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TITLE:
220402 猫様観察日記
SUBTITLE:
~ confuse again. ~
Written by BlueCat

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::「センセイ、ビールつぎましょうか」わたしが聞くと、センセイは首を横に振った。
「いいえ。ワタクシがツキコさんについであげましょう。ワタクシのぶんもワタクシがつぎます」あいかわらず、つがせてくれない。
「センセイはお酌されるのが、嫌いですか」
「上手な人ならいいんですがね、ツキコさんは下手だ」
「そうですか」
「ワタクシが、教えてあげましょう」
「いえ、結構です」
「かたくなな人だ」
「センセイこそ」
 センセイのついでくれたビールは、泡が固くたっていた。ひよこはどこで飼うんですか、と聞くと、しばらくは家の中で、とセンセイは答えた。ひよこが動く音が、帽子の中の箱の中から、かすかに聞こえる。動物を飼うのはお好きなんですか、と聞くと、センセイは首を横に振った。
「得手ではないですね」
「だいじょうぶですか」
「ひよこならね、そんなに可愛くないでしょう」
「可愛くないのがいいんですか」
「可愛いと、つい夢中になる」
 かさこそと、ひよこは箱の中で動いている。センセイがコップを干したので、私がビールをつぎ足した。センセイはこばまなかった。もうちょっと、泡たてて。そうそう。そんなふうに言いながら、わたしの酌を静かに受けた。
 
 
 

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//[Body]
220402
 
 猫くん(6歳以前)の自己嫌悪が凄い。
 簡単に言えば、ダークマター(暗黒物質)をぬるま湯でこねて作った泥人形みたいな感じ。
 
 アヲくん(彼女はメスだけれど)が3/21頃に発見された。
 3/10からそこまでの落ち込み具合も相当で、未だに少し引きずっている。
 
 日常生活に支障を来して、モチベーションがおよそマイナスに傾いていた。
 ようやく食事や睡眠などについて、ある程度の規則正しい生活を取り戻し、現実逃避をやめて現実と向き合い、身体機能の維持やメインテナンスを正常化しつつある。
 わたしが「猫クぅン、わたしキャベツサラダ食べたいなぁ」と言えば、猫クンは作ってくれる。
 この条件反射とも呼べる性質を利用しない手はない。
 
 しかしβくん(「猫くん/6歳以前」ベースの置換用仮想人格)が作られた理由が少し分かった気がする。
 猫くんは単一の事象に対し、それが解決した後にもとにかく引きずる。「重いコンダラー」くらいの試練の道である。
 
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※アニメ「巨人の星」のオープニングソング「ゆけゆけ飛雄馬」の歌い出しは「思い込んだら」である。
 手動式整地用ローラを引いているシーンと重なって「重いコンダラー」と誤解している人もいると聞く。
 あれは「コンダラ」というトレーニング器具ではないのだが、思い込んだらなかなかそれを手放せないのが人間だろう。
 思い込みって怖いね。みんなも気をつけよう。
 
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 とにかくいつになったら元に戻るのかが分からない。
 しかも要因となった外部の問題が解消され、およそ元通りの日常が戻ったにもかかわらずの引きずりっぷり。
 その執念深さ。これはモテないわ。
 つまるところ内部の問題で、たとえば倫理観であるとか、正義感であるとか、履歴にまで完璧を求めるから起こる失望が原因だろうか。
 
 しかし具体的な対策を立てるほどの気力もない。
 思考能力も判断能力もひどく低下していて、まるで痴呆症の人である。
  ── 子供の頃から「老成している」なんて言われていたのはそれが遠因かもしれない。
 
 今でこそ外的な強制要素がほとんど影響しない環境を作って生きているが、学校があったり、会社があったり、家族や友人や恋人が多かったりすれば、それら一つ一つがつまづくきっかけにもなる。
 たとえそれらが好ましい存在で、あるいはもっと積極的に自分から好きであったとしても、むしろその場合は尚更びくびくしながら過ごすことになる。
 
 まして様々な関係性に付随して、そこで求められるタスクに対する反応が著しく低下していれば、組織にとっても自分自身にとっても、あまりよい結果をもたらさない。
 料理を作っても食べない子供がいれば、心配してあるいは怒る親もいるだろう。
 仕事を頼んでも作業が進まない部下がいれば、査定を低く見積もるよりなくなる。
「好きだよ」と伝えても、反応の薄い恋人というのはなんとも味気なく「この人は私のことなんてどうでも良いのではないか」と思ったりするものだ。
 
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 僕の知っている、僕の持っていた、一番ひどい生きづらさの体現だ。
 それは主観的で、何の根拠もなくて、何らの実効性を持たない。
 
 好きな気持ちに恐怖し、好きなものを失って絶望し、好きな気持ちがあってもなくなっても、怯えて身動きがとれなくなる。
 嫌いなものに囲まれて憎悪に生きている方が、まだまともに機能するのだ、本来の僕というのは。
 
 しかし好きなものを持たず、作らず、増やしもしないというならば、どこに生きることに意味を見いだし、愉しむことができるだろう。
 嫌いなものを憎悪して機能し、好きなものを感じることのない生に、いったい何の喜びがあるというのか。
 
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 実際のところ、私たち(ここでいう「私たち」とは内部表現なので、外部的には単に「私」あるいは「僕」となるべきだろう)は、あれこれ提案したのだ。
 
 保健所に電話して、必要なら出向くこと。
 探し猫のチラシを作って、動物病院やらスーパーやらコンビニに張ってもらうこと。
 
 もう昔の、無力な猫クンではないのだ。
 対物対人のいかなるスキルも身に付けた猫クンなら、チラシのデータを3時間半で(猫クンαが)作り、BP(友人です)のご子息に頼んで印刷してもらい、(黒猫クンが)あちこちに電話を掛けたり、責任者と交渉してチラシを貼ってもらうことなど造作もない。
 手を尽くし、思った通りの未来を誘導するために力を発揮することは、そしてそれによって、正しく未来を誘導することは、さほどむつかしいことではないのだ。
 
 でも猫くんは動けなかった。動かなかった。
 
 無論、私たちは猫くんを責めないし、責めるわけにもいかない。
 猫くんはもともと消極的で引っ込み思案で悲観的で人見知りで引きこもりで面倒くさがりではあるけれど(ひどい評価)。
 何かを失うことに人一倍臆病で、取り返しの付かない痛みに立ち向かうきっかけに対して動いても、何も変わらなかった記憶しか持っていない。
 誰にも相談できず、ひとりで考えた手法はあっさりと否定され、拒否され、失敗する。
 
 彼は、成功した記憶がないのだ。
 特に、好きなもの、積極的に自分から好きだと感じているものを失ったことについて、どうすることもなく立ちすくむ以外の経験を持っていない。
 励まされる経験も、促される経験も、誰かの庇護下で守られている経験にも乏しいから、戸惑ってしまうのだろう。
 
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 ために猫会議が長引いている。
 
 恐怖というのは、いつだって外側ではなく内側に巣くっている。
 ここまで環境を整えてなお当然に、不測の事態は発生するし、当たり前に全ての事象をコントロールすることはできない。絶対に。
 それ自体をも愉しむような仕組みを私たちはすでに持っているのだけれど、猫くんは持っていない。
 
 苛立ちがないといえば嘘になる。
 私たちはすでに、それらを乗り越えて、よりすぐれた機能を手に入れている。
 最終的にアヲは帰ってきたけれど、猫くんは何もしなかった。
 失敗を恐れて何もしないことを、猫クンは嫌う。それは猫クン自身が自分を動かしてきた哲学だろう。
 何もしないことは失敗することより致命的で、悪質なことも多々ある。
 その猫クンが、何もできない猫くんをわざわざ内包して生きる理由はないだろう。
 
 とはいえ誰でも、どんなイキモノでも、生きることには理由などなくて、ただただ生きているという事象に合わせて、理由を見繕って、取り繕って、みんな自分を納得させるそれを捏造しているだけだ。
 その捏造を許さないから、猫クンは生きる理由を持たない。
 
 その姿勢はじつのところ、ただの面倒くさがりの延長線上にある。
 猫クンは、理由がないことや矛盾していることを好む。
 高い理想も、倫理観あふれる理念も、完全主義も、潔癖症が大事に抱える、ずぼらな綺麗事と鼻で笑う。
 行動のない理念も、綺麗事ばかりで歪みを押し殺した理想も、ありもしない努力や頑張りも、机上の空論で嘘っぱちだと嗤う。
 反動形成だとしても、しかしそれは有用だ。
 そうすることで猫クンは、現実世界を動かす手段を少しずつでも身に付けたのだから。
 
 もっとも猫くんだって、立ち直るのに何年も、何ヶ月も掛かっていた頃から比べれば、立ち直りは早い。
 猫くんとして生きることを決めた以上、これはこれで仕方ないことなのだ。
 猫くんが身をすくめているというのなら、私たちは待つしかない。
 
 猫クンがいつか言っていた。
 忍耐は、優れた資質の1つだ。
 何もできないのでもなく、何もしないのでもなく、期待せずしかし失望することなく、ただ待って、見守って、必要になったら迎え入れることができるのは並大抵の能力ではない、と。
 
 猫くんはできるだろうか。
 猫クンは、できるだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 

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::「泣くでしょうか、あの男の子は」センセイは興味しんしんといった様子で身を乗り出している。
「泣かないんじゃないかな」
「いや、男の子は、泣き虫が多いですから」
「反対じゃないんですか」
「いいえ、女の子よりも男の子の方が、よほど弱虫です」
「センセイも、小さい頃は弱虫だったんですか」
「今だって、ずいぶんと弱虫ですよ」
 
 
 

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[出典]
~ List of Cite ~
文頭文末の引用は、
「センセイの鞄」
(著作:川上 弘美 / 発行:文春文庫)
 によりました。
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
[ Traffics ]
 
 
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[Engineer]
  :none:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Diary-Ecology-Engineering-Form-Interface-Link-Love-Mechanics-Memory-Stand_Alone-
 
[Module]
  -Condencer-Connector-Convertor-Generator-Resistor-
 
[Object]
  -Human-Memory-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :暗闇エトランジェ:
 
 
 
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