返してきた。

 混まない平日の昼頃に買い物をし、ドライブや観光をしたいならだいたい平日の夕方や早朝がいいだろうと思う。
 思うだけで興味がないから(ドライブや観光は)しない。
 僕の代わりに旅行や恋愛や家族との生活をしている人がブログを書いて読ませてくれたり、会って話を聞かせてくれたりする。

 僕がいなくても、僕以外の人が僕の代わりをしてくれている。
 僕は恋愛する必要もなければ家族を作る必要も、(目立つほどの)仕事をする必要も、観光をする必要もない。
 友達と遊ぶ必要も、友達を作る必要もない。
 自由が過ぎて、必要なものがほとんどない。

 ただ、冷蔵庫に牛乳がない。
 牛乳がないとカプチーノを作れない。
 
 牛乳を買いに行かなくてはならない。これは必要なことだ。
 しかし15時に出かけたスーパーは酷く混んでいて、駐車場を一周して自宅に戻ってきてしまった。

 夜にリトライしなくてはならない。
 明日はスーパーが店休だからだ。





 
 

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