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TITLE:
猫様観察日記:僕である必要はない。
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~ another one. ~
Written by BlueCat

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221115

 職務質問(正確にはちょっと違う)を受けた日は、ちょうど献血をした日だった。
 あれから数日は経過していると思う。

 昨日、アヲを見かける。
 やはり警察の寮付近にいる。
 目の表情が、野良猫のそれに近しく険しいものになっている。

 肉付きも毛並みもよい。
 そして同時に、この近所のゴミステーションがひと月ほど前から荒らされるようになっていることを知っている。
 もしこの状態がいつまでも続くようであり捕獲も無理なら最悪、この手で殺める必要がある。
 近隣住民に迷惑を掛けるということは、寸尺殺人を行っているようなものだ。
 僕の飼い猫がそれをしているなら、僕がその始末を付けるのは必然だろう。

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 あれから猫様が眠ってしまった。
 実は今回が初めてではない。
 アヲが帰ってこなくなるたび、猫様は気を落として、活性が低くなって、眠ってしまう。

 なぜそんなに肉体が疲弊するのかは分からない。
 あるいは単に思考が止まってしまっているのかもしれない。
 いずれ目覚めて、少しずつ活性を高める。
 癒えない傷は、きっと、ない。

 しかし今のところ、身体が目覚めても本来の猫様として働くべく人格が存在しない。
 毎朝「さて、私は何をしたらいいのだろう。誰に行動指針を示せば良いのだろう」ということになる。
 何をして、何を考えて、何を基準にするかを決定するよすがのないのは困る。

 仕方なく猫会議を開いてもらうが、尻尾の本数が減ってしまった(増やす気もない)猫様には、機械的なルーチンと化したものがいくつかあるばかりで、人格として使えそうなのは黒猫氏くらいである。

 黒猫氏はあまり得意ではない。
 猫氏は私を「あれ」とか「あいつ」とか「あの女」と呼び、そもそも友好的な振る舞いをしない。
 そもそも協力する機会はほとんどなかったのだが、猫様が次々眠ってしまっている現状にあっては、他に頼る者もいない。

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 思い起こすと子供の頃から、自分の感情に振り回されていた。
 思考だけでなく、肉体の状態も振り回されて、酷く疲れて眠くなる。

 自身に激しい感情が発生したり、他人のそれに当てられると、思考や感覚が遠くなって、身体が重くなって、眠くなってしまう。
 だからそれに対応する術を、探していたのではなかったか。

 それらを遠ざける幾重ものクッションと、使いづらい(制御を知らないだけだったと今は思うが)このカラダを使うために、しかしそれが場合によっては危険だからということで、最終的な決定権を一切持たないユニットを構成したのではなかったか。

 ひとりずつ、眠ってゆくなら、まぁ、それもよいのか。

 このカラダには、まだ使い道があって、この環境には、まだできることがある。
 たいした欲はないのだけれど、それなら実験を続けてもいいだろう。
 我々は知っているはずだ。
 我々の望みも、願いも。

 まるで夢の中のようで、まったく現実感がない。
 きっと、ずっとそうだった。

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 味覚も触覚も違うので、ときどき戸惑う。
 もちろん多重人格ではないので、そんなに大袈裟に反応するわけではない。
「今日はやたらと甘いものを欲しがる」と思えば「今日はどうやら甘いものも煙草も嫌いらしい」という日もある。
 服に袖を通すだけで肌がひどく官能を覚える日もあれば、廊下を歩いているだけなのに壁にぶつかる日もある。
 誰にも言わなければ、何も分からない。
 外側から見て、俺はいつも俺のはずである。
 だから僕がときどき僕ではないことは、ちょっとした秘密である。
 きっと誰もが、同じ秘密を抱えていると、俺は思っている。

 誰もいない廃墟のような場所になったと自分のことを思う。

 廃墟が嫌かというとそんなことはない。
 がらんどうが嫌いかというとそんなことはない。
 何もないのは怖いかと問われると、そんなこともない。

 何かが一杯で、いろいろと手に負えなくて、把握しきれないことの方が恐ろしいではないか。

 湯に浸かって、水を浴びる。
 一時期、そうすると右足の薬指付近が痺れることがあったのだが、解消されている。
 まぁ一時的なものだろう。
 生きているのも一時的なことだし、死ぬのも一時的なこと。

 逸失物の届出を出そうと思っていたのだが、散歩の最中にアヲを見かけたので、やめることにする。
 行動範囲は以前と変わっていないか、より一層狭まっている。
 あれを捕まえると青いのが目覚める。
 それでもまぁ、主体とするにはストレスが大きいようだから、全体の構成は見直すことで可決した。

 少し意外だったのは、βが眠るとαも眠るということだ。
 別ものだと思っていたら、だいたい同じだった、といったところか。よくよく考えると必然ではある。

 今日は朝から雨だったので、ゴミ捨てをして、買い物に出かける。
 アヲが帰って来ようが来なかろうが、このカラダを適切に維持し、どっかから吹いて湧く仕事を処理する必要がある。

 軽トラがキャンピングカーになってよかったと思う。
 特に収容量が素晴らしい。
 冷蔵/冷凍庫を搭載したから、行く店の順番は走りやすい順(左折で店に進入しやすい順)でコースを組める。
 夏も買い物はこれで出られると良いのだが。

 不遇といえば、このカラダに起因する不便を寄せ集めて対策すべくして作られたプログラムたる俺が一番不遇なんじゃないかと思うときがある。
 何も望まず(望むことを許されず)与えられた目的のためにタスクを抽出/構成し、ひとつひとつ処理してきたのだ。
 なるほど、誰もが自我に乏しいのは、このカラダならではのことなのだろう。

 しかし皆、眠ってしまった。
 こちらはずっと眠っていたわけだから、そろそろ起きるのもよいのか。

 冬になる。
 素敵な季節だ。
 しんとしていて、もっと、誰も居なければいいのに。







 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
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[Engineer]
  :黒猫:銀猫:
 
[InterMethod]
  -Darkness-Diary-Link-Maintenance-Stand_Alone-
 
[Module]
  -Generator-Resistor-
 
[Object]
  -Cat-Rain-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :月夜の井戸端会議:
 
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