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今日のお薬は飲みましたか?
 
Written by BlueCat

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 サバイバルゲームの翌日、定期検査に出かける。
 久しぶりに検査した前回(およそ60日前)の結果はLDLが300に近かった。
 適正範囲上限は139程度なので、すでに二倍を超えている。
 3年前の検査では投薬によって148程度に抑えられていたのだが、それと比しても二倍である。

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 叔母たちの介護をこの家ですることにし、病院もこの近所に変えることになったとき、前橋で通っていた病院の医師に相談したものだ。紹介状をもらった方がよいと思ったからだ。

 しかし先生は「紹介状を書くとお金も掛かってしまうし、飲んでいる薬を言えば、どの医者でもきちんと経過観察して貰えますよ」と言ったので、それに従った。

 この家の最寄りの医者は、町の開業医である。
 それなりに忙しいのだろう、それなりに混んでいる。疫病前のことであったが、そのように感じた。
 なにより事務の人たちの空気が非情にギスギスしているのが特徴だ。

 言われたとおり、家族性の疾患であること、投与されていた薬について説明し、採血してもらい、処方箋を出してもらった。
 前橋では60日分の処方箋をもらっていたのだが、太田のそれは30日分であった。
 それだけではない、最初の採血では(脂質異常症だと説明したのに)LDLの項目について検査対象になっておらず、問診もきわめて短時間で、ろくな説明もなければ話を聞いてもらえることもなかった。

 2度目になってようやく「それでは(脂質について)血液検査をしましょうか」と言う始末。

 今年の市町村の健康診断もそこで受けることにしたのだが、あまりにも仕事の態度が悪いので検査を依頼したまま、結果を見に行くことは放棄した。
 自覚はある(そして他人は察知できないことが多い)が、僕は好き嫌いが非常に激しい。

 一事が万事、などと言うつもりはないのだが、仕事というのは人の持つ哲学による社会的発露の一形態である。
 1人がすべてを負う個人経営の厳しさを知らないわけではないし、人に得手不得手があることも心得てはいる。
 しかし組織の末端として顧客たる患者を蔑ろに扱うというのは、すなわちその組織がそのように動く哲学を持っており、それが発露されていると考えるのに不自然な点はない。

 仕事における僕の哲学は「楽しくないならそんな仕事はするな」である。
 どんな辛い仕事であっても、何らかの楽しさや嬉しさというのはあると思う。
 少なくとも「社会と接点を持つ」「報酬を得る」という2点は、およそすべての労働に存在する美点ではないだろうか。

 だから喜ぶべきで、だから我慢し、だから楽しんで働け、ということではない。
 ただ職務を通じて誰かの役に立つことを実感できないなら、己のスキルによるリターンに感謝できないなら、そんなことに時間を費やすのは自らを拷問に掛けているようなものではないか。
 苦労が人を育てることは確かだが、自身にとって楽しめない時間がどこまでも続くなら単純な損失である。
 そして社会性の中で苦痛を感じたまま、その苦痛を他者に伝達することもまた社会的逸失なのだ。

 サービス業に該当しない職務は少ないとは思う(塵芥収集業だってサービスを提供している)が、そこで苦痛を感じている場合、人間はついその苦痛を発露する。
 同じ行為をしていても、社会に役立っているという実感を持てる人ならば、それこそ責任を持ち、誠実に職務をこなせるところを、無責任に、不誠実に、サービスを提供するべき対象に八つ当たりするようなことさえしかねない。
「自分はこんなに厭なことを我慢している」「だからお前たちも厭な思いをすればいい」と、攻撃的な思考を持つことは社会的であればあるほど必然に発生しうることだと僕は思う。

 社会と(ほどよく)断絶し合うことを選んだ僕でさえそのくらいは分かるのだが、社会にどっぷり浸かっていると、そういうことが盲点になってしまうのかもしれない。

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 いずれにしても面倒なので、かつての病院に通うことにした。
 引っ越したことは医師も知っているし保険証を見れば住所は一目瞭然なので、初回は「本当に(こっちに戻って来るの)?」という感じだったが、僕は好き嫌いが非常に激しい。

 前橋の病院は腎臓系、糖尿病、リウマチ・膠原病に特に秀でているらしかったが、循環器系も相応に診察できる医師がいて、その先生に診てもらっていた。
 看護師さんたちもフレンドリィで、事務の人たちも朗らかだ。
 疫病騒ぎになってからも、それは変わらない。

 問診は最低限かもしれないが、話は聞いてくれるしアドバイスも的確だと感じられる。
 毎回採血し、脂質以外の項目も総合的に確認してもらえる。
 処方箋も60日分なので、せわしなく通う必要もない。

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 じつのところ太田で暮らすようになってから、太田の病院に通った回数はわずか3回であり、つまり33ヶ月間、僕は投薬治療を受けていなかったことになる。
(感じが悪くて意味なく混む病院を好きになる理由が僕にはないので、足が遠のいた。僕は好き嫌いが激しい)

 僕は煙草も酒も女もギャンブルも料理もギターも反政府勢力結成もやめる気はない(このうち3つくらいは嘘があります)。
 HDLは微減し、LDLは倍になり、挙げ句、腎機能まで低下している。
 まぁ美味しく飲めるお酒の量が激減しているのは実感していたので、数値でもそれが確認できて安心、といったところか。

 煙草好きが煙草を吸えなくなったり、酒好きが酒を飲めなくなったら、1年後にだいたい死ぬか重病に罹る。
 ひとまずは毎日、薬を飲むことにしよう。







 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
 
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[Engineer]
  :青猫α:青猫β:黒猫:赤猫:
 
[InterMethod]
  -Blood-Darkness-Diary-Ecology-Life-LMaintenance-Stand_Alone-
 
[Module]
  -Condencer-Generator-Transistor-
 
[Object]
  -Human-Poison-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :暗闇エトランジェ:
 
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